【妻有新聞】県立津南中等校で8年ぶり定員超過、県内6中高一貫校のトップの倍率に
募集停止の検討机上に載った県立津南中等教育学校は、今年4月入学の第17期生の志願が8年ぶりに定員超過し、それも県内6中高一貫校のトップの倍率となった。2020年6月に募集停止検討がいわれて以降の2年間、学校やPTA、地元津南町、さらに卒業生や地元民間支援者らで作る支援する会の活動が結実した形となった。今期は定員80人に対し95人が志願、倍率は「1・18」。選考検査は新年7日に行い、15日、合格発表を行った。受験者95人に対し81人が合格。発表を保護者などと見に来た受験生は自分の受験番号を見つけ、友だちと抱き合うなど喜びを表し、一足早い「12の春」を迎えた。妻有新聞社は発表当日、入学が決まった12人に取材、志望への思いを聞いた。この中で今回の定員超過の要因が見えてきた。それは「特色ある学習」と「芽を育てる」教育環境だった。
「しっかり勉強ができる学校だと思いますが、ここでしか学べない津南妻有学に興味を持ちました」、「高校生が商品を開発しているのは、とても面白いと思いました」。県内有数の国公立大進学率の実績をあげる津南中等だが、受験生の小学6年生にとって、それ以上に津南中等の学習内容と学生の「チャレンジ精神」を育む学校環境への関心の言葉が聞かれた。
津南妻有学は「総合的な探求の時間」で学年に応じてテーマ設定やグループ活動を行い、SDGsをベースに地域内外でフィールドワークし、公的機関や民間の研究コンテストに出場するなど意欲的に活動。この活動から生まれたのが花粉症誘因の「スギ(杉)」を取り上げ、広葉樹への転換とスギ間伐樹木の活用で開発の「アロマオイル」商品化を学生が取り組むなど、従来の総合的学習から踏み込んだ研究活動をしている。
在学中に活動が注目を集めた『森の三方よし』の学生たちは、卒業後、別々の国公私立大に進んだが3人で会社を起業し、その研究テーマを在校生が引き継ぎ取り組むなど継続活動につながっている。
さらに募集停止の検討校に載りかけた2020年には「卒業生有志の会」が立ち上がり、専用サイトで卒業生対談や在校生の進路相談会を独自に開くなど、側面サポートに乗り出している。対談では広告代理店大手の博報堂コピーライター・西野知里さん(3期生・早稲田大卒)とプログラマー神戸隆太さん(4期生・東京大卒)の対談などを発信し、同校の理念『夢の実現』にアドバイス。
今年4月入学対象の学校説明会は昨春以降きめ細かく実施。説明会でも「津南妻有学」への関心は高く、「津南中等でなければ学べない学習」として関心を集めている。15日の合格発表取材でも同様な声が聞かれた。
開校当初は「勉強ばかり」などの外部イメージが強かった津南中等だが、卒業生が多分野で活躍する傾向が広がり、加えて「津南妻有学」のように特色ある学習ができる学校として関心を集める。その結果が今年度の定員超過につながったとも見られている。
今年夏までに県教育委員会は「県立高校3ヵ年計画」を公表するが、このなかで津南中等がどう扱われるか関心が集まる。2020年の「募集停止」の検討机上に載る直前までいった危機感から、「総力戦」で志願増加に取り組み、今年度定員超過を達成した取り組みへの評価は高いと見られる。
だが、県教委は「県立の中高一貫校の役割は終わった」との見方があり、今後は「県立高校と中高一貫校の再編整備」へと向く可能性があり、実績を上げる「県立津南中等教育学校」の今後は依然として不透明だ。
ただ、県立高校では県内有数の進学状況、さらに学習内容の高い評価があり、県教委がこの「実績」を今後どう県立高校再編に反映するのか、今後の「新潟県教育のあり方」が大きく問われることになる。
【妻有新聞 2023(令和5)年1月21日号】