【独自】長岡市のヤングケアラー支援「ささいなことでも相談して」 長岡市子ども家庭センターの大久保千春所長
重い病気や障がい、または日本語が第一言語ではないなど、家族にケアを要する人がいる場合に、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなど大人が担うような責任を引き受けている18歳未満の子どもたちは通常、“ヤングケアラー”といわれている。こういった環境下に置かれた子ども達は、責任や負担の重さにより、学業や友人関係など、子どもの権利が著しく脅かされていることも決して少なくない。特に、高校生など、年齢層が高い子どもほど、子どもへの負荷が多くかかり、将来の進路選択にも大きな影響を与えることとなる。
近年、政府や地方自治体の調査によりヤングケアラーが問題視され始め、日本における実態が少しずつ明らかになってきたものの、いまだ世間的な認知度も低く、行政サポートが十分に行き届いているとはいえない状況である。直接的な虐待などと違って、直接的な身体や生命の危機に関わることが少ないため、多くが“家庭内の問題”とみなされ、行政や自治体などが強く踏み込んでいけないといこうことも、この問題が抱える難しさの一つである。
新潟県長岡市でも、ヤングケアラーに該当する子どもの存在が一定数把握されており、自治体による支援体制が敷かれている。自治体によるヤングケアラーの支援体制の現状と展望について、新潟県長岡市子ども家庭センターの大久保千春所長に話を聞いてみた。
ヤングケアラーの実態については、これまで国や新潟県でもそれぞれ独自に調査はしている。一方で、長岡市でも、これまで学校職員などを対象にアンケート調査や聞き取りなどを行ってきた。また、令和4年度には、8月、12月、2月と、3回の「ヤングケアラー支援体制検討会」を開催してきた。同会では、小・中学校、高校、福祉・介護・行政機関の関係者を中心に情報交換を行い、当事者の経験や周囲の大人同士の情報共有の仕組み、子ども達への負担軽減につながる対策などを検討してきた。
当初は子ども自体の負担にばかりフォーカスを当てていたが、実態を知るにつれ、親なども含めた家族全体に対して支援していかなければならないということが少しずつ明らかになってきたという。「強硬な手段をとっても、長い目で見ると子どもの幸せにはならない」と大久保所長は語る。実際、聞き取りやアンケート調査を行ってみても、悲惨な状況下に置かれている子どもの報告は、ほとんどあがってこない。大久保所長は、「それでもヤングケアラーが全くいないというわけではない」と指摘する。「該当する子ども達が、自分たちの置かれている状況を深刻に思っていない場合が多い」と説明した。
そもそも家庭の内部で起っていることなので、外部から指摘されなければ、自分のうちがおかしいということに気がつきにくい。自分が家のことを手伝って当たり前、家族の面倒を見て当たり前と思い込んで学校を休んだり、友人との交流をしなかったりと、同世代の社会から孤立しているケースもある。
そこで新潟県長岡市では、今後も引き続き、周知・啓発活動を行い、地域の子ども達・大人達に実態を知ってもらい、認知度を高めていく方針である。また、周知・啓発活動によって意識を持った市民が、学校などを通して、このような状況下に置かれている子ども達との関わりを強めていくことが大切としている。
大久保所長によれば、来年度も引き続き、支援・啓発活動を継続しながら、「本当に必要な家庭に“支援”というお土産を持って、家庭との信頼関係を築いた上で、子ども達を支援することができれば」と、コメントした。
長岡市は「心配事や気づきがあれば、ささいなことでも相談して欲しい」とし、今後も様々な視点で子どもに寄り添う体制づくりを行っていく所存である。
(文・撮影 湯本泰隆)