【統一地方選】これが時代の流れか?県議選で無投票区が13も出た理由①
地方政治家の役割が微妙に….?
「無投票そのものが問題かといえば、現職の評価が高く結果として対抗馬が出ないといったことも当然あるので一概には言えない。ただ単純に”なり手不足”というのがあるとすれば、(背景には)政治への関心の低さというのがひとつあるだろう。地方議員という職業に対して敬意のようなものが薄れてきたのではないか。議員の処遇なども考えていく必要があるかもしれない」
4月5日の定例会見で花角英世新潟県知事に対し、報道陣から質問が飛んだ。その5日前に統一地方選県議会議員選挙が告示となり、実に13の選挙区が無投票区となった。27名の無投票当選者が出て、結果として全議席の4割近くが”選挙を経ずに”埋められることになる。新潟県議選では戦後最多。知事の定例会見で、議員選挙の戦局について触れられるのも異例だ。
花角知事が言う「地方議員へのリスペクト低下」もわからないわけではない。一般有権者の中には「県議会など本当に機能しているのか」「県議会の仕事って何だ」と思う人も多い。近年、県議会で執行部と議会が真っ向から意見を戦わせる、例えば知事提出議案に対し議会が否決するといったような、緊張感に満ちた光景などとんと見られなくなった。もちろんそれによっていたずらに行政が膠着してしまうのは考えものだが、地方民主主義の根幹である二元代表制のイメージは非常に希薄なものになっている感は否めない。執行部の代表である首長とそのチェック機関としてある議会、のはずだったが、今や県議選の候補のポスターは花角知事との”ツーショット”が本当に多くなり『なんだかなあ』と冷めてくるのも確か。知事会見ではこういった執行者と議会のなれ合いによって有権者の政治離れが起こっているのではないかという辛辣な質問も飛んでいた。
郡部での選挙熱の冷め方は異常
もっとも無投票区が増えた原因は、こればかりではなく複合的なものだろう。選挙自体が時代を経て変わってきたのだという意見もある。
「農村部ではもはや保守・革新の対立構図すらない。今や反自民・革新で支持基盤と言えるのは労働組合ぐらいだが、大企業などを抱えない農村部ではそれがない。かつてそうした郡部における革新基盤として農民運動があったが、今そんな存在は有名無実。一方、自民系にしてもかつての地方組織の影響力などは薄れ、選挙の中心となっていた運動員は高齢化が目立つ。もう組織をバックに動員をかけるような空中戦の選挙ではなく、候補者本人が自分の足で戸別訪問などを繰り返すどぶ板選挙を強いられる時代に。国政選挙ですら『今回の選挙戦は〇〇候補の奥さんが頑張ったから』みたいな語られ方をするレベルだ。そんな思いをしてまで4年に一回”失業する”可能性をはらむ政治家という職業が、一般の人に憧れられないのも仕方ない」(元国会議員秘書)
農村部の市町村に行くと、近年、市議会・町議会レベルでも選挙戦の熱の冷め方は異常だ。「自民系〇人、民主系〇人、共産党〇人・・・」というように、もう”ワク”が固定化して久しい地方議会も珍しくないという。郡部の選挙熱は時代とともにどんどん去勢されている。
郡部ほど新人が出にくい環境になったのは否めないかもしれない。
(文・撮影 伊藤直樹)
②へつづく。
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