【妻有新聞】「明石の湯」(新潟県十日町市)来年3月閉館(下) 波紋呼ぶ「明石の湯閉館」市民反響さまざま

来年3月で閉館方針が出された「明石の湯」(8日)

上:【妻有新聞】「明石の湯」(新潟県十日町市)来年3月閉館(上) モネ美術館を芸術祭拠点化、市民から疑義も(2022年12月30日)

 

市民反響さまざま 「生活施設の一部」「市街地だけの利用だ」

越後妻有交流館キナーレ「明石の湯」の来年3月閉館方針が疑義を呼んでいる。明石の湯周辺にはアパートも多く、入居者からは「アパートに風呂がなく、明石の湯が生活の一部になっている。なくなれば困る」と、憩いの場に留まらず生活上必要な場になっている現状がある。明石の湯を巡って賛否様々な声が上がっている。

大地の芸術祭の拠点のひとつ、MonET(モネ)に隣接する明石の湯。周辺にはアパートもあり、「大家から『家賃を上げないために風呂を設けていない。風呂は明石の湯に行ってくれ』と言われた」という入居者もいる。同温泉を生活必需施設にしている人がいるのも現実だ。憩いの場とする常連客の80代女性は「ここの湯で友だちがいっぱいできた。友だちに会うのが楽しみ」と話す。一方で中心市街地から離れた場所に住む住民からは「歩いて行ける温泉など市内でも一部の人たちだけ。送迎バスがあるというし、多くの税金を掛け続けるのは問題」といった声がある。また「できる限りコストを削減し、浴場1区画だけ残し男女交互の入浴施設にしては。美術館併設の温泉というPRもできる」(70代男性)など提案もある。

明石の湯は東部地区振興会(竹村茂夫会長)と中央地区振興会(宇都宮正人会長)に隣接するが、両振興会長とも「市からの説明はなく、閉鎖の話は聞いていない。これでは判断のしようがない」とし、「地域の高齢者の多くが利用しており、突然の閉鎖はいかがなものか」(竹村会長)、「地域とじっくり相談する時間が必要ではないか」(宇都宮会長)と市の対応を疑問視。「地元地区振興会にも説明してほしい」と要望する。市では今後、十日町地域振興会連合会(庭野政義会長)と相談し、地区説明会などを開くとしている。

明石の湯の市指定管理料は昨年度3950万円で、2003年7月のオープン以来累計で約8億5千万円に上る。市では指定管理料の課題を抱えたなか、数年前から現状変更を含め検討に上げていたという。そこに次回展から芸術祭の通年化とモネの美術館拠点化を打ち出し、「明石の湯の閉館と併せて方針を進めるのはこのタイミングだろう」(文化観光課長)と急ぎ判断を下した。背景には、2012年のピーク時に年間約13万6千人を数えた入湯客が、昨年度と一昨年度にコロナ禍で7万人台まで落ち込み、今年度は他の入浴施設がコロナ禍前の9割ほどまで回復するも、明石の湯は6割ほどに留まったことや、施設の修繕費や光熱費が年々嵩み、さらなる指定管理料の増額が想定されることも閉館方針への要因となった。

市では国の交付金を財源とし、改修事業費1億5千万円を来年の3月議会に今年度補正予算として盛込み、「新たな魅力と集客力強化」として2年後の芸術祭9回展でのオープンをめざす方針。

妻有新聞 2022(令和4)年12月17日号】

 

 

 

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