【独自】「つるし雛を世代間交流のきっかけに」 長岡つるしびなの会代表 冨永貴子さん

天井いっぱいに広がるつるし雛(冨永さん提供)

天井から吊るされた大小さまざまな人形や縁起物。これらは「つるし雛」といわれ、江戸時代頃から始まった風習とされる。暮らしが豊かではなかったその昔、ひな人形はとても高価なもので、一般家庭が容易に買えるような代物ではなかった。そこで、集落の人々が集まって、布の端切れなどを使って協力して作り、無病息災や良縁祈念など、様々な願かけをして吊るしたのがもそもそもの始まりだという。庶民のひな飾りである。

つるしびなの展示の様子(冨永さん提供)

新潟県長岡市でつるし雛を広める活動をしている集まりがある。冨永貴子さん(40代)が主宰している「長岡つるしびなの会」である。冨永さんはもともと福島県楢葉町の出身である。東日本大震災がきっかけで、11年前に新潟県長岡市に移住した。一緒に避難してきた仲間たちのうち、働き盛りの世代や子育て世代は、日中、職場なり家庭なり、それぞれ居場所がある。一方、居場所なく取り残されるのはいつもシニア世代である。生活に張り合いがない。

シニアの人たちと冨永さんが集まり、お茶を飲みながら、「何か手仕事したいよね」という流れになったという。「何か簡単にできる手仕事などがないか」と冨永さんが書店などに通っているうちに、知人が「つるしびな」を作っていることを知り、見せてもらった。着物の端切れなどで簡単に作られることを知った。「かわいいものができるものなんだな」と感動したという。自分たちでもつるし雛を作ってみようと思い立ち、2012年に同「つるしびなの会」が結成された。現在では、新潟県長岡市以外にも、新潟県田上町や新潟県見附市の「道の駅」「まちの駅」などでつるし雛の展示や製作が体験できるワークショップなどを展開している。

「つるし雛がなかったら、手仕事をしていなかったかもしれない」と語る冨永さんの夢は大きい。今後は、つるし雛の裾野をシニア層だけではなく、手仕事が好きな若い世代にも広げたい」という。「若い人たちには情報発信ができるなどのよいところがある。シニア世代には経験がある。お互いの長所を活かし、良い関係性を築いていければ。手仕事を通して多世代交流の場を作りたい」と冨永さんは語る。

「今後は、長岡でつるし雛を作っている方々と大きな展示会をやりたい。いずれは“越後のつるし雛だったら長岡だよねえ”といわれるようになるのが夢」と語る。「ネーブルみつけ」(新潟県見附市学校町1)では7日まで、「道の駅たがみ」(新潟県田上町)では12日まで、同会のつるし雛が展示されている。また、25日と4月8日には、タニタカフェ(新潟県長岡市)でワークショップが行われる予定。

つるしびな作りのワークショップ(冨永さん提供)

ワークショップでつるし雛を指導する冨永さん

(文 湯本泰隆)

 

【関連サイト】
長岡つるしびなの会

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