【独自】「好き!」を仕事にする 大判焼きへの愛が半端ない土田佑香里店長に訊く 「大判焼き とっと」(新潟県長岡市学校町3)
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新潟県長岡市学校町にある「大判焼き とっと」
もちもちとした肉厚の生地に、やわらかい餡子がぎっしりと詰まったほっかほかの大判焼きは、長岡の寒い冬には、ぴったりである。一口食べただけで、身も心もほっこりと、温かくなる。
2022年、新潟県長岡市学校町にオープンした「大判焼き とっと」では、プレオープン当日、オープン初日と、近隣から多くの客が足を運んだ。
店内で忙しく大判焼きを焼いている土田佑香里店長(38歳)に、仕事の合間を縫ってもらって、開業に至るまでの話を聞いてみた。
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「大判焼き とっと」土田佑香里店長
「昔から大判焼きが好きだった」と語る土田店長は、小千谷市の出身である。幼少の頃からあんパンの餡だけを食べて喜んでいるような子どもだったという。「いつかは大判焼き屋さんをやってみたい」と考えていた。地元の高校を卒業後、長岡の専門学校に進学し、卒業後はスーパーに勤務した。
8年前に結婚し、独立する形で実家を出て、専業主婦となった。引っ越し先の物件も夫の実家と自分の実家からちょうど半分の距離の場所、奇しくも大判焼きの店の隣だった。
現在の店舗兼自宅に引っ越したのは2年前のこと、たまたま空き物件が出ているのを見つけた。ここならば、人の通りも多く、学校もあるから放課後は学生で賑わう。「いつかはお店が出来れば・・・」と思っていたが、「今でしょ!」と考えて、思いきって開業に踏み切った。開業に当たっては、営業許可が降りるように自宅も改装した。もともとの物件が、許可の降りやすい造りだったため、「軽自動車を買う程度の資金で済んだ」という。
自宅で開業することによって、年長と年少の二人の息子の面倒を見ながら仕事が出来るというのも、土田店長にとっては良かった。
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大判焼きの生地を用意する土田店長。同店の大判焼きの生地がもちもちなのは、菓子用粉の最高峰「宝笠」を使っているからだという。納得である。
技術面での準備にも余念がない。オープンに先立ち、グーグルで探して見つけた餡子屋に飛び込みで電話して相談した。その伝手で、市内でかつて有名だったパン屋の大判焼きの味を引き継いでいる老舗「あかつき」を紹介してもらった。土田店長は、そこでひと月ほど修行した後、同「あかつき」の「優しい店長さん」からの認可を得て、11月に開業した。店の屋号は、「りくと」ちゃんと、「あきと」ちゃんという、土田店長にとっては、何よりもかけがえのない2人の大切な息子たちの名前からとった。
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店の名前の由来になった「りくと」ちゃんと「あきと」ちゃん。土田店長にとっては商売の原動力である
オープン初日は、飲むことや食べることも出来ないほどの盛況だった。想定以上の客足で「テンパっていた」という。「仕事と育児の両立は大変だ」という土田店長は、繁忙期には実家の母親や、友人たちにも手伝いに来てもらっている。開店当初は10時から17時までの営業時間だったが、子ども達が幼稚園から帰ってくるのが15時過ぎだったため、営業時間も11時から15時までに変更した。子どももある程度成長し、時間的に余裕が出来たら「もう少し夕方まで営業できるくらいにはしたい」と考えている。「細く長く(店を)やりたい」と今後の目標を語った。
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大判焼機の穴一つひとつに丹念に生地を注ぎ込む。
準備から開業までの慌ただしい時期を乗り越えて現在、土田店長は、「やりがいを感じている」という。「自分の好きなものを作れて、お客様に“おいしい”といってもらえる。好きなものに囲まれて仕事が出来ているのは、たまたま運が良かっただけ」と謙遜した様子である。そんな人柄が、協力してくれる人と運を引き寄せるのだろう。
そんな話で盛り上がっていると、早速お客がやって来た。市内在住で、先日、夫と大判焼きを買いに寄ってみたが、定休日だったため、今日は1人で、買い物帰りに寄ってみたという。「家に帰って旦那と食べてみて、良さげだったらまた来ようかしら」と語る。
長岡の大判焼き名店の味は、人懐っこいフレンドリーな店長によって、確実に受け継がれている。
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固まってきた生地に餡を乗せる。
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おいしそうに焼き上がってきた!
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今日も元気に大判焼きを焼く土田店長
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「今回はじめて大判焼きを買いに来た」という市内在住の買い物客
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土田店長と買い物客と、地元の話に花が咲く。
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焼きたての大判焼きは、ほどよい香りが部屋中に広がる。いただきま~す!
【店舗情報】
大判焼き とっと
新潟県長岡市学校町3丁目10−12
駐車場有り
営業日:火曜日から日曜日、11時から15時まで(月曜日定休)
電話:0258-77-3308
(文・撮影 湯本泰隆)