【妻有新聞】「越後妻有はもっと元気になれます」卒業論文が最優秀賞「クローネ賞」選出
「地域課題に熱意をもって取り組む若者や大人にインタビューし、越後妻有地域はもっと元気になれる、と私自身も勇気を貰いました」。津南町出身で東京大学文学部に進学、今年3月に卒業した中島優香さん(22、県立津南中等教育学校卒)。卒業論文『「新しい」文化を地域住民はいかに受容しているのか—。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」を事例としたインタビュー調査から』で、同大文学部社会学研究室における最優秀論文に贈られる『クローネ賞』を受賞。芸術祭の成り立ちから、高校生や関係者、宿泊や飲食店業者など住民19人にインタビュー。芸術祭が回を重ねるごとに地域活性化や住民意識にどんな影響や変化をもたらしているかを考察している。
文化芸術と地域政策を扱うゼミに所属した中島さん。地域の過疎化問題と、故郷で展開している大地の芸術祭との関係に興味が増し「ゼミ仲間も芸術祭を知っている人が多かったんです。でも地元に住む方は、こんな風に芸術祭に関心を持っているのかなと考えて、調べてみようと思いました」。同祭を卒論テーマに定め、妻有地域の学生、行政の芸術祭担当者、地元の飲食業や宿泊業関係者など、多様な住民の捉え方を聞くことで、同祭がもたらしているものを浮き彫りにしようと考えた。
卒論では芸術祭が回を重ね、関心を持っていなかった住民も、地域活性化をめざす趣旨は理解できるように変化したと指摘。さらに住民同士やアーティスト、来訪者などとの交流ツールとなり『地域への愛着を育んでいる』面があり、これが住民に『諦めなくていい。地域をもっと元気にできる』期待感や希望に繋がっている可能性に言及。「津南町に住んでいた頃は地域に愛着を感じていない、または地域が過疎になることを諦めている若者が周りに多いように感じていました」と振り返るが「今回のインタビューを通し芸術祭に関心・期待感を持つ人も大勢いると分かり、また住民の地域活性化への意欲を高めていると感じました」と芸術祭が地域づくりに取り組む住民を生み出す契機になっていると感じている。
4年間の大学生活を終え、今月から新たな道を踏み出す中島さん。独自技術でリサイクルを進め、エコな社会をめざすベンチャー企業に入社。「環境、社会、地球といったようなものと人との関係を考えながら社会に貢献したい。人と地球、お互いにとって住みやすい環境作りに取り組んでいきます」とさらに一歩、夢に向かって進む。
【妻有新聞 2023年(令和5)年4月1日号】