コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.5 「ナイスキー!」小島亨介

アルビレックス新潟の小島亨介選手

アウェイの2連戦を終えて、1勝1分。勝ち点4で6位に位置するアルビレックス新潟。この2試合で感じたのは、選手自身が自分たちのプレーに自信を持ち、楽しみながら新潟のサッカーをしているということ。

同じ方向をみて、自分たちのサッカーに対して共通認識を持っているからこそ、高い連動性が生まれ、得点シーンを生み出しているように思える。

と書くと、攻撃にフューチャーしているように思われるかもしれないが、決してそんなことはない。今季、ここまでの結果を出せているのはむしろ守備面での功績が大きいと個人的には思っている。

中でも、飛び抜けての貢献度は、小島亨介選手だ。

J2リーグで優勝を果たした昨季、全42試合に出場した小島選手が許した失点は35。相手に打たれた被シュートの総数は306本。1試合平均で7.28本。単純に7本中6本は小島選手が止めた計算になる。

では、今季はどうか。

初戦のC大阪戦が前半7の後半3で、合計被シュート10本。2戦目となる広島戦では、前半7、後半15の合計22本。まだ2試合で何をいうと言われそうだが、相手の多くの得点シーンを潰しているのは事実だ。

「いいところもあれば、改善しなければならないところも当然あります。1試合での収穫が多いです。J1のチームは、本当に一瞬の隙を与えたら枠にシュートを飛ばしてくるから、細かい準備やポジショニング、味方選手へのコーチングなどあらゆる面で、隙を与えられない。これまで許してしまっている失点はそういったところをつかれているから、そこは改善しないといけないところ。一方で、広島戦は味方の選手と連携して、コースを限定しながら守れていたし、我慢強く守れていた点は良かったところですね。攻撃面でもしっかりと後ろでボールをつなぎながら相手の変化を見て前線にスペースができた瞬間を見逃さず、長いボールの配球も含めてチャンスメイクするなどいいシーンも増えてきています。あとはこれを90分間通してできるのかというのは、課題ですね」。

昨季、僕の試合ノートに「ナイスキー(パー)!」という表記がない試合はなかった。チームを救うビッグセーブが毎試合飛び出し、0もしくは限りなく0に近い結果を残すことで、チームの勝利に貢献してきた。

これは例外なく、今季も同様。

加えていうなら、今季は安心感も増しているように思えている。

「自信というか、落ち着きがある要因は、昨年からの積み上げが本当に大きいと思います。昨年、リキさん(松橋力蔵監督)は練習の中からJ1の基準を求めてやっていこうと話していましたし、僕たちもそれを意識しながら練習に臨んできました。試合を重ねるごとにクオリティが高くなり、シーズン終盤には本当に安定したボール回しをしながら縦に早い攻撃というのもできていました。昨年、自分たちで厳しい環境を作って、基準を高くしていたことで、今の僕たちがあると思っています。その自信が今のプレーにつながっている。まだまだ90分通して圧倒できないので、究極とは言えません。究極にいかに近づくか、を目指しながら毎試合に臨んでいきたいです。厚みのある攻撃をして、相手に奪われてもすぐに取り返してまた自分たちの攻撃をして、という、相手を圧倒する90分を目指します」。

サッカーは、守備から始まるという言葉がある。

本来はフィールドプレーヤーのボール奪取から攻撃が始まるという意味なのだろうが、僕なりの解釈は少し違う。

究極、ゴールキーパーから攻撃は始まる。相手のシュートを止めた瞬間から攻撃はスタートする。小島選手のすごさはここ。攻撃を始めるためのキャッチングにある。

もちろん、パンチングでクリアする場面もある。しかし、今季ここまでの2試合、圧倒的なキャッチングでシュートを防いでいる。

ボールをこぼさないから、安心感ある後方でのパス回しができ、自分たちのペースで攻撃が始められる点が好調の要因の一つになっていると思う。

3月4日、アルビレックス新潟は、いよいよホーム開幕戦を迎える。予想来場者は約25,000人。全席で声出し応援が可能となる。

ホームならでは、の絶対的なアドバンテージを味方につけ、チームを鼓舞する最後尾の仕掛け人。

ゴールキーパーの仕事が多いのは、いかがなものかと思うところもあるのだが、「ナイスキー(パー)!」とガッツポーズを決めたい自分がいるのも事実だったりする。

 

◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。

 

【過去の連載記事】

コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.1 「究極」 松橋力蔵監督

コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.2 「成長」 堀米悠斗

コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.3 「アリガトウ」 ダニーロ ゴメス&グスタボ ネスカウ

コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.4 「準備はいいか」谷口海斗

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