【妻有新聞】『津南町の覚悟』、議会が否決 医療育成支援策 総合診療医育成研修奨学金条例設置で

写真=医師育成条例を賛成4、反対9で否決した津南町議会(6日、津南町議場で)

医師確保のために、給与に研修費など上乗せ支援する独自施策で「総合診療医」確保に乗り出した津南町の桑原悠町長。その支給を規定する『総合診療医等研修奨学金等貸与条例』制定議案を6日の3月定例議会に提案したが反対多数で否決された。「給与と研修奨学金が高額で町財政への影響が大きい」「説明不足で拙速すぎる」などの理由で「賛成4、反対9」と同意は得られなかった。質疑では条例条文や予算化の仕分け、あるいは医師派遣の大学病院との関係など11人が発言したが理解は深まらなかった。町では新年度当初予算に予算計上している研修奨学金は、3月議会終了後、同月末に税条例改正などの臨時議会で補正予算減額したい方針だ。財政支出しての『津南町の覚悟』を議会が否決した医師確保・総合診療医育成の独自事業、今後の取り組みに関心が集まる。

この「総合診療医等研修奨学金等貸与」は、桑原町長、町立津南病院・林院長ら医療関係者、さら県福祉保健部と制度設計し創設した津南町独自の医師確保事業。地元選出の尾身県議、小山県議も「町が独自に財政支出するには荷が重い。県の支援が必要」などと県支援を要請し、これを受け県は2023年度の新規事業で『中小病院研修体制整備支援事業』を立ち上げ、開会中の県会に提案している。

この県事業は、病床200床以下の中小病院を対象に、中核病院(県立十日町病院含む)から研修医を受け入れのために作成が必要な研修計画を策定する指導医の環境整備経費の2分の1を補助する県独自事業。構想では十日町病院から研修医派遣を津南病院が受けた場合、年約356万円を津南町は十日町病院に支払う必要があり、その半分178万円を県が津南町に補助し、研修医を支援する。

これは津南町が今回条例化をめざした総合診療医の研修プログラムとは別事業だが、今回の総合診療医育成プログラムは十日町病院が受け入れる専門研修医3年間のうち2年間を津南病院で研修するシステム。これにより津南病院は医師確保ができ、十日町病院からの派遣の形となる。津南町の独自事業がすぐに実現しない場合、この県の支援策がバックアップする。
これと連動する新たな医師確保の制度設計を桑原町長、林院長、十日町病院・吉嶺院長らが県保健福祉部と作り上げたのが今回否決された「総合診療医等研修奨学金等貸与条例」だ。

この研修奨学金事業は昨年10月、町議に概要説明があり、同月末に県のアドバイスを受け厚生労働省本省で記者会見発表。さらに今年に入り再度議会に説明。だが6日の本会議では「説明不足。拙速すぎる。町財政への影響が大きい」などの意見が相次ぎ、条例修正など打開策を検討することなく採決に入り、反対多数で否決された。

条例議案の否決後、桑原町長は取材に答え「折り合える所は折り合い理解を求めていく。医師確保の活動はしていかなければならず、特に中山間地の医師確保は難しく(国県への要請活動など)これまでの方策では限界に来ており、議会で頂いた論点を整理し前に進みたい。持続可能な医師確保をどう作るか、その取り組みへの理解を求めていく」と地域医療に必要な『総合診療医』育成への研修奨学金制度を実現したいとしている。

「津南町総合診療医等研修奨学金等貸与条例」=総合診療医育成支援コース(十日町病院総合診療医専門研修プログラム3年間のうち2年間を津南病院で研修。給与(上限1,500万円)のほか研修奨学金年1,000万円貸与、最大4年間支援。4年以上津南病院常勤勤務の場合返還免除)。総合診療専門医・津南病院幹部育成コース(4年以上津南病院常勤医勤務、管理職育成で給与のほか年1千万円貸与、最大4年間、海外研修原則オンライン修学支援1,550万円貸与、最大2年間。4年以上津南病院常勤医勤務で返還免除)

妻有新聞 2023年3月11日号】

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