「建設業の『見て覚えろ』の因習を打破する」、新卒採用と人材教育に力を入れる中喜(新潟市東区)

掲載日 2023年7月10日
最終更新 2023年12月14日

内装工事・建築工事などの株式会社中喜(新潟市東区)が今年から、新卒採用に本腰を入れはじめた。建設業界は人手不足が叫ばれて久しい。「技術継承のためにも、これまでのような『見て覚えろ』ではいけない」と同社の中村太郎代表取締役社長は話す。同社では職人確保のため、事務所内に実習スペースまで新設した。職場環境を刷新し、旧態然とした業界の因習に挑む理由を中村社長を聞いた。

 

目次

○採用活動へ向けた社内改革
○業界の因習にあらがっていく
○建設業界を志す次世代へ

○会社データ

 

採用活動へ向けた社内改革

中喜の中村太郎代表取締役社長

──このタイミングで採用へ力を入れ始めた理由を教えてください。

これまで、朱鷺メッセや新潟市芸術文化会館(りゅーとぴあ)などの仕事を経て技術力を培ってきましたが、そうした貴重な経験をした職人の定年が近づいてきています。今年や来年の仕事はこなせたとしても、10年以上のスパンで考えると、将来仕事ができなくなります。若い人を入れ、技術を継承するタイミングは今しかありません。

 

──これまでの採用活動はどのようなものでしたか。

幸いにも弊社は離職率が低くたまに中途採用がある程度で、新卒を相手にする採用というのは、正直まだ手探りです。ただ、新しい人を迎えるための準備は進めてきました。

「キツい」という建設業界のイメージを変えるため、事務所の内装、就業規則、制度づくりなど、毎年課題を定めて一つづつ改善しています。内装の面で言えば、以前は各机がパーテーションで区切られた閉塞感のある構造でしたが、働きやすく、若い人が魅力を感じてもらえるように一新しました。

また、社員にアンケートを採って改善点を募っています。例えば「資格取得のサポートをしてほしい」や「コーヒーサーバーを導入してほしい」など。毎日百数十円の缶コーヒーにしても社員にとっては負担です。さらに美味しいものであればモチベーションにも繋がるので、社員みんなで試飲して、こだわって導入しました。

本社オフィスの様子

リモートパトロールの様子

──業務の効率化の取り組みについてもお聞かせください。

建設業界の残業の多さや休みの少なさはデータとして明らかになっており、弊社でもそれが「全く無い」とは言えません。しかし、会社としてそうした状況は無くしていきたいと考えています。

例えば、現在、コミュニケーションのメインには「LINEワークス」を使用し、現場の写真を送ることで、出社しなくても現場の状況が分かるようにしています。また一部の現場では、外注ともLINEで連絡して、KY(危険予知活動)の書類もオンラインでやり取りしています。オンラインツールの導入で、移動時間のかかる遠方の現場へ行く頻度は減っています。

施主や発注者の意向もあるため、現場によっては写真や動画を活用した大胆なDXを導入することはなかなかできませんが、バックオフィスにおける効率化など、できるところは全てやっていきたいと考えています。

 

──社員の働き方は近年変化しましたか。

私が家業であるこの会社へ戻ってきた時、現場も個人の裁量に任されているような、風通しの悪い環境でした。ですが現在は、社員各々が早めに悩みや課題に気づき、また相談できる環境を心がけています。

工事原価をリアルタイムで確認できるツールを導入することで、怪しい動きがあれば担当者をすぐにサポートできるようにしました。また、上司と部下による「1 on 1ミーティング」も月一回実施しています。

健康診断も、役職等の等級に応じた診断オプションを会社負担で実施しています。社員自身の生活がかかっていることはもちろん、少数精鋭なので、会社としても急な欠員は大きなリスクになるからです。社内にはトレーニングスペースもありますが、元気で長く働いてもらえるよう残業時間やストレスには気を遣っています。

 

業界の因習にあらがっていく

中村社長は「建設業をやりたいと言ってくれる人は宝」だと話す

──人手不足には業界の構造の問題もあると聞きます。

弊社の社員数は、東京営業所も併せて24人。しかし「職人」と呼ばれる人は、現状は1人も居ません。業界の構造として外注が多く、ほぼ中喜の仕事だけしかしないような職人でも、弊社の社員ではなく外注の会社に所属していたり、一人親方だったりします。

しかし、これからの人手不足の時代を考えた時、そうした(表に出ない)外注企業が人員を確保できるのか、という課題があります。だからこそ、弊社がリスクを負ってでも内製化して、職人を抱えていく必要があると考えています。

 

