ツインバード工業(新潟県燕市)のワクチン運搬庫が同市デザインコンクールのグランプリを受賞
新潟県燕市が29日、「ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール」授賞式を開催し、グランプリ・経済産業大臣賞には、同市のツインバード工業株式会社が製造したワクチン運搬庫「ディープフリーザー25LWL」が輝いた。
「ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール」は、燕市で生み出される様々な製品に対し、デザインや経済、市場の専門家の視点による評価をすることで産地としての競争力の向上や持続的発展を目指すイベント。今回で44回を数え、市内59社から計93品が出店された。また例年は、革新性・審美性・機能性・市場性の4項目が審査基準となっていたが、持続可能性が世界中で問われる世相を反映し、今年からは「社会・環境問題の解決を目指しているか」という面も大きな評価基準となっていくという。
グランプリを受賞したツインバードの「ディープフリーザー25LWL」は、冷凍エンジンに「フリー・ピストン・スターリング・クーラー(FPSC)」を搭載。従来の「コンプレッサー式」と比較して極めて精緻な温度制御や軽量性・携帯性を誇り、国内における米モデルナ社製新型コロナウイルスワクチンの輸送・保管用庫として用いられることが決定したことで話題になった。同機構は国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」での採用もされており、コロナ禍の収束後も医療や食品分野での活躍が期待される。
同製品の冷媒にはヘリウムガスを使用しており、従来の保管庫と比較しても環境負荷が小さいことも特徴だ。また、周辺の燕三条地域企業の協力により量産化を成功させており、現在も製造はツインバード本社で行われている。今回のグランプリ受賞には、コロナ禍という世界的危機の解決に加え、前述のような環境配慮や地元産業との繋がりが評価された点が大きい。なおツインバードは今回、2020年に話題となった「全自動コーヒーメーカー」も審査委員特別賞を受賞した。
準グランプリの経済産業省製造産業局長賞は株式会社ツボエの「irogami piece of grater ひとひらのおろし金」、中小企業庁長官賞は有限会社徳吉工業のフィギュアスケート用エッジ「Tubame Blade Stream」が受賞。前者の製品は「デザインコンクール」と同時開催される「若monoデザインコンペティション燕」2018年大賞を受賞した作品を製品化したものであり、燕市の鈴木力市長は「まさに(燕市の)2つのコンペティションが有機的に連動していることを表している」と評した。
その「若monoデザインコンペティション燕」では今年、デザイナーの組地翔太氏(埼玉県)、井下恭介氏(東京都)、学生の平拓海氏(東京都)が大賞を受賞。今後彼らの製品は、テーマを出題した市内企業(組地氏と井下氏は株式会社大倉製作所、平氏はツボエ)と協力し商品開発を進める予定だ。
【関連記事】
新型コロナワクチンの運搬などで注目の集まるツインバード工業(新潟県燕市)の「フリー・ピストン・スターリング・クーラー」(2020年12月24日)