「大丈夫だよ、なんとかなる」 身寄りなし問題研究会がNPO法人化 設立レセプション、盛大に

万代シルバーホテル「万代の間」は期待感と活気で満ち溢れていた

内閣府が発行している『高齢社会白書』によると、2014年現在で日本政府が把握している65歳以上の世帯数23,572世帯のうち、単独世帯5,959世帯と全体の25.3%である。実に約4人に1人の高齢者が一人で生活しているという計算になる。このような人々の中には家族や地域からも孤立し、結果的に「身寄りなし」になってしまうケースも決して少なくない。

一人で生活しているのは高齢者だけではない。NPO法人「つながる鹿児島」が2019年に行ったアンケート調査によれば、働きざかりの若者世代においても「身寄り」問題は存在している。親族が本当にいないケース以外にも、虐待やネグレクト等の理由により、「家族による支援」を受けられなくなっている事例などが指摘されている。

身寄りがないことにより、病院や施設に入居できない、アパートの契約ができないなどといった問題や、孤独死や死後相続の手続きができないなどといった問題も生じている。これら「身寄りなし問題」は、人々の暮らしを守るはずの諸制度が、現代社会の多様な生活スタイルの変化について行けず、結果として、社会から弱者を締め出してしまうことに繋がる。

2月26日、万代シルバーホテル「万代の間」(新潟県新潟市中央区)では、NPO法人「身寄りなし問題研究会」(新潟県新潟市中央区 須貝秀昭代表理事)の設立レセプションが行われた。同法人の前身は、任意団体で、2017年から活動を開始している。“おひとりさま”を許せる社会の実現に向けて、新潟県内の医療関係者、ソーシャルワーカー、法律家などの有志が、定期的に集まり、各分野の第一線で活躍する人物を講師に、研修会を開催するほか、「身寄りなし問題」などの社会課題を啓発する目的で各地に講師を派遣、また日常的な様々なことを手伝ってくれる人を派遣する「おっさんレンタル」などの互助事業を進めてきた。

同法人の須貝秀昭代表理事(51歳)は、看護師や社会福祉士などの資格を持ち、長年、新潟県長岡市や新潟県新潟市にある包括支援センターなどで、地域に暮らす人々に寄り添ってきた。日々の業務をこなし、多くの支援の必要な人々と向き合っていく中で、身寄りのない人々をとりまく問題や社会課題に触れ、ソーシャルアクションの必要性を痛感してきた。

こうした「身寄りなし問題」を軸にして、「従来までタブー視されてきた貧困ビジネスや風俗等の社会課題をなどできるだけ深く切り込み、発信し・解決していきたい」と須貝代表理事は「野望」を語った。

同法人は、単に講師を呼んで社会課題に対する知識や理解を深めることのみを活動の軸としているわけではない。研修会の開催とともに、居住支援や物資支援などの支援も併せて行い、地域のロールモデルとして活動していくことを目的としている。啓発と支援を同時に行うことが同法人の大きな特徴のひとつである。

新型ウィルス禍で世の中が騒然とし、同じような目的で活動をしていた団体が、次々と自粛やオンライン化などに切り替え、規模が縮小していく中でも、同会は月1回のオフラインでの研修会を、毎月欠かさず必ず開催してきた。「(感染症のリスクのある中で開催することは)正直怖かった」と、須貝代表理事は振り返る。

同法人のキャッチフレーズでもある「大丈夫だよ、なんとかなる。」は、須貝代表理事自身が日々の業務の中で、周囲の人々に言い続けてきたことである。向き合った人の人生をそのまま受け入れてしまうような雰囲気の須貝代表理事にいわれると、本当になんとかなってしまうような気持ちになる。そんな須貝代表理事自身が、多くの人々に慕われている理由も頷ける。任意団体時代は、こうした代表の人柄と行動力によって繋がった人々との信頼関係の上で様々な支援活動が行われていた。

今回の法人化により、須貝代表理事自身も「3月で今の職場を辞し、活動に専念する」と宣言、自身の抱負と決意を語った。特に、「4月からは、沖縄から北海道まで徒歩で移動しながら、身寄りなし問題を宣伝していく。見積もって3ヶ月くらいで行けると思う」との爆弾発言に、会場の雰囲気は驚きで一変した。レセプションは、新潟県内から110人が参加し、新潟県看護協会の斎藤有子会長や、新潟県介護支援専門協会の荒木薫副会長なども駆けつけてエールを送るなど、新潟県内の業界関係者による同会への期待は大きい。

会場にいた女性(保険業・61歳)は、「須貝さんがNPO法人を立ち上げると聞いて、お祝いに駆けつけた。身の回りにも(こういった支援の必要な人が)いるが、法律や制度などを知っていてフォローするのと、そうでないのとでは違う。会社から許しを得た上で、お手伝いもしていけたら」と協力していく姿勢をみせる。また、男性(フリースクール経営者・49歳)は、「いろんな人が集まってNPOになった。須貝さんはすげーなと思った」と感想を述べた。

須貝代表理事は、本紙の取材に対し、「今の日本は家族がいることを前提に制度がなりたっている。それを打破するには世の中の価値観を変えて行かないと行けない。おひとりさまがスタンダードな世の中に。レセプションで大勢の方に参加していただき、その方たちがSNS等で情報を拡散され、さらに大勢に方に“身寄り問題”を知ってもらう。その意味でのレセプションは成功でした」と、満足した様子である。レセプション終了後は、懇親会が行われ、関係者一同士気を高めるとともに、お互いの絆をより一層深めたようである。

問い合わせは080-3195-5590(須貝代表理事)まで。

革新的な支援のアイディアを次々と思いつく須貝秀昭代表理事

【関連サイト】

身寄りなし問題研究会公式Webサイト

 

(文・撮影 湯本泰隆)

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