コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.7「成長の証」トーマス・デン
「前半は難しい場面もあったけれど、全体的にはいいゲームだったと思います。僕自身は常に110%でチームのためにプレーすることを心がけています。そのことがいいプレーにつながったけれども、残念なのは勝点3を取りきれなかったこと。だからこそ、次のゲームでは必ず勝点3を取りたいと思っています」。
2023年4月11日の練習後、引き分けに終わった神戸戦(第7節/A△0―0)の話を若きDF・トーマス・デン選手に聞いた。首位を走る神戸のホームに乗り込んだこの試合、新潟はボールを保持するもなかなか攻めきれず、決定機を作れない状況。一方、神戸は徐々に新潟陣内の攻め入り、決定的なシーンを何度も演出。ことごとく新潟の守護神・小島亨介選手がそれを防ぐ。こんなシーンが続いていた。
そんな試合の67分、相手のクリアボールを拾ったトーマス選手がそのままドリブル。離れた位置から足を振り抜き、ロングシュートを放つ。結果、シュートはバーの上となったが、非常に惜しいシュートだった。
「得点が欲しかったのもあるけれど、あれはチームに対してのメッセージも込めたシュートでした。あそこまでチームはなかなかシュートまでいけていなかった。“もっとチャレンジした方がいいんじゃないか”という僕なりのメッセージでした。リーグが進むにつれて、どんどん相手チームには研究されて、対策されてくると思います。だからこそどんどんチャレンジしていくことが重要だと思うんです。あの試合、ボール保持はよかったけれど、最後のファイナルサードでの出来はチームとして満足できるものではなかったと思います。もっともっとチームとして進化していきたいと思います」。
松橋力蔵監督は、神戸戦を0で抑えたディフェンス陣をこのように評した。
「非常によかったと思います。どう相手に対応していくかというところは積み上げたものがしっかりと成果として現れていた。確かにやられそうな場面はあったかもしれないけれど、日本代表に名を連ねていた選手を筆頭に、相手の前線の選手の迫力に負けず、総じて自由を与えずに押さえ込んでいたことは評価できると思います。ただ、もっとできたことはあるとも思います。神戸戦でセンターバックを務めた二人、フミヤ(早川史哉)とトミー(トーマス・デン)にはポジショニングに関しての共有を行いました。できなかったことというネガティブな要素を自分たちでどう捉えるか。これをしないと、ポジティブにはなれないと思っています」。
修正と成長。
今季のアルビはチーム全体で、毎試合を終えるごとにこれを繰り返している。見ていて楽しいサッカーの要因はきっとここなのだろうな、と思いながら、YouTubeを立ち上げた。
おすすめに出てきたのは、Jリーグ公式チャンネル。
「【#J30ベストアウォーズ】全24ゴール!ロングシュート/ミドルシュート部門 ノミネートゴール」という動画を何気なくクリックした。
30年を迎えたJリーグ。少し粗めの画質とともに、懐かしい選手たちの名前。見ているだけで、成長遂げているJリーグの歴史をも感じられる素敵な動画。5分すぎ、知った名前が動画のテロップに現れた。
「トーマス・デン」。
当時、浦和レッズに所属していたトーマス選手がセットプレーからのボールに合わせ、豪快に叩き込んだミドルシュートがノミネートされていた。
新潟に来て2シーズン目。けがを癒し、オーストラリア代表に招集されるまで成長を遂げ、まだまだ進化を続けている26歳。今季、安定した守備でチームのピンチを救っているのは何度も目にしている。
となると……。
スタジアムが響めくようなスーパーゴールとパフォーマンスのワンセット。
トーマス選手の積み重ねの結果。
あぁ、できればホーム戦、目の前で、動画のあれを超えるプレーを見てみたい。
◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。
【前回の連載記事】
コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.6 「100パーセント」 太田修介(2023年4月1日)