【対談】新潟ベンチャーキャピタル(新潟市中央区)の永瀬俊彦代表取締役×新潟大学経済科学部の伊藤龍史准教授が語る「JBMCの価値と未来」
JBMC(ジャパン・ビジネスモデル・コンペティション)とは、世界最大のリーンスタートアップ式ビジネスプランコンテストであるBMC Global(ビジネスモデル・コンペティション・グローバル)が日本で唯一認めるオフィシャル大会である。
世界を変えるスタートアップを起こしたい起業家志望の人にとって、JBMCは自分を成長させ投資家の注目も集められる絶好の機会と言われている。
来る2023年1月、JBMCへの公式推薦が与えられる「JBMC新潟ラウンド2023」が開催される。
「JBMC新潟ラウンド2023」を主催する新潟ベンチャーキャピタル株式会社(新潟市中央区)の永瀬俊彦代表取締役と、開催に協力する新潟大学経済科学部の伊藤龍史准教授が、JBMCの価値と未来について語った。
新潟から世界につながるビジネスコンテスト
伊藤准教授 新潟でこういったビジネスコンテストというのはなかなか無くて、私がアメリカから新潟へ帰ってきた2013年あたりに、第四銀行のビジネスアイディアコンテストとか、糸魚川市のグローウィル(当時は興和電子工業株式会社)が企業独自のビジネスコンテストを開催したいという話などがぼちぼちと出てきたんです。
JBMCは当時、実はあまり有名ではなかったと思います。10数年前から、南魚沼市地域産業支援連絡協議(ICLOVE)と国際大学(魚沼市)が中心となって運営されていました。地域的に離れていることもあり、あまり新潟市の大学の方では情報をキャッチできていなかったように思います。
なにかの拍子に連絡があって、当時のゼミ生が参加をしたところから、関わりが始まったという感じでした。
永瀬代表 そうですよね。考えてみればあの場所でやっていたというのは結構価値のある話だったかもしれないですよね。今は、新潟市でやって盛り上がるのは当たり前だけれど、あえて魚沼市の浦佐でやっていたのは面白かったですね。
伊藤准教授 もともとジャパン・ビジネスモデル・コンペティション(JBMC)を手がけていたのが早稲田大学の大江健先生だったのですが、その先生が「浦佐には国際大学がある」ということで、グローバル色の豊かな大学院であり、かつ世界でも高いランクにある国際大学でやった方がいいと考えられたのだろうと思います。それできっと、国際大学が中心となって活躍されていたのだと思います。
その後、国際大学でJBMCを中心的に進められていた先生が、他大学に移られたのですが、それをきっかけとして、私の方にバトンタッチしました。
永瀬代表 僕自身は、東京で大学生を集めたビジネスコンテストをやっていたんですよね。そういうのが新潟にもあったらいいなとずっと思っていました。そういったタイミングで、伊藤先生と出会えたのはすごく良かったですよね。
ただね、あの頃は誰もやってくれませんでしたよね。ほぼ二人でやっていたみたいな。
伊藤准教授 私はアメリカのシリコンバレーにいたのですが、向こうで学生を対象にしたビジネスコンテストを見たりとか、出場した学生たちと話したりしていました。日本に戻って来るときになって、そこで繋がりが消えるのが嫌だなと思ったんです。
日本に戻ったときにどういうことが起るかわからないけれど、私がいた場所に、新潟の学生たちが自分で努力をして来ることができる、そのような仕組みがあった方がいいなと思いました。まさにJBMCがそういうものに見えたんですよね。
永瀬代表 なるほど。伊藤先生とは立場は違うけれど、ベクトルは同じ方向を向いています。僕の原体験の中でも東京でやっていた時に、大学生として参加してくれた人が、たまたま新潟で起業しました。それが、マッチボックスの佐藤さん(株式会社Matchbox Technologies、新潟市中央区、代表取締役社長佐藤洋彰氏)です。
彼と最初に出会ったのは、大学2年生の時。その時は、よくわからないけれど起業したいみたいな感じでしたが、今は売上としてもウン十億をやっている会社。上場も2、3年後を見据えていて、そんな会社になり得るんだという実体験があった。あれを是非東京ではなく、新潟でやりたいという気持ちがずっとあんたんです。
そういう意味で、JBMCという枠組みがあって、それを活用できたというのはすごくラッキーかもしれないですよね。
世界共通の評価基準と枠組みでフェアに競い合う場
伊藤准教授 JBMCが面白いのは、各国でやっていることです。ビジネスモデル・コンペティション・グローバル(BMC Global)が取り仕切っていて、各国の代表チームが集まってくる世界大会に繋がっているのが面白いですよね。
新潟で終わってしまうのではなく、そこから先まで続いている。自分の力が新潟で一番じゃなくて、全国で一番。さらには世界でもトップだというところまで実体験できるうる仕組みなので、夢があっていいなと思います。
永瀬代表 そういう仕組みがあって良かったなと思うし、新潟から世界にチャレンジする人が、新潟にいてできるという仕組みを盛り上げたい。そのためには、イベントそのものを盛り上げなければいけない。それはすなわち、参加する人をどんどん増やさなければいけないので、まだまだやる事はいっぱいありますよね。
伊藤准教授 JBMCの場合は、明確な評価基準があり、考える際の枠組みもきちんと提示されているので、取り組みやすいものでもありますね。あとは、客観的に評価をしやすいものでもある。なんでもいいからプレゼンテーションしてねという形ではないからこそ、競い甲斐がありますね。
永瀬代表 そうですね。一つのルールにしたがって、みんなが競争するというのは、とてもフェアな感じがしますね。そんな中で、伊藤さんと取り組むのが、次回で3回目になります。どういう人が来るか楽しみですね。
ビジコンの甲子園のような存在にしたい
伊藤准教授 ここ数年で、新潟ラウンドで優勝するチームのレベルが上がってきていることがはっきりわかっています。全国大会では、8チームくらいまで絞り込まれるのですが、さらに競い合って最終4チームまで絞り込まれます。その最終4チームに、2年連続で新潟ラウンドから出てきたチームが入ったんですよね。
永瀬代表 毎年ほぼ全国大会の上位に行けている感じですよね。やっぱりこの流れは止めたくないし、新潟が常に強豪校としてでてくる雰囲気は続けていきたいですよね。
伊藤准教授 形としては甲子園みたいな感じで、そうなっていって欲しいです。地方ラウンドは、新潟では10年以上続いていますが、他の地域ではあまり開催されていなかったり、開催しても新潟のように継続できていないというところもあります。
できれば、全都道府県から代表チームが集まってきて全国大会をやって、トップ1チームを選抜するという甲子園形式のビジネスモデル・コンペティションになると、もっとレベルも高くなるし面白くなります。
永瀬代表 そうですね。これが新潟の若い人たちにとってプラスになっているということをもう少しPRして、よその地域でも取り入れることになっていくと、より良いでしょうね。
あとは全国大会にいって、経歴の違う同年代の人達との接点が生まれるとか、ひょっとしたらそこで競い合うだけじゃなくて、お互いのビジネスを提携させるとか、プラスアルファにしていける可能性もある。
僕は常に言うのですが、ビジネスコンテストって一過性で終わらせるものではない。そこで賞を獲ることが偉いのではなく、継続し、売上を立てて利益を出し、地域に貢献する。そこまでやって、初めてビジコンの勝者だと思う。その事例をもっと出していきたいと思いますよね。
(文・撮影 中林憲司)
【関連サイト】
JBMC新潟ラウンド2023 応募情報(新潟ベンチャーキャピタル ホームページ)