ツインバード工業株式会社(新潟県燕市)がワクチン運搬庫の出荷式、燕市では同製品を来週からワクチン接種に導入

新潟県燕市の鈴木力市長(写真左)とツインバード工業株式会社の野水重明代表取締役社長(写真右)、中央に「ディープフリーザー25LWL」が置かれている

ツインバード工業株式会社(新潟県燕市)は16日、同社の開発したワクチン運搬庫「ディープフリーザー25LWL」の出荷式を開催した。同製品は、モデルナ社のワクチンコールドチェーン構築に採用され、厚生労働省と武田薬品工業株式会社から累計1万台を受注、今回はそのうち660台を出荷した。

また出荷式後には、ツインバードと燕市が合同会見を開き、同市でファイザー社ワクチンを市内各医療機関へ運搬する際に「ディープフリーザー25LWL」を使用することを発表。冷凍での運搬によりワクチンの保存期間が大幅に延長されるため、より品質を安定させた状態で効率的に摂取できるようになるという。

出荷式の様子

出荷直前のトラック

出荷式には、地元燕市の鈴木力市長をはじめ、新潟経済同友会の山本善政代表幹事、燕商工会議所の田野隆夫会頭、協力企業を代表して江戸川産業株式会社(新潟県三条市)の新保智也代表取締役社長が出席。なお、新潟県の花角英世知事も出席予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大にかかる会議などの関係から産業労働部の佐野哲郎部長が出席した。

ツインバードの野水重明代表取締役社長は式の挨拶に立ち「本製品は20年前、先代社長の提案と地域の先輩方の協力により開発が始まり、燕三条地域の技術を集結し完成したツインバード独自のスターリング冷凍技術を使っている。正にこの場にお集まりいただいた地域のみなさんと一丸となって、(新型コロナという)国難に立ち向かっていきたい」と語り、式の最後にはディープフリーザー計660台を乗せたトラック2台を見送った。

燕市とツインバードの合同記者会見の様子

出荷式の後、ツインバードの野水社長は燕市の鈴木市長と合同記者会見を開催。「ディープフリーザー25LWL」を用いてファイザー社製ワクチンを市内に供給する「燕市版コールドチェーン」を発表した。

厚生労働省が示すファイザー社製ワクチンの摂取体制の構築案では、各市町村に配布されるワクチンはまず、自治体内に1から3ヶ所程度配置される基本型摂取施設に保存され、そこから各摂取会場へ、摂氏2から8度に保たれる保冷パックで3時間以内に移送する。移送後の保管期間は5日。

一方で、厚労省では各摂取会場へは、摂氏マイナス15からマイナス25度での冷凍移送を推奨している。冷凍の場合、移送可能時間は24時間、保管可能時間は14日に延長されるが、適当な保管庫の確保が難しい点が課題となる。

燕市版コールドチェーン

燕市では試験的に、ツインバードから「ディープフリーザー25LWL」をすでに3台購入しており、来週から開始する高齢者施設などでの摂取に用いるという。燕市は40台以上の契約を完了させており、施設摂取後には一般摂取に拡大する予定。

具体的には、基本型摂取施設を燕市役所本庁舎に変更。市役所から各摂取施設への移送に「ディープフリーザー25LWL」を用いることで冷凍移送を可能にする。移送に用いたディープフリーザーをそのまま各施設での保管容器に転用できることもメリットだ。

保管期間が5日間の場合は医療機関の土日休日などの関係で移送が週の初めに限定されていたが、14日 になることで移送日時の分散と移送拠点の一元化が可能になる。また、摂取予約の急なキャンセルなどによるワクチンの浪費も減少することが予想できる。

鈴木市長は「本市のように各医療機関での個別摂取を中心とする自治体ではメリットが大きい」と強い期待感を示す。現在ワクチン摂取体制の参考にされることが多い「東京都練馬区モデル」に次ぐ、「燕市版コールドチェーン」の形成となるか注目だ。

 

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