【妻有新聞】年中行事、人の暮らし記録 駒形覐著「妻有今昔物語」出版
地域の伝統行事や年中行事などを通じて人の暮らしを調査研究し記録する新潟県民俗学会長を長年務めた駒形覐氏(96・五泉市村松)が妻有新聞に連載「雪国今昔物語」の百話をまとめた『妻有今昔物語』を出版した。日本民俗学会評議委員など歴任し現在は日本民俗学会名誉会員の駒形氏。十日町高教諭時代の昭和30年代から地域の民俗調査に取り組み、十日町市や中魚沼地域の集落を歩き、住民と語り、聞き取りや写真で記録するなど「ありのままの人の暮し」を調査記録し多くの調査報告書や著書を発刊している。『妻有今昔物語』は昭和30年代から60年代頃の地域の年中行事、当時の人の暮らしを駒形氏撮影の写真と共に語り調で解説し、「あの日、あの時」がよみがえる人の暮らしが伝わる一冊になっている。
駒形氏は「本を読んだ方から、民俗が伝承されていくことの大切さを改めて知ったと声を頂いた。当時の暮らしと今では雲泥の差だが、忘れてはならないものがあるのではないか」と同著出版への思いを話している。
同著の表紙写真はまさに「あの日、あの時」だ。『モリッコする女の子』のページに載る写真。昭和32年、旧川西町の旧白倉小学校への峠道での一枚。駒形氏は「それにしても撮っているこの娘さんたちは、今も元気で過ごしているのだろうか。この写真が目に止まるといいのだがなと思っている」と記す。いま70代か80代だろうか。
「出稼ぎ帰り」では、春4月の雪が残る集落の雪道を大きな荷を背負う男衆が歩いてくる写真が載る(昭和34年4月、津南町樽田)。冬場、東京などへ出稼ぎに行っていた家の主たちが土産の荷を背負い、我が家に急ぐ。『明治から昭和初期にかけ、「江戸逃げ」という習俗がみられた。15歳前後の若者数人で、家人には無断、夜逃げ同然で江戸逃げを決行する』、当時の一種の通過儀礼のようなもので、『捕まったら「たつけなし」と笑われるので、若者たちは足を早める』と一枚の写真からひも解く駒形氏の独特な解説が続く。
同著は年中行事に沿い綴られ『正月』では新年を迎える箒の「スス男」、「骨正月」では今では見られない習俗も載る。『春から夏へ』は「春木山と道踏み板」「カッパのはなし」など。『盆』ではいまでは見られない「七日盆の沐浴」も。「秋から冬へ」では収獲期の祭りや子どもたちの草遊び、冬の「ジロ端の座席」などかつての暮らしが見える。『住まいと暮らし』では「嫁入り道中」「祝言のスミ見」など今では見られない習俗。「子守は楽のよで辛い」など当時の子守歌なども懐かしい写真と共に語り調で解説している。
▼「妻有今昔物語」(妻有新聞社発刊)A5版、239ページ、1冊1600円(税込)。限定300部、問合せは妻有新聞社TEL025-765-2215、Fax025-765-5106。
【妻有新聞 2023(令和5)年1月28日号】