新潟県内屈指の温泉地「月岡温泉」を歩く(その2)
街中の賑わいを取り戻す
全国各地の温泉街では、ラーメン店、土産品店、カラオケ店、スナックなど様々な施設を完備した大型温泉旅館が、宿泊客を館内に取り込む戦略をとってきた。その結果、宿泊客が温泉街を出歩かなくなり、町が寂れていったといわれて久しい。さらに、そうした大型施設を支えていた団体客(旅行代理店が団体宿を送り出してきた発地型観光)は減り、観光地自体が情報発信し誘客をしていく着地型観光が主流となりつつある。
そんななか、月岡温泉では、再び温泉街の賑わいを取り戻し、観光客を呼び込んでいこうと頑張っている。例えば、月岡温泉の若手経営者らが2014年に設立した合同会社「ミライズ」が「空き店舗再生事業」を活用して開店した、テーマ性のある店舗もその一つ。これまでに、新潟の日本酒をテーマにし「酒」にフォーカスした『新潟地酒プレミアムSAKE』、新潟の米菓をテーマにした『新潟米菓PremiumSENBEI 田DEN』、米粉を使ったスイーツや麺を集めた『新潟飲物PremiumPOWDER 米bei』などがオープンしている。
また、福島からの移住した人が始めて人気店となっている「コトリカフェ」、石畳、温泉街の店舗や家屋の軒下・軒先に「行燈(あんどん)」を飾り、温泉街を明るく華やかになる月岡温泉観光協会の「華あかりプロジェクト」などもある。
さらに、今年、4年がかりの大幅な改修を終えて、団体客受けから個人客向けの旅館に大きく舵を切った「月岡温泉 摩周」(※)でも、宿泊客に街に出てもらおうという仕掛けづくりを行っている。改修を機に、館内の飲食施設(スナック、ラーメン)をなくしたほか、街に出かけたくなる浴衣を導入したのだ。
「浴衣には新発田市が生んだ叙情画家の藤谷虹児が描いた美人画を使っています」。今年9月に取材したときに石塚正行代表取締役はこう話していた。また、浴衣の制作に際し、着て歩きたくなる本物の浴衣を作りたいということで、日本橋の竺仙に依頼することにしたという。しかし高額だった。「そこでクラウドファンディングで70万円を集め、そこに自前の出費を足して制作しました」(石塚正行代表取締役)
浴衣の利用料は1回1000円。レンタルした人には、温泉街で使える「500円商品券」を渡し、街中で消費してもらうという。「500円の商品券以上の買い物をしていただいているのではないかと考えています」(同)
使用された商品券は、摩周が店から引き取り、対価を支払う。1000円のレンタル料はこの500円商品券の原資と500円のクリーニング代金になっているそうだ。
(※)摩周の改修については「県何屈指の温泉地『月岡温泉』を歩く(その4」)で紹介する予定です。