新潟県、カーボンニュートラル産業ビジョンを発表
新潟県産業労働部産業振興課および交通政策局港湾振興課は30日、新潟県カーボンニュートラル産業ビジョン等の策定及び新潟港におけるカーボンニュートラルポート検討会の結果報告を行った。
県は、昨年10月に菅内閣総理大臣が「2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを表明したことを受け、昨年12月に策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」に基づき、地域におけるカーボンニュートラル化の取り組みを推進している。
新潟県カーボンニュートラル産業の今後
1月26日、新潟県と関東経済産業局が連携して、関連するエネルギー事業者等で構成する協議会が開催された。県内で水素ビジネスを手掛ける企業や大手商社、地元金融機関から30人が参加した同協議会は、続く2月17日、3月23日と計3回にわたり開催。カーボンニュートラルへ向けた産業ビジョン、およびロードマップを策定の検討が行われていた。
県は国の方針にも合わせ、2015年に採択されたパリ協定で定義されるところの「カーボンニュートラル」を基に、CO2のみならず、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む温室効果ガスを対象として、「排出量を全体としてゼロにする」方針を取っている。
日本有数の石油天然ガスの産出地であり、管理設備や関連技術を抱える状況の中で、県にどのような地域資源や、技術シーズ(研究開発や新規事業創出を推進していく上で必要となる発明、技術、能力、人材、設備など)があるのかを概観し、協議が行われてきた。
本日の発表では、新潟県発の脱炭素価値・新産業創出を牽引する事業モデルを組み立て、実装していくために、次の3領域に注力していくビジョンが示された。
A)脱炭素燃料・素材への転換と新産業の創出 |
CO2と水素からメタンを作るメタネーション拠や水素製造を行う設備、つまりカーボンニュートラルなエネルギーの創出とともに、それらの資源や技術を発展させた産業の育成を図る。現在、すでに運用が行われている新潟東港など港湾部に、関連施設の集積をはかる意向もあるという。 |
B)脱炭素電源への転換に向けた投資誘致・O&M産業育成 |
新潟東港にある火力発電所などで水素やアンモニアの混焼を進めるなどのほか、洋上風力・バイオマス発電など、大規模再生エネルギー開発の推進についても、投資が促進されるよう後押しを行う。 |
C)脱炭素エネルギー供給新サービス開発 |
県内で輸入・製造・加工された脱炭素エネルギーを域内や首都圏や東北などの大消費地へ効率的に供給するための新規サービスやソリューションの開発を推進。ガスパイプラインなどの既存輸送ラインを活用するほか、新たな配送システムの開発も視野に入れるという。 |
その他、県が発表したカーボンニュートラル産業の今後のビジョンについては以下の資料にも詳しい。
カーボンニュートラルポート検討会の結果
カーボンニュートラル港の形成に向けては、新潟港を含め全国6地域で事例の検討が進められている。新潟港については国土交通省北陸地方整備局が今年1月より、新潟港を対象としてカーポンニュートラルポート(CNP) の形成に向けた「新潟港CNP検討会」を立ち上げ、水素や燃料アンモニア等の需要や利活用方策、港湾の施設の規模・配置等の検討を進めてきた。
新潟港における新潟港周辺でのCO2排出量・削減ポテンシャルについて推計を行い、コンテナターミナルの荷役機械の脱炭素化や船舶への陸上電源供給施設の整備について検討を行ったほか、将来的な水素・アンモニア等の受入環境等について検討を行ったという。
検討会の構成員等からヒアリングを行うなどして整理を行った結果、現状として次のような結果が導き出されている。
(1)二酸化炭素排出量約1,070万トン/年 |
新潟港においては、ターミナル内から約25万トン、ターミナル外から約1,040万トン、ターミナルを出入りする車両・船舶から約5万トン(出入車両約4万トン、船船約1万トン)、合計約1,070万トン/年の二酸化炭素が排出されていると推計される。 |
(2)水素需要ポテンシャル |
上記1の結果を踏まえ、現在の経済活動が将来も継続するという前提の基、仮に、LNG火力発電所に水素20%混焼及びターミナル内における荷役機械のFC化等が100%実現した場合、合計約30万トンの水素需要ポテンシャルが見込まれる。 |
(3)水素供給ポテンシャル |
新潟港周辺では、現在大規模な水素供給企業・設備は所在していないが、新潟力ーボンニュートラル拠点化・水素利活用促進協議会(主催:関東経済産業局、新潟県)において、水素等の供給に主眼をおいた新潟県域における水素サプライチェーンの構築に向けた検討を継続して進める予定。 |
また、CNP形成に向けた取り組みの方向性として、新潟港周辺の港湾物流における輸送機械、荷役機械の脱炭素化の促進等について検討を進めていくとともに、将来、需要増が見込まれる水素等の大塁輸送への対応を可能とする受入環境や新潟港の特徴でもある既存ガスパイプラインや臨港鉄道等を活用した供給体制について検討を進めていく。
具体的な取り組みの検討例としては、コンテナターミナルの荷役機械のFC化、横持輸送トラック等のFC化、水素ステーションの整備、陸上電力供給施設の整備、LNG火力発電への水素混焼、港湾施設の整備等が挙げられており、まだ開発・実証段階にある現状では、実装までには一定の時間を要することが想定されるものの、積極的に検討を進めていきたいとの考えを示した。