酒ジャーナリスト・小島岳大の「にいがた酒の陣2023参戦レポート」
2023年3月11日、12日と2日間にわたり、開催された「にいがた酒の陣2023」。新型ウイルスの関係で、4年ぶりとなる開催となった今回は、例年とどう違っていたのか?これまですべての年に参戦している酒ジャーナリストの僕が現地参戦。
今年の酒の陣がこれまでと最も異なるところ、それはチケット制の採用。11日、12日の両日をそれぞれ午前と午後の部と分け、合計4回の開催。各回3,000名の定員というスタイルを採用した点。最大14万人が集まるイベントは、約10分の1の収容イベントとなることになった。これに伴い、入場スタイルも変更。開場してから30分は試飲なしで、お酒の販売のみ。大部分の人が入場してから、一斉に試飲スタートとなるスタイルをとった。
僕が参戦したのは12日・日曜の午前の部。開場は10時の予定。問題はいつ会場となる朱鷺メッセに到着するか?人数制限がないときは、その列が柳都大橋までのびていた酒の陣。人数制限があるとはいえ、侮れないということで、8時45分をメドに到着。しかし、その列は、すでにこのような感じ。先頭の方は8時前に並び始めたとのこと。恐るべし、酒の陣。
僕が並べたのは、ほぼほぼ酒の陣の門のあたり。すぐに後ろには長蛇の人。30分も経ったころには、エスプラナードの端の方まで列は伸びている状態。まぁ、入場は間違いなくできるのだけれど、「いつ入れるの?」とヤキモキしたくない方はやはり早めの来場がおすすめだ。知った顔を見つけ、あいさつをしていると「開場を9時50分に」というアナウンス。思ったよりも早く、会場に入ることができた。
はい!これ!!という4年ぶりの見慣れた光景。エスプラナードから会場に降りておく階段の時点ですでにテンションが上がります。
10時30分の試飲スタートまでにしなければならないことは大別して2つ。1つは、お目当ての酒蔵の日本酒を購入するために並ぶこと。というもの、各蔵元はこの日のための特別銘柄を醸していることが多い。中には友人と連れ立って来場し、本数限定の味わいを手分けして購入。自らのテーブル席で「乾杯!」という酒の陣常連もいるほどだ。これを入手するために列に並ぶというのが1つ。そして、もう1つは、今回の酒の陣からプラスされたもの。これまでは入場時に配っていた酒の陣オリジナルおちょこ。これが今回から数量限定の販売制に。酒の陣ニストならば、ここまでのコレクションを途切れさせられない!ということで僕はこちらの購入列へ。1個300円で無事購入し、試飲開始まで会場を散策。
空きっ腹に酒は禁物ということで、まずは会場奥の飲食ブースへ。12の店舗が軒を連ね、肉に魚、カレーにラーメンと各種ラインナップ。
適度に腹を満たし、試飲まであと10分。乾杯で飲みたい日本酒の蔵元へ急ぐことに。
やってきたのは、越銘醸。旧・栃尾の蔵元で、代表銘柄は「越の鶴」「壱醸」。すでに試飲のお酒をもらうための列で待機する人が2、3人。
試飲には有料と無料があり、それぞれに希望の銘柄を伝えると試飲が可能に。そして、また今回から大きく変わったのが、プラカップでの提供。蔵元が注いでくれたお酒を自ら取るスタイル。記念おちょこを販売のスタイルにしたもの、プラカップでの提供スタイルもすべては感染症予防の観点から。試しながら、ということになるのだろうが、まずはこれが新しい酒の陣のスタイル。
そして、プラカップの登場により、新たなアイテムとして加わったのが、入場時に入手できる穴の空いた段ボール。これ、どう使うとかいうと……。
こうして……
こうする。
これまでのようにおちょこに一回一回注いでもらうスタイルではなくなったため、複数のお酒を持ち運びする必要が生まれた新しい酒の陣。そこで、お酒の入ったプラカップを入れ、飲み終わったプラカップを重ねて、移動の際にゴミ箱へ捨て、また……という一連の流れをサポートするアイテムが誕生した。これが使ってみると意外と便利で、役に立つ。
そして、この新スタイルを研究している蔵元のたくさんあった。その中からいくつか紹介。
これは、阿賀町の麒麟山酒造のお酒の提供方法。プラカップの大きさに合わせた穴が複数空いた木の板を銘柄ごとに用意。酒を注ぎ、この板にセットする人。セットされた酒を説明とともに提供する人と役割を分担することで、きちんと自分たちの銘柄の魅力を伝えたいという想いが感じ取れた。
またこちらは妙高市の鮎正宗酒造が採用していたスタイル。人の手をセンサーが検知して、一定量を自動で出すこの機械は、一台1万5,000円。しかし、蔵元と曰く「お客さまとお話しできるし、お客さまも入れることを楽しんでくださっているから決して高くないですよ」。蔵元との会話を楽しむという酒の陣の醍醐味を堪能するにはいいかもしれないと感心した。
ひとしきり会場を回り、蔵元と話をしながら試飲。あっという間に2時間30分が終了。となるのだが、ここからがある種、本番。
新潟の街での第二回戦のスタート。
まず訪れたのは、新潟駅前にある「錦屋酒店」。ここは角打ちのできる酒屋さん。
コインを購入して、サーバーから自分の好みの銘柄を選んで飲めるスポット。専門店だからこそのマニアックな銘柄を試せるのが、ポイントだ。もちろん、お土産を購入していくのもおすすめ。
そのあとは、新潟駅の中にある、とあるお店へ。
「TABI BAR & CAFE」は、厳選された新潟の日本酒が数多く集まる、左党の聖地。改札まで徒歩5分という立地なので、ギリギリまで日本酒を楽しみたい、呑助たちで常にお店はにぎわっている。酒の陣の開催日だったこの日は、さらに輪をかけて……。
新幹線までの新潟清酒を堪能したいと初来店の3人組は、初めての酒の陣を大絶賛。「こんなに楽しく、おいしく、勉強になるイベントだって知らなかった。また、来年も必ず来ます」
関東から来たという日本酒大好き親子は「この蔵のあのお酒、おいしかったよね。あのお酒、ここでも飲めないかな」と後日談に夢中。
◇◇
新潟の日本酒を飲んで、聞いて、話して堪能できる一日。それがにいがた酒の陣。「まだ未体験」「興味津々」という方は、ぜひこのレポートでシミュレーションの上、来年の参戦を!
(文・撮影 酒ジャーナリスト・小島岳大)