【独自】蒲原神社(新潟市中央区)——25歳の若き神主、金子隆仁(たかひと)氏【動画あり】

新潟市中央区の長嶺町にある蒲原神社は、創立1,200年以上の歴史を持ち、「蒲原さま」の愛称で地域に親しまれている。

しかし、毎年6月に行っている「蒲原祭り」は、コロナの影響により今年も開催されず、3年連続の中止。また、境内入り口にあった赤い鳥居は、神社が隣接する国道7号線栗の木バイパスの拡張工事に伴い、今年撤去された。

蒲原神社に親しみを持つ地域の人たちにとって、昔から当たり前にあった蒲原神社の風景が、時代の変化とともに失われつつあると感じる人はいるのではないだろうか。

そんな蒲原神社では今年、ある出来事があった。それは、代々受け継がれてきた神主の血を引く子息、金子隆仁(たかひと)氏(25歳)が、これまで居住していた東京から新潟へ戻り、後継者として神主となったことである。

歴史ある蒲原神社承継への想いや、これからの取り組みについて、隆仁氏に話を聞いた。

蒲原神社の金子隆仁(たかひと)氏

 

氏子総数4万人の蒲原神社

新潟県の神社数は約4,700社で、その数は日本一といわれている。一方で、高齢化社会や少子化が進む現代において、後継者不足の問題は、新潟県内の神社においても同様だという。

地域の神社(氏神)を守る神職者の減少に加え、その土地に住み氏神を祀る氏子(うじこ)も減少しており、存続することが厳しい神社が増えている。このような現状において、地域の神社を存続させるために、1つの神社が複数の神社を兼務する形は少なくない。

蒲原神社は、新潟市内48社の神社を兼務しており、兼務神社を含む氏子総数は約4万人に上る。隆仁氏が後継者として神主になった理由の一つには、蒲原神社が多くの兼務神社を抱えていることがあるという。

隆仁氏は、「宮司は私の祖父(金子隆弘氏)で、今93歳。宮司の次の位にあたる禰宜(ねぎ)が父(金子康弘氏)で、歯科医師との兼務で神主をしている。祖父が高齢になってきたこと、そして父が兼業という今の状況では、手が足りず難しくなってきたため、私が専業で入り継ぐことにした」と理由を語る。

隆仁氏は、地元の高校を卒業後、国学院大学(東京都)へ進学。神道文学部にて4年間学び、神社の宮司および権宮司になるために必要な階位免許である明階(めいかい)を取得した。そして今年、蒲原神社を継ぐことを決意し、新潟へ戻ってきた。

蒲原神社の参道

 

専業で神主を担うことへの想い

蒲原神社の金子隆仁(たかひと)氏

隆仁氏は専業で神主を行う決断をしたことには、先祖代々の宮司が守ってきた蒲原神社への強い想いがある。

蒲原神社の仕事は、年中行事のほか、日々の裏方仕事が多い。そのうえ、兼務神社48社との連絡や相談のやり取りなども頻繁にあるという。祖父や父が長年兼業で神社の仕事にあたり、外部の人の協力を得ながら運営する姿を見てきた隆仁氏は、「この神社の仕事は兼業では難しい」と感じ、専業で神社を守っていきたいという想いが強まったという。

隆仁氏は、「自分の家のことは自分たちで責任をもってやっていきたい。何かあったときでも、誰かに頼らなければならない状態にはしたくなかった」と話す。

続けて、「この神社が持つ魅力やポテンシャル、神社庁に登録されている社格や規模などを見た時に、自分たちが専業で関われていないことがとても勿体なくて、悔しいと思った。せっかく良いものを持っていても、やる人がいないと伸びていかない。私が専業で神社の仕事に当たることを決めた」と語る。

蒲原神社は今年、約130年ぶりの大改修工事を行った。特殊な洗浄技術による「あく抜き」を行ったことで、社屋内外に施されている彫刻がはっきりと浮き出し、その綺麗さに驚いたという。

隆仁氏が帰ってきたタイミングが大改修工事と重なったことに、運命じみたものを感じてしまう。

蒲原神社境内の彫刻、農作業を表現しているものは珍しいという

蒲原神社の参道前、撤去された赤い鳥居の跡が残っている

 

歴史と格式を守り、時代に合わせた新たな挑戦への想い

蒲原神社の金子隆仁(たかひと)氏

隆仁氏は、由緒ある蒲原神社および兼務神社48社の存続と発展のため、今後時代に合わせた新しい取り組みを積極的に行っていきたいと意気込む。

「お祭りも含め1つ1つの行事には意味があり、それを地元の人でも知られていないことがある。情報発信が一つの課題。そのためにはインターネットの活用や、神社境内で『映え』を楽しんでもらえるような企画など、蒲原神社の神事に興味を持つ人を増やす工夫を行っていきたい」と語り、笑顔を見せた。

ちなみに2023年の正月元旦は、明るい一年を願い、甘酒の振る舞いを予定しているという。また、コロナによって3年間中止した2023年の「蒲原祭り」について、「次こそは開催したい」と話す隆仁氏。

明るく朗らかに話す隆仁氏の言葉一つ一つから、内に秘める熱い想いが伝わってくる。来る2023年は、新しいことに挑戦するのに最適な年と言われている「卯年」。歴史や格式を継承しつつ、隆仁氏の新たな挑戦や改革による蒲原神社の「飛躍」に注目していきたい。

(文・撮影 中林憲司)

 

 

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