【独自】「季節型観光から通年観光へ」新潟県上越市の中川幹太市長肝いりの通年観光政策の現状を探る

春日山城址の上杉謙信公像

 

意外と知られていない上越市の位置

越後の戦国武将、上杉謙信公は知っているが、その居城である春日山が全国的には新潟県上越市にあるとはあまり知られていない……。実際にデータを取ったわけでないが、一般的にそんな印象がある。だいいち、東京都民が上越市の位置をどれだけ知っているかも定かではない。昔記者が東京の会社員時代に上越市出身だと言うと、先輩社員から「川端康成の雪国ですね」と言われたことがあった。完全に越後湯沢の上越新幹線と間違えているのだ。

実際に関西出身の上越市の中川幹太市長は、「春日山は知っていたが、それが上越市にあるとは知らなかった。実際に見て感動した」と記者に対して話したことがあった。中川市長が昨年の選挙戦から公約に掲げ、就任後は市長肝入りの政策のひとつとなった上越市の通年観光政策。現時点での進捗状況と今後の展開について、担当部署の上越市観光交流推進課に聞いた。

 

ビジネス客などの日帰り客が多く、観光ホテルが少ない

まず本題に入る前に、上越市の観光入込客数を見てみよう。上越市のデータによると、平成29年が493万8,539人(対前年比10.5%減)、平成30年が517万6,854人(対前年比4.8%増)、令和元年が539万8,033人(対前年比4.3%増)、令和2年が193万1742人(対前年比64.2%減)だった。特にコロナウイルスの影響で、令和2年は激減した。このうち、日帰りは87%で宿泊を大きく上回っており、ビジネス客などの日帰り客が多く、観光ホテルが少ないことが課題といえよう。

市では観光の目的に乏しいと分析し、通年観光に向けた取組として、「大勢の来訪者が年間を通じて楽しめるまち」を目指すとしている。そのために、市内の滞在時間の増加や経済効果を生む稼ぐ仕組みの構築に取り組む方針だ。

上越市産業観光交流部観光交流推進課の丸田健一郎課長(右)、同課の五十嵐雄一副課長(左)

 

季節型観光から通年観光へ

従来の上越市の観光は、春の観桜会や夏の謙信公祭、海水浴などの季節イベントに偏った季節型観光だったが、これを核となるスポットを整備することで、将来的に年間を通じて来訪者が訪れる歴史文化をいかした通年観光への移行を目指している。

具体的には、市内を高田エリア、直江津エリア、春日山エリアの3つのエリアにわけ、高田エリアは雁木町家や寺町の町並み整備・保存や景観保全、直江津エリアは鉄道資産の活用などでの楽しめるまち直江津を作る、春日山エリアは春日山城を本格的な観光地に整備する――などが基本的なコンセプトとなる。

 

「シートゥーサミット2022」で初の3市連携

一方、上越市、妙高市、糸魚川市の上越地域3市の観光分野における連携も着々と進んでいる。

上越地域 SEA TO SUMMIT実行委員会の主催で、「シートゥーサミット2022」が今年7月16日、17日に初めて実施された。2009年に鳥取県で初めて開催され、その後全国各地に広がっている「シートゥーサミット」は、人力のみで海(カヤック)から里(自転車)、そして山頂(登山)へと進む中で「自然の循環に思いを巡らせ、自然について考えよう」という環境スポーツイベントで、レース形式の競争会ではない点が従来のスポーツと異なる。糸魚川市ではカヤック、上越市では自転車、妙高市では登山となり、それぞれの分担で行われた。

上越市産業観光交流部観光交流推進課の丸田健一郎課長は「こういった機会を通して上越エリアの魅力を発信していきたい」と3市連携に意欲を見せる。

以前、中川市長は昨年の選挙前に観光での妙高市との広域連携を訴えていたし、妙高市の入村明前市長も上越市との観光での連携に前向きだった。現在の城戸陽二市長は基本的に入村路線を引き継ぐとの意向を表明しており、今後の動向が注目される。中川市長肝いりの政策が今後どのように実現されるか。上越市民のひとりとして、チェックしていきたい。

上越市高田地区の雁木町家

上越市立水族博物館「うみがたり」

 

(文・撮影 梅川康輝)

 

 

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