【独自】「本当の豊かさとは何か?」新潟県妙高市在住の若手動画クリエーターが問いかける 【動画あり】
記者は昨年末に新潟県妙高市のSDGsの動画(下記参照)を初めて見た。特に前半の東京を舞台にした動画は日本の現代映画や尖った純文学にも似た雰囲気、かなりの芸術性とクリエイティビティを感じた。行政の動画にしてはかなり「攻めている」動画である。その動画を作ったのが今回インタビューした上村岳(34歳)さんだ。
新潟県上越市出身の上村さんは新潟市の専門学校で英語などを学び、卒業後、海外に出たいと思い、何といきなり、グアムのホテルに就職。英語が堪能なため日常会話は出来たが、車の免許がなく、公共機関も治安が悪く使えないため、毎日社員寮からホテルまでヒッチハイクしていたというから驚きである。「忙しすぎて、食事もろくにとっていませんでした」(上村さん)。
そんな日常が長く続くわけもなく、1年で退社し、新潟に戻った。
「元々、工業高校で空間デザインや建築の勉強をしていたので、ホテルのランドスケープデザインに次第に興味が移っていきました。次は造園に就職しました」(上村さん)。
その後、新潟市の造園に就職した上村さん。剪定から庭造りまで様々なスタイルの庭に携わった。しかし、雪国である。新潟市も造園業は冬は仕事がなくなる。他の社員は大工の手伝いなどにまわされたが、上村さんはそれに納得がいかず、特別に2ヶ月くらいの休みを取り、海外生活を楽しんでいたという。
その後、23歳で海外移住を決意。オーストラリアに行くことになった。このオーストラリアでの生活が上村さんに影響を及ぼしている。
それは例えば、自然に対する考え方だ。
「オーストラリアは都市と自然の距離が近い。サーフィン、ハイキングなどのアクティビティなど自然との関わり方がうまい。各都市それぞれにカラーがあり、似た考えやライフスタイルの人々から成るコミュニティが各所で見られる。一方で、日本は東京一極集中で、他の選択肢がない。進学は東京で、そのまま何となく東京で就職する。それが当たり前で、東京のトレンドを地方が追いかける姿に疑問符がつく。私も東京は好きですが、それだけではないだろうと。本当の豊かさはとは何かというのが今回の動画のテーマです」(上村さん)。
ある意味で「東京がすベて正しい」という全国的な風潮に待ったをかけるこの上村さんの発言は、地方創生を考える上で非常に重要な視点であると記者は考える。
そして、帰国して住んでいた新潟市から妙高市へ移住し、妙高高原の山小屋に民泊をしながら住むことにした。妙高市ではいもり池周辺に環境省直轄のビジターセンターが昨年リニューアルしたほか、妙高市のテレワーク施設が昨年に完成するなどして人流が生まれ、活性化が起きている。
「妙高高原は県外や海外からの移住者が増え、新しいことが起ころうとしている)」と話す上村さん。
一方で、動画制作もオーストラリアにいる時から始めていた。妙高市のSDGsの映像を一緒に監督している丸山雄大監督とはFacebookを通じて知り合った。丸山さんは上村さんと同い年ということもあり、2人は意気投合。丸山さんの影響で、上村さんも動画制作の世界へ入り込んだ。
「洋楽のミュージックビデオを数多く見ており、影響を受けている。ミュージックビデオはかなりクリエイティブです」と語る上村さん。
上村さんも音楽アーティストアーティストなどのミュージックビデオを制作しているが、その動画を見た妙高市から今回の依頼を受けた。
「豊かって何だろう」という女性主人公の問いかけは、物質的な豊かさだけでなない何かを求める人たちに刺さる言葉だろう。
「物質的な豊かさは僕たちの世代はすでにある。地方でもAmazonで買えば翌日に届く時代。インターネットのおかげでこんな山の中でも不便なく生活が送れるのは新たな贅沢の形だと感じます」(上村さん)。
現在は広告のプロモーションビデオが主だが、今後はドキュメンタリーを撮りたいという。
上村さんは「クリエイティブは経験したことからしか生まれない」と話すが、海外経験により自然志向になり、日本の地方都市へ移住した若者の「創作」に今後も大いに期待したい。
(文・撮影 梅川康輝)
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