【独自】妊婦・産褥期女性の除雪、大変さを知って 新潟県長岡市内在住・理学療法士の女性がアンケートを実施

アンケート調査の結果について説明する渡辺美恵さん

雪国に住む人々にとって、なんといって除雪作業は重労働である。毎日続く終わりのない除雪に、心身共に不調をきたすという経験をする人も多いのではないだろうか。

新潟県や長岡市では、高齢者や障がい者のような要援護者にむけて、除雪ボランティアを派遣するなどのサポートを行っている。また、2006年12月に発足した民間団体「雪かき道場」などのような、除雪ボランティアを育成する取り組みもある。

除雪が負担になるのは、高齢者や障がい者ばかりではない。妊娠中や産褥期(さんじょくき)にある女性にとっても大きな負担である。新潟県長岡市在住で、理学療法士である渡辺美恵さん(46歳)はこの度、新潟県長岡市内の妊婦・産褥期の女性の除雪作業の実態と、除雪作業によってもたらされる心身のトラブルについての実態を把握するために、長岡市民113人を対象に、2月2日から28日にかけて、SNSやチラシなどを用いた質問紙法によるアンケート調査を行った。

その結果、妊娠中・産褥期に除雪作業を行ったことで、流産や出血、切迫流産・早産、子宮脱、精神的苦痛や憂鬱といったトラブルがあったと感じた人の割合が、全体の65.7%にも及ぶことが確認できた。また、「夫婦ともに市外出身者で誰も助けてくれない。助けを求められない家庭も多いと思う」「妊娠中でなくても小さい子どもがいたりすると昼寝中にしていた。いつ起きるかわからないし、除雪したくても出来ない状況」などといった意見も寄せられた。

アンケートを行った渡辺さんは18年前、東京都から新潟県長岡市に転入してきた。新潟ではじめての冬を迎えたのは、ちょうど妊娠5か月の頃だった。その年は1メートルの雪壁ができるほど大雪が降った年。通勤や上の子の送迎、買い物など、車で移動するためには、妊婦であっても不慣れな除雪作業を行わざるを得ず、不慣れな除雪作業の結果、切迫流産・早産で、出産直前まで入院したという。

渡辺さんは、「核家族化が進み、選択的シングルマザーなど多種多様な世帯が増える一方、近年では、新型コロナウィルスの感染拡大の影響が長引き、地域の繋がりが希薄になっているなかで、妊娠中・産褥期の人はもちろんのこと、高齢者や要援護者であっても行政の除雪支援は不十分」とする他、理学療法士でもある渡辺さんは、股関節や腹圧などを意識した正しい身体の使い方や、除雪作業に向けた“からだづくり”の重要性も説く。

アンケートの結果は、集計・考察後、長岡市民の声として、行政のしかる機関へと提出し、「一緒に考えるように働きがけをしたい」と渡辺さんは語る。結果を元に、行政にまるっきり任せるのではなく、あくまで自分たちで共助、自助をした上で必要に応じて行政からのサポートを受けるようにしたいというのが、渡辺さんの立場である。

今シーズンも新潟県長岡市は、災害級の大雪に見舞われた。多くの市民が除雪に苦しんでいた。今後の渡辺さんの活動が、より多くの市民の生活の一助となることを願うばかりだ。冬過ごしやすい雪国の暮らしに向けて、渡辺さんの歩みは、まだ始まったばかりである。

「行政と一緒に考えたい」と渡辺さんは語る

(文・撮影 湯本泰隆)

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