佐渡市に聞く、これからの佐渡観光
新潟に誇る観光地・佐渡。昨今の新型コロナウイルスの影響により例年に比べ、佐渡の観光需要が著しく減少している。この逆境の中、観光を盛り上げようと様々な取り組みを進めているのが、佐渡市と一般社団法人佐渡観光交流機構だ。
今回コロナ禍での佐渡市の施策と、今後を見据えた佐渡市の今後の観光のあり方について、佐渡市観光振興課・課長の祝雅之氏と、佐渡観光交流機構・常務理事の加藤透氏に話を聞いた。
佐渡島、コロナ禍での状況
令和2020年1月末頃からマスク不足が日本でも目立ち始め、2月にあったクルーズ船の報道から大きく話題となり、その後世界を震撼させた新型コロナウイルス。実際に佐渡においても新型コロナは大きく影響与えることとなった。
佐渡観光交流機構調べ「宿泊泊数」(上図)を見ると、実際にコロナの影響が宿泊泊数に見事に反映されており、海外からのインバウンド需要が激減した2020年3月は、例年の半数近くまで落ち込んだ。政府が7都道府県に対する緊急事態宣言を発令した4月には、対前年比の約13%の水準にまで落ち込む事態となった。
5月末頃には段階的に緊急事態宣言が解除されたが、解除に合わせるようにして宿泊泊数が回復の兆しを見せる。新型コロナにより大きく振り回された佐渡の観光業だが、7月に始まったGoToトラベルに合わせ、佐渡島独自の観光政策を敷き、10月には前年比を上回った。
だが年間を通して見てみると、観光客数については例年の約半数(マイナス47%)にまで減少した。佐渡市観光振興課の祝雅之課長は「2019年の観光客数は約49万5,000人のところ、2020年は約25万4,000人だった。インバウンドに至ってはほぼ壊滅状態の99%減だった」と話す。
このコロナ禍で多くの観光業が苦境に喘いでいる中、佐渡島は指を加えて傍観していたわけではない。佐渡島も独自の観光政策を敷き、様々な取り組みを実施した。佐渡島が実際に実施した取り組みは主に3つある。
佐渡島の取り組み 3つの柱
1つ目は、「島民・県民限定宿泊キャンペーン」だ。コロナによって移動が制限される中、佐渡市は新潟県民と佐渡島民を対象に、宿泊料金を半額補助(上限6,000円)するキャンペーンを2回にわけて実施した。
第1回目島民宿泊キャンペーンは2020年6月に開始し、島民が6割、県民(佐渡島民除く)4割からの申し込みがあり、6月下旬には申し込みが上限に達した。第2回目のキャンペーンは11月に開始し、島民が8割、県民2割からの申し込みがあった。このキャンペーンは佐渡島に累計1万4,000人泊という恩恵をもたらした。
2つ目は、「だっちゃコインのポイントバックキャンペーン」だ。だっちゃコインとは「さどまる倶楽部アプリ」をスマートフォン等でダウンロードすると利用できる、佐渡市内で使える観光通貨(アプリマネー)だ。
2020年7月1日に始まった本キャンペーンでは、新潟・直江津港と両津・小木港間で車両を往復で航送する方に限定し、1万5,000円分のだっちゃコインによるポイントバックを行い、その2週間後から11月初頭にかけては車両の航送に関係なく、乗船客全員に向けて、5,000円のポイントバックを行った。キャンペーンは累計1万1,000人の利用があった。
最後に3つ目は、佐渡観光交流機構で打ち出した「佐渡クリーン認証」だ。観光で佐渡を訪れた観光客に安心を提供するとともに、観光客と島民双方の安全の確保を目指したのが本制度。認証基準に応じて3つ星認証まで用意し、安心安全のブランディングを目指した。クリーン認証を進める事が事業者のメリットとなるように、上記(1つ目)の宿泊キャンペーンを利用できる宿泊施設は、クリーン認証に加入している事を条件にするなどの工夫を行った。また島内の飲食店にもクリーン認証は広く普及した。
これからの佐渡島
コロナ後の佐渡観光業の目標として祝課長は、「まずはコロナの影響で半減した部分を一昨年(2019年)の水準に戻す事だ。人数にこだわってしまうと中身が疎かになってしまうので、一人当たりの滞在時間や平均宿泊数を重視したい」と話す。佐渡島では宿泊泊数や連泊数などの“質”の部分も観光業における重要な指標として扱っているが、今後もその姿勢は崩さない方針だ。
また佐渡観光交流機構の加藤透氏は、「昔のようにターゲットを絞った観光戦略は控え、多様性を意識した観光戦略に切り替える」と話す。例えば、インバウンド需要に頼りすぎない事や、時節に応じてこまめにターゲット層の切り替えを図る事などを行う。
続けて加藤氏は、「外国人の考える『日本の田舎のイメージ』は佐渡がピッタリ当てはまるようだ。今後は特にフランス人に好まれる街づくりを意識していきたい」と話す。佐渡島にはその歴史ゆえに豊かな文化が今でも数多く残っている。こうした特徴を生かし、豊かな文化を持つフランス人の目から見ても魅力的に映るような街づくりを目指していく。
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2021年3月に入ってからの佐渡の観光状況について、「緊急事態宣言の延長や、新潟県・新潟市内でのコロナが落ち着いていない事から、予想よりも旅行客が増えなかった印象だ」と祝氏は話す。3月は卒業旅行シーズンでもあり、“コロナの心配が少ない安全な旅行先”として、若者を中心にの旅行客が増えたというが、それでも旅行客は想定していたよりも低い水準にある。
佐渡市では4月中旬以降に再び「さどまる倶楽部」会員向けに、だっちゃコインのポイントバックキャンペーンを再び行う。こうしたことからも、新年度に入ってからも観光政策を引き続き行う方針であることが伺える。
また別件の取材ではあるが、サンフロンティア佐渡の前田秋晴専務は「佐渡島でのコロナ発生数は非常に少なく、今年の春頃からはコロナ禍以前のように営業できるだろう」と話していた。更には佐渡金銀山の世界遺産登録への機運もより一層高まっている。
これから佐渡島では観光のハイシーズンに突入する。今後、佐渡島がどのようにコロナと付き合い、観光を盛り上げていくのか注目だ。