【独自コラム・統一地方選に想う】新人台頭vsベテラン健在、そして無投票区増加の未来に待つのは

統一地方選も幕を下ろした

統一地方選挙の後半戦が終わった。今回の選挙戦で前後半を通じて話題になったのが無投票区の激増。特に問題視されたのが13もの選挙区で無投票となった県議選だった。花角英世県知事が、会見で「あらゆる公職選挙についての関心の低下が懸念される」と言及するなど、地方政治家の「なり手不足」という現象が注目された。もしこうした背景があるなら、地方政治は将来破綻するかもしれない。その一方で「今が過渡期なのだ」と言う意見はある。地方政治のバトンタッチは、どのタイミングで行われるのだろうか。

 

選挙上等、いつでも来い

ベテラン健在

県議選・阿賀野市選挙区で、今回無投票で当選を果たした帆苅謙治県議。現職9期目、旧安田町(北蒲原郡)町議時代を含め地方政治家として実に10期。自民党県連の現職ではもちろん、新潟県議会でも押しも押されもせぬ重鎮。帆苅氏の選挙歴を見返して見ると、9度の県議選の中で無投票が5回、選挙戦になった4回中2回は3議席を4~5人で争った北蒲原選挙区だが、全てトップ当選という抜群の安定感だ。

―阿賀野市選挙区もそうですが、今回の統一地方選前半戦では無投票区の増加が大きくクローズアップされている。「無投票」にも地域の声は反映されていると思いますか?

「私はそう思います。(無投票で当選したのは)それなりに4年勤め上げた自負もあるし、評価された結果だとポジティブに考えています」

―むしろ選挙を戦いたい、という気持ちはあるのですか?

「仮に選挙戦になっても困らないように万全な後援組織を作ってきました。負ける要素はありませんでしたね。そうした姿を見て対立候補が逡巡したのかもしれません」

―無投票区の増加について、若手の人材が育っていないという見方もありますが

「後進を育てるというのは私どもの責任において進められるべきところ。私が地元で主催する政治勉強会には100人以上の会員がいます」

―その中から未来の県議候補が?

「若手には常々『いつでも(自分に)向かって来いよ』と言っていますが、なかなか出てきません(苦笑)。ただ、後継指名のようなことはしたくない。活きの良い新人がいたら、自分から手を挙げてほしいという希望があります」

帆苅氏の話を聞いていると、後進に道を”譲らない”のは悪いことではない、と感じる。

御年74歳、政治人生38年。重鎮となった今も定期的に議会報を発行し、それだけに飽きたらず昨年はYouTubeチャンネル「ほかりのひかり」をスタート。そんなまだまだ老け込まない姿、これまでの圧倒的な選挙戦歴を見ていると「ここ(阿賀野選挙区)は無投票にもなるかな」という気になる。

少子化世代だから地域を想う

4月23日に投開票が行われた小千谷市議選では16議席を17人で争う選挙戦となったが、そこで30歳新人の佐藤瑞穂氏が2397票を獲得し2位で当選を果たした。トップとは173票差。今回の選挙戦では最年少の立候補者だった。バブルが崩壊した後に生まれた世代だ。

佐藤氏は花火で知られる小千谷市片貝町の出身。大学時代を京都、卒業後に東京都内で過ごし地元にUターンし、山の暮らし再生機構の仕事をしながら仲間と地域おこしの任意団体「鍬とスコップ」を立ち上げた。

「ちょうど少子化世代に突入する世代。保育園から中学校卒業までずっと同じクラスメイトでした。子供ながらに『子供が少ないな』とは感じていました。30年も前から始まっている課題が、どうして今、さらに深刻化しているのか。政治が変わらなくてはいけないのは明白だと感じます」

佐藤氏らが立ち上げた地域おこしの任意団体「鍬とスコップ」の活動の一環で、県外の学生インターンと自主制作映画を製作した時の写真、手前左側が佐藤氏

子供が少ない世代に生まれると、その分周りとの関係性は濃くなる。必然、自分が育った地域への想い入れも強くなる。地域が人口減少で衰退していく姿を見ていられなくなった。地元で地域活動や地域復興・地域活性系の仕事をする中で、地⽅政治に興味を持つのは⾃然な流れだった。

今回の無投票区増加では「若い世代に地方政治家のなり手がいない」というのがもっぱらの意見だが、自分の生まれ育った地域に対して想い入れが深い少子化世代以降から、次代の地方政治を担う人材は出るかもしれない。

「私が地方政治の道に踏み出す決心をさせてくれたのは、現小千谷市長の宮崎悦男さん。コロナ禍で社会が停滞していたなか、飲⾷や催事、花⽕など様々な業界を⽀援する企画について宮崎さんに⼀緒に汗をかいてもらいました。2021 年6⽉に県知事への緊急要望に同⾏させてもらったのですが、これにより億単位の経済⽀援策につながり、県の伝統⼯ 芸品の創設にもつながったのです。まさに”政治が動くと物事が動く”という瞬間を目の当たりにしました」

後進に”背中を見せられる”先輩がいることで、若手人材は育つ。

 

(文・伊藤直樹)

 

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