【2023年フロントランナーに聴く】第4回 「妙手・妙案はない」株式会社アクシアル リテイリング山岸豊後取締役副社長に聞く

山岸豊後(ぶんご)取締役副社長CFO執行役員

アクシアル リテイリング株式会社(新潟県長岡市)は、「ナルス」「原信」など展開する言わずと知れた新潟県を代表するスーパーマーケットである。2023年3月期第3四半期発表の既存店売上高は前年比1.6%増とプラスだった。既存店来店客数も前年比0.4%増と微増ながらも前年実績を上回った同社。新店舗でお客が来るのはある意味当然である。小売業にとって、永遠の課題ともいえるテーマが既存店客数だと言われる。それをクリアしたのだから、その要因があるはずである。

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しているが、県内証券会社からの推薦もあり、特に県内個人投資家に身近な銘柄として人気も高い。そんな同社の山岸豊後(ぶんご)取締役副社長CFO執行役員に、物価高の中でのPB(プライベート・ブランド)の売り上げ推移、既存店売上高プラスの要因、地元取引先への支援などを聞いた。

ーコロナ禍、物価高もあるなかで、PBの売れ行きが好調だという風に聞いているが、売上の推移はコロナ禍と比べてどのようになっているのか?

実は、直近だと478品目、売上の伸び率は6%で大きくは伸びていません。他の商品の値上げがある中で価格を据え置いているため、ほとんど食品。食品の中で比率から行くと豆腐や牛乳、納豆、漬物のような日配品が一番多いです。日配品で、比較的地域の豆腐とかそういった商品はそんなに生産の規模が大きくなくても、そこそこの商品が作れます。地域のメーカー様と組んで、日持ちのしない製品を、消費地の近くで、PBとして開発させてもらっています。問屋や流通業者を通さず、また宣伝もしないので、広告費も抑えられます。その結果、コストを抑え、低価格で提供できるようになっています。当社のPBは、単純に価格が安い商品というよりは、価格と品質のバランスをとって作っているので、おいしくない商品はまず却下。豆腐ひとつとってみても、食べ方によって様々なものをつくることができるので、多様なPB商品として展開しています。一番安い価格帯のものだと外国産の大豆を使った製品もあります。また、PBとは別に、地域の味である納豆だとか、豆腐や油揚げを大事にしており、地域のメーカー様で、生産力の低いものは、数店舗や地域限定で販売しているものもあります。

-CGCブランドの比率の比率は?また、今後、PBの比率を高める予定は?

CGCブランドの比率は、原料も含めて12パーセントくらいです。PBの比率については、商品の改変も多くするので、会社全体の方針として、PB率をどれだけ高めるかという目標を決めて取り組んではいません。もちろん、PBがたくさん売れるようであれば、PBの構成比は自動的にあがります。

-PBの開発に当たっては、業界の2位、3位の規模のメーカーと取り組むと聞いているが?

私どもの販売規模に見合ったメーカーさんとやっていきたいということです。大きなメーカーさんと開発しようとすれば、1回の製造量が多くなってしまう。そういう意味では、2位、3位のメーカーさんの方が、生産力が小さいので、そういったところで弊社も取り組やすいのです。

今も本社入り口で社員の働きぶりを温かく見守っている創業者・原信一氏の胸像

―今後、イオンやヨーカドーなどの業界大手とどのように戦っていくか。

それ自体は、お客様からの信用の問題だと考えています。一番大事なものは商品の品揃え。弊社には、地域の納豆だったり、豆腐だったり、イオンさんやヨーカドーさんが扱えないような地場商品があります。お客様の要望をいち早くキャッチして、小回りのきく販売をしていくしかありません。そういうところでお客様からの信用をいただく。地元密着型で小さいエリアでやれるいろんなことをしている。そこが弊社の強みです。

―既存店の客数・客単価が伸びているが、秘訣は?

