コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.8 「敗者の特権」新井直人

アルビレックス新潟の新井直人選手

 

25日の練習後、新井直人選手に話を聞いた。

「選手一人一人が話す場が今日の練習前のミーティングで設けられました。それぞれの選手がそれぞれの角度や視点から今思っていることを話しました。僕がみんなの話を聞いて感じたのは、全員が自信を持って、新潟の今のスタイルを貫き通さないといけないということ。今のJ1で最も魅力的なサッカーをしているのは新潟だと思うし、そこに自信を持ってやっていきたいな、と。リキさん(松橋力蔵監督)からはみんなに、負けたからといって自分たちの価値を下げるなという言葉がありました」。

23日、鹿島をホームのデンカビッグスワンスタジアムに迎えて、行われた、J1リーグの第9節。23920人が集まったスタジアム、開始3分で鹿島に先制されると26分に追加点を許す。試合はこのまま進み、0-2で終了。

「自分たちがやりたいことをやれている時間もあった。失点をしているし、負けているけれど、試合内容が悪かったというとそうではないと思っています。自分自身としては、攻守に関わる回数は多かったし、クロスやシュートのシーンも作れた。あとはそういうシーンで決め切る精度を高めるだけ。鹿島戦は、誰かが決めていれば、絶対うちに流れを持ってきていたと思っています。そういう流れを持ってこられる選手になれるよう、個人にフォーカスして、練習に臨みたいと思います」

同日に行われた囲み会見で松橋力蔵監督は、こんなことを話してくれた。

「たぶんここまでのリーグ戦9試合の中で最も悔しい敗戦が鹿島戦。選手もスタッフもみんなが次の試合でやってやるという、そんな敗者の特権で今日に臨んできていると思ったので、試合の振り返りはしませんでした。したのは、原点への振り返り。僕が監督になったときにみんなに伝えたことをもう一度みんなで共有しました。ポゼッションも大事だけれど、それはすべてではなく、割合でいえば、60%。もう40%がテリトリー。サッカーは陣取りゲーム、いかに相手陣内に入っていくかが大事です。ちゃんとボールを握りながら、パスのサイズを変えていこうと選手には常々言っています。短いパスばかりでは自分たちもボールをもらいに寄っていってしまう。ショート、ショート、ミドルで裏へ展開。ショート、ショート、ショートで続けて、相手のライン間が詰まってきて背後ができたなら、ロングボールを使う。相手の陣地に有効な場所があると考え、そのテリトリーを取りに行くことがサッカーでは大事だと伝えています」。

実は新井選手も同じようなことを話していた。

「みんながボールを受けにきてしまうと相手は怖くないだろうと試合中も思っていた。だからこそ、背後に流すボールが必要だった。鹿島は自分たちにとって嫌なことをしてきた。フォワードの選手もボランチの選手もどんどん僕らの陣内の深いところまで侵入してきた。このやり方を今度は盗んで、僕たちの戦い方として吸収したい。全員が背後をとりにいってそこから押し込んで今度は中央を崩す。そういった攻撃からまた新しい攻め方が生まれてくると思うので、まずは練習から取り組んでいきたいと思います」

かの名将、野村克也さんは自身の書「負けかたの極意」(講談社)で「勝利には、運や偶然に作用された勝利、私にいわせれば『不思議の勝ち』が存在する。対して、『不思議の負け』
はない」とした上で、「必ず負けに至った理由がある。たとえアンラッキーに見えたときも、しっかり分析していけば、それを招いた原因がどこかにあるはずなのだ。つまり、やり方を間違えたから負けたのである。とすれば、負けたから、あるいは失敗したからといって、へこたれたり、嘆いたり、気分転換をしたりする前に、敗因を追及し、修正・改善することが非常に大切になる。そうやってきちんと反省すれば、同じ轍を踏むことは格段に少なくなり、勝利する確率、成功する確率が上がるからだ」と記している。

よりよい未来を手に入れるための反省。そもそも、反省できるのは敗者ならではの特権だと。

「とにかく1試合1試合で100%を出し切ることが大事。今は、FC東京戦しか見ていないです。そこに集中して、試合に臨みたいと思います」(新井)。

両サイドをこなしつつも、「今季は右サイドバックで勝負したい」と話す、背番号2番。
敗戦からの学びが、新潟をさらに強くする。

 

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コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.1 「究極」 松橋力蔵監督

コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.2 「成長」 堀米悠斗

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