地域に愛され、皆が「ほっ」とできるホットな空間に オープンから1ヶ月、新潟県長岡市にあるランドリーカフェ“Hoshiba”(新潟県長岡市)は今
2022年12月に開業した“Hoshiba”(新潟県長岡市干場2)には、コインランドリー“jab jab(ジャブ ジャブ)”と本格焙煎カフェ“Come sta?(コメスタ )”が併設している、新潟県長岡市で初めてとなるランドリーカフェである。開業したのは、道路を挟んで店舗の真向かいにある株式会社大新産業(新潟県長岡市干場2 笠井一昭代表取締役)である。もともとは、「空調換気設備工事」「給排水衛生設備工事」「不動産」を専門に扱っている会社がどうして、ランドリーカフェに至ったか。笠井一昭代表(60代)に本音を聞いてみた。
笠井代表によると、カフェ開業の元々の発案者は笠井代表の奥様である。新型ウィルス禍で落ち込んだ本業をカバーするための新規事業を考えていたところ、奥様がコーヒーの焙煎機を購入して、豆を販売することを思いついたという。笠井代表と相談して、どうせやるなら専門に特化して本格的にやろうということになり、カフェを開業することになった。
土地の取得に関しても幸運が続いた。ちょうど2年ほど前、同社の駐車場が手狭になり、当時売りに出ていた会社の向かい側の土地を一部購入していた。その土地に店を構えることにしたという。
機を一にして、たまたま周辺に学習塾を開きたいという申し出があり、カフェ単体の集客が難しいと考えていた笠井代表との利害が一致した。そのことから当初は、カフェ併設型の学習塾を開業する予定だった。ところが、計画が進むうちに、学習塾開業の話がなくなった。空いたスペースをどうするかと考えた笠井代表は、コインランドリーの機器を販売している知人から機械を購入する形で、コインランドリー市場にも参入することになったという。開業に当たっては、事業再構築補助金の支援も受けた。全てが「良いタイミングで整っていった」という。このようにして、長岡初のランドリーカフェは誕生した。
ランドリーの機器も、時代に合わせた最先端のものが取りそろえられている。大小の洗濯乾燥機4台、乾燥機5台、スニーカーランドリー1台の計10台あり、集中精算機にはコインランドリーに⾏かなくても、スマホやパソコンで、洗濯機の空き状況や、洗濯物の完了がわかる機能を搭載している。
「やるからにはカフェもランドリーも本気でやっていく」という笠井代表の発言からは、並々ならない気概と決意が感じられる。
ランドリーを経営する上で避けて通れないのがガスの供給である。同Hoshibaではプロパンガスを使用している。通常、プロパンガスを貯蔵するバルクタンクは、あまり人目につかないところに設置される場合が多い。ところが、同Hoshibaでは違う。バルクタンクが店への目印になるように、目立つ場所に設置した。実際に、記者もバルクタンクを見て、迷わず店舗にたどり着くことができたというほど、このバルクタンクには存在感がある。その存在感を一層際立たせるのが、タンクの表面に施されたデザインである。トランプに出てくるジャック、クイーン、キングがそれぞれ描かれている。ランドリーに向かうジャック、コーヒーを嗜むクイーン、ゆっくりとくつろぐキングの姿は、ランドリーカフェのコンセプトである「日常の一コマ」のイメージと、店内のおしゃれなたたずまいとがマッチしている繊細なイラスト表現である。1年が52週あることから、52枚1セットのトランプに見立てた発想も、とても斬新である。長岡造形大学視覚デザイン学科に通う学生によるものである。デザインの採用に当たっては、3名の学生が、学内コンペに参加し、製作された9点のデザインの中から選ばれた。一つひとつの作品について、学生が直接プレゼンをした上での決定だったという。まさにランドリーカフェのシンボルとして、ぴったりのデザインとなった。
同”Come sta?”では、「ハスキーカップ」を持参して、コーヒーなどのドリンクを注文した場合、通常価格より割引した価格で提供してもらえる。
「ハスキーカップ」とは、コーヒーの身から豆を取り出すときに不要品として処分される外皮や殻などといった「コーヒーハスク」を、原料の一部として作られたコーヒーのことで、SDGsなど、非常に環境に配慮した製品である。新潟県内の実店舗で取り扱われるのは同”Come sta?”が初めてとなる。この試みも、笠井代表による発案なのだという。
ガス管のデザインを店内の雰囲気に合わせたものにするなど、設備のプロとしてのこだわりも活かされている。現在、準備中である2階にも自社で製作したスチールパイプデスクを配置した。いずれは製品化も考えているという。
他にも“jabjab”と“”Come sta?”という店名はもちろん、ロゴのデザイン、内装や棚の形に至るまでも、社内の皆で会議をして、ひとつひとつ決めていった。
「途中からみんなわがままになっていき、喧嘩になったりもしたけど、皆がいろんな意見を出し合ってやった。楽しかった」と、笠井代表は回想する。
開店から約ひと月、布施千夏店長(20代)によると、店内での一番人気の豆は「ブラジル」だという。「長岡の人は、苦みのある深煎りが好きな人が多いようだ」と分析している。「コーヒーは入れ方一つで味が違う。ブラジルは苦みも甘みも感じられるコーヒー」だという。店には布施店長の他に、カフェ勤務経験のあるアルバイトの反町美優さん(20代)が接客に当たる。「長岡では珍しいコインランドリーカフェが出来ると聞いて、ダメ元で直接会社に連絡して採用してもらった。いろんなことに携わらせていただいて、楽しい」と話す。
店舗の近隣からコーヒーを買いに来たという野本昌広さん(43歳)は、「地元でも、この辺りにカフェがあるといいなあ、なんて望んでいたんですよ」と話す。「コーヒーが大好きだ」という野本さんに、気になるコーヒーの味を聞いてみたところ、「おいしいですよ。ヘビーユーザーになりますよ。近所だし、週一(通うのは)確定ですね」と、かなりのご満悦の様子である。長岡にまたひとつ、地域に愛される、素敵な名所が誕生した。
【会社情報】
Hoshiba
所在地:新潟県⻑岡市⼲場 2 丁⽬ 2 番 18 号
営業時間: jab jab 6:00〜24:00(年中無休)
Come sta? 9:00〜19:00 (L.O.18:30)
定休日:第2、第4⼟曜⽇・⽇曜⽇・祝⽇
電話番号:0258-35-0654
(文・撮影 湯本泰隆)