客数を伸ばすにはお客様に多く来店してもらうしかありません。それは日々の信用しかありません。一番大事なのは、商品の品質。お客様に「はずれがない」と思われることです。弊社の商品を購入したお客様に、「おいしくない」という評価がされないようにしています。

PB商品にしても、「お買い得だよね」「味に遜色ないよね」というのが重なっていけば、「アクシアルのマークがついていれば、間違いがない」と思われるようになります。接客に関しても同じこと。いかにお客様に気持ちよく買い物してもらえるか。例えば、雪の日に、いかにお客様に駐車場を快適に利用してもらうか。各店舗では、雪が降ったときは店長が率先して除雪し、出入り口を開けています。そういった地道なことをしていくことが、商品の信用や店舗への信頼につながり、ブランドイメージに繋がっていきます。それが、お客様の獲得に繋がります。

先代社長(創業者)は、「(客数・客単価を伸ばすのに)妙手・妙案はない」とおっしゃっていました。チラシを出して安売りしても、その日は来るけれど他の日は続かない。日々の商品の品質やサービスの質を維持し続けること、それが大事です。

同社で引き継いだ小国饅頭

―上場企業の役割の一つとして、地元の業者を大事にして育てるという役割もあると思うが、同社はそのような取り組みをしているか。

かつて地域にあったボン・オーハシという企業が、民事再生にはいった際、原信がスポンサーとなって経営再建を行いました。現在では、弊社グループの製造会社の部門のひとつとして黒字化できた実績があります。弊社では今でもボン・オーハシの名前でパンを製造しており、地域の人にとって今でも大事なブランドとして残しています。

また小国饅頭のような例もあります。かつて弊社でも来迎寺と小千谷の2店舗、計3店舗に置いていた小国饅頭でしたが、製造元の山理屋菓子舗のご主人が体調を崩されて、製造継続が難しくなりました。当時は3店舗のみで扱っていた商品ですが、「せっかく地域では美味しいと評判のお饅頭。ですから、是非とも、継続して売らせてください」ということでお願いし、弊社社員が弟子入りみたいな形で原料の配合から製造手順、皮の配合、あんこの作り方など、教えていだきました。何度も試作品を作り続けて、機械もお譲りいただき、「これで合格」といわれ、試作品ができたのは、2021年の3月頃。はじめは長岡市内の数店舗で販売し、生産力を高めるため、今までの手作りから機械化に挑戦し、現在では原信ナルスの全店舗で販売できるようになりました。同饅頭は、かつてのブランドイメージを大切にしているため、パッケージデザインも山理屋様時代のままで、そこに“アクシアル”の名前は冠していません。商品化できてすぐに山理屋のご主人が亡くなりました。そのときの経緯は、「小国饅頭物語」として、弊社のYouTube動画に掲載しています。

―YouTubeも対応されているんですね。

グループ会社のひとつの高速印刷株式会社(新潟県長岡市北陽1 米山 秀彦代表取締役社長)がネット系の事業もやっているので、そちらでホームページの制作やYouTube、インスタグラムなどをやっています。原信ナルスアプリというのも別のグループ会社が開発しています。

「アプリ是非登録してください」と語る山岸取締役副社長CFO執行役員

―アプリ登録はどのようなメリットが?

原信のチラシを見られることはもちろん、事前登録が必要ですが、アプリで注文した商品を指定の店舗で商品を受け取ることができる「予約」サービスや、アプリで購入した商品を遠隔の方に配送することができる「ギフト」サービスなどがあります。アプリの登録者数は、大体40万人くらいで、クーポンも発行しているので、お買い得な商品を見つけて買い物していただくことができます。

また、原信の茶色いマイバスケットを持って買い物をすると、レジで全品3%引きになる「バスケットウィーク」というものもあります。アプリ会員限定の割引もあるので、アプリを入れて提示し、Paypayやd払いなどに接続すれば、アプリ内で一括して買い物ができてしまいます。

また、11年ほど前からネットスーパー事業を開始しているので、例えば、普段高齢の両親と別居しているお子さんが、両親の代わりにネットスーパーで買い物をして、ご両親のところへ配送するように注文することもできます(但し別途配送料はかかる)。大きい店舗で扱っている約15000品目のうち、生鮮食品や肉、魚などを含む9000品目くらいをネットスーパーでも扱っています。大雪のときなど配送できないときもありますが、天気が悪い日や夏の暑い日などは利用者の数が跳ね上がっています。配送料は、たくさん買っても定額なので、注文時は、多く注文する方がお得です。

「ナルス」の店舗(新潟県上越市)

 

【関連動画】

「つなぐ」小国饅頭物語

(文・湯本泰隆)

 

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