──そのための取り組みを教えてください。

私が入社した頃は、いきなり現場へ連れて行かれて雑用をやらされ、その上で「見て覚えろ」と言われる時代でした。しかし今の時代、わざわざ「建設業をやりたい」なんて言ってくれる新人は宝です。技術面から安全面までまずは言葉で教え、そしてきちんと練習する機会を与えるべきです。

現場はお客様のものであり、失敗などできませんし、昨今の短工期の現場では練習している余裕もありません。だから弊社では、事務所の一階に内装工事用の実習スペースを設けました。また、大手ゼネコンから「マイスター」として認定されているベテラン職人に講師を依頼しています。入社して最初の数か月にきちんと座学と練習を経て、現場へ出られるようにしていきたいと考えています。

 

建設業界を志す次世代へ

新設した実習スペース

──建設業や内装工事の魅力は何ですか。

正直な話、東京の会社から家業のこの会社へ帰ってきた時、私自身の建設業に対するイメージはあまり良くありませんでした。しかし、一兵卒として現場で作業してみると、ものづくりの楽しさに気づきました。特に、内装工事は建設業の最後の工程であり、一番目につく場所です。完成後の建物に入り「この天井は自分が造ったんだ」とやりがいを感じることができます。

しかし重要なことは、そうしたやりがいで職人を搾取するのではなく、真っ当に働ける環境をつくることです。(古い因習の残るような会社を)若い人が見れば「コンビニのほうが割りがいい」でしょうし、時給の高い首都圏ではその傾向は顕著です。働きやすい環境と、職人としてキャリアアップできる環境が必要です。

 

──職人の今後についてどう考えていますか。

(コンビニの話が出ましたが)レジ打ちや接客などの仕事がAIやロボットへ代わる中でも、職人の仕事はなくならないと考えています。建設業でも効率化は進み、単純作業はロボットにもできるとは思いますが、他工種と連携して調整したりだとか、難しい施工をヒトの感覚で柔軟に対応するのは、やはり経験のある熟練工でないとできません。

必要になってくるのは、「まとめる」力を持った本物の職人。だからこそ、(この仕事に)将来性はあると思っています。

 

──最後に、建設業界への就職を考える人へコメントをお願いします。

建設業界全体にネガティブなイメージがある中で、社員と一緒にその現状を打破していきたいと考えています。それは、経営者だけでは無理なことです。新入社員も含めた社員と、建設業界の新しいスタンダードを作っていきたいと考えています。

社内セミナーの様子

施工レクチャーの様子

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「職人」と言われる人々の技術継承は厳しい現状にある。建設業界、製造業、飲食……業界を問わず、手に職をつける仕事は人手不足に喘いでいる。「即戦力」を尊ぶ社会全体の傾向や、ファストに実績を作りたがる就職者の意識の変化もあるだろうが、一方で業界の構造と意識にも問題はある。

インタビューの中で中村社長は、「建設業をやりたいと言ってくれる人は宝」だと言った。昭和なやり方で新人をふるいにかけているようでは誰も残らないし、そもそも人は来ない。きちんとした訓練制度を設ける方が新入社員は士気が上がり、技能の習得速度も早い。

中喜を始め、県内でも近年は、建設業の新世代が業界を変えようと動き始める姿が目立つ。社内制度の現代化や、デジタルの導入による効率化には、むしろ他業種よりも積極的な印象だ。悪しき因習をアップデートするフロントランナーたちの今後に注目が集まる。

 

会社データ

株式会社中喜(新潟市東区)本社

1890年に畳問屋として創業。現在も畳事業は継続している一方で、先代からは内装工事を主軸にしている。複数の工種が必要となる内装工事だが、同社では「中喜装栄会」という協力業者からなる施工体制を確立することで、施工力と工種間の連携強化を確立する。施工事例としては、朱鷺メッセ、新潟市芸術文化会館(りゅーとぴあ)、デンカビッグスワンスタジアムなど。建築工事事業では住宅や店舗の新築からリノベーションまで幅広い。

また、リーマンショックによる受注減少の経験から、安定した利益を上げる経営に力を入れる。前述の内装工事と建築工事、そして新潟本社と近年開設した東京営業所というように、事業内容と地域を多角化させることで、繁忙期と閑散期のギャップを埋める構造を確立した点も強みで、2023年現在、リーマンショック以降12期連続黒字を達成。

中喜 webサイト

業務の様子

遠隔での業務の様子

トレーニングスペース

 

【関連リンク】
株式会社 中喜 採用情報

 

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「建設産業バックオフィスDX推進モデル事業補助金」の事例発表会、新潟県内建設業のDX促進(2023年3月16日)

 

本記事は、株式会社中喜提供による記事広告です。

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