摂田屋に地元発酵食品を取り入れたフランス料理店が登場、地元の食材もふんだんに使って 5en(新潟県長岡市)

「5en」はしゃれた外装の建物「ミライコンパス」内にある

徒歩10分圏内に酒蔵が2軒、味噌・醤油蔵が3軒、薬酒蔵が1軒と、6軒もの醸造蔵が建ち並ぶ摂田屋で2022年11月、地元の食材を使った創作フレンチが気軽に楽しめるお店が登場した。オーナーは中澤壮一シェフ(53歳)である。

中澤シェフは新潟県南魚沼市出身。生家は、スキー宿を営んでいた。中澤シェフは、中学、高校時代から生家の手伝いでキッチンに入ることがあり、そのことから次第に料理を作ることに興味を覚え始めたという。高校2年生の頃には、調理師専門学校などのパンフレットを片手に、自身の進路について朧気に考え始めてた。高校を卒業した中澤シェフは、東京の調理師専門学校へと進学した。1年目は和食、中華、洋食と一通り全てのジャンルの料理を勉強。2年目からはフランス料理の道へ進もうと決心した。数多ある料理のなかで、フランス料理を選んだ理由は、見た目の美しさと料理の繊細さに魅了されたからだという。

専門学校卒業後は、そのまま都内のホテルやフレンチレストランで12年ほど修行を積み、新潟へとUターンした。長岡市で結婚式場のチーフとして腕をふるい、2012年にオープンした「Bague」ではシェフとして、地元食材にこだわったフランス料理を提供したという。一生懸命料理の腕を追求していった結果、2020年には、『ミシュランガイド』にて、「ビブグルマン」を獲得した。

「5en」という店名の由来は、①摂田屋という場所とのご縁、②6軒の醸造藏とのご縁、③長年レストランでシェフをしてきたご縁、④これからいらっしゃる方とのご縁、⑤ ①~④のご縁をつなぐ場でありたい、という想いに因むという。「ご縁を大切にしたい」という中澤シェフの提供するプレートには、6軒の醸造蔵で作られた発酵食品が、必ずどれか一種以上は使用されている。

座席はカウンター席、テーブル席とどちらでも使用できる。窓からの景色が開けていてとても良い

地元の食材を活かしたフランス料理を提供する中澤壮一シェフ

中澤シェフによれば、「フランス料理は、基本的に和の発酵食材を多用しない」という。一方、5enのフランス料理には、醤油、味噌、日本酒などがふんだんに使われている。「フランス料理には、その土地にある料理をどう活かしていくか、追求していくという“ガストロノミー”という考え方がある。その土地の生産物を、料理として活用し、その場所の人々とともに広めていく。そうすることで、店も、生産者も潤うし、お客さんも潤う」と、中澤シェフはいう。「当店の料理は、フランス料理の手法を使った摂田屋料理」と語った。

そんなお話を窺いながら、早速、「野菜のプレッセ」をいただいた。“プレッセ”とは「プレス」、即ち“冷やして圧縮”してスライスしたもので、寺泊産の落花生や大根、海老芋、中之島産の雪下人参などの野菜の出汁ブイヨン・ド・レギュームと吉乃川の名酒を煮切ったもので、冷やして固めている。

一口食べてみる。野菜本来のシャキシャキとした舌触りと食感が口一面に広がる。日本酒を使用したといっても、アルコールの味が全くしない。それでいて、日本酒の持つ甘みと旨みがそのまま残されているので、アルコールが苦手な人でも楽しめる一品だ。「これはうまい!」

「地元の醸造蔵を(料理を通して)皆さんに紹介する。おいしさをわかっていただいた上で、フレンチと発酵食材の融合を楽しんでいただければ」と中澤シェフは語った。

地元長岡の食材と摂田屋の6つの醸造蔵の発酵食品を使ったフランス風の郷土料理を食べた後は、醸造蔵を見ながら町並みを散歩する。摂田屋に観光に訪れた際は、何度でも足を運びたいお店である。

テーブルに出された「野菜のプレッセ」は、野菜本来の持つシャキシャキ感と日本酒の香りを感じさせないあっさりとした味が口の中で見事にマッチした

店内には6軒の醸造藏の発酵食品が並べてある

長年修行してきた中澤シェフの料理を作る動きに無駄がない

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