日本のユニット折り紙のパイオニア 新潟県長岡市出身の布施知子さんの個展が故郷で開かれる アオーレ長岡で5月13日まで
糊を使わず、複数の紙を折り曲げることで、‟ユニット“と呼ばれる比較的簡単なものをいくつも作り、それらを組み合わせて立体感のある作品に仕上げていく「ユニット折り紙」。新潟県長岡市与板地域の出身で、世界的に活躍している折り紙作家の布施知子さん(72歳)は、この「ユニット折り紙」の日本における先駆者である。さまざまな折り方を生み出し、国内外で、折り紙に関する多くの書籍を出版している。布施さんの地元長岡初の個展「Origami布施知子の世界~OROCHI in 長岡」がアオーレ長岡1Fの市民交流ホールAで開催されている。
布施さんは旧与板町の出身である。7歳の頃、病気で長い間入院をした。その際、父親からもらった折り紙の本を見ながらユリを折って以来、折り紙に夢中になったという。大学卒業後も東京都内で学習塾の講師として働く傍ら、折り紙の創作活動を続け、30歳頃には平面折り紙をメインにした初めての折り紙の指導書を出版した。1985年に仕事を辞め、長野県大町市で折り紙一筋の作家生活に入った。
一枚の紙を折って創り出された作品は、まるで絵の具で描いたかのような幾何学的な模様が特徴的である。そのほか、幅120センチ、長さ100センチの紙を筒状にして蛇腹のように凹凸をつけた布施さんの代表作「OROCHI(大蛇(おろち))」等、80点ほどを展示している。
2022年大地の芸術祭にて出品された布施さんの作品「うぶすなの白」を見て以来すっかり布施作品に魅了されてしまったという埼玉県在住70代の女性は、「彼女の持っているエネルギーに圧倒された。こういうものに挑戦するエネルギーがすごい。世界に通用するものだと思う。どうやって作ったのか想像がつかない。制作過程を見てみたい」と絶賛した。
新潟県魚沼市から、折り紙が好きな娘に誘われて一緒に見に来た石田貴博さん(38歳)は、「紙なのに生き物みたいだ」と驚く。娘の莉菜さん(11歳)も「いつか自分もこのようなものを作ってみたい。今日は来てよかった」と満足げに語った。
布施さんの出身地である与板地域から参加した水野秀雄さんは、「本当に昔の折り紙のイメージと違ってスケールが大きい。しかも現代アートを思わせるようなものが数多く、こういうものが長岡で見られることが(地元にとって)大きな刺激になると思います」と語った。
展示初日となった4日には磯田達伸長岡市長(71歳)も来場し、1点1点布施さんの説明を聞きながら、「ハニカム構造のようだ」と語る。「工学的、数学的に高度なものを使っておられるので、いろいろな刺激を受けられる。若い人たち、特にイノベーション、企業・創業をやりたい人、頑張ろうとしている人に見てもらうとインスピレーションを得られる。布施さんの折り紙は長岡のイノベーション、日本のイノベーションになるはず」とし、また6月完成予定の米百俵プレイス・ミライエについても触れ、「是非イベントをやってみていただきたい。長岡の新しいシンボルになるとうれしい」と強く語った。
普段は長野県大町市を拠点に制作している布施さんにとって、今回初めてとなる故郷での展示は、特に思い入れが強かった様子である。「故郷で開催出来て嬉しい。同級生・同窓生が一緒になって、会場選びから、ゼロから作り上げた。みんなで作って行う展覧会は初めてだったので、苦労も大きかったが、みんなで一緒になってできた。長岡の人たちに、折り紙の面白い世界を見てほしい」と語った。5月13日まで。
(文・撮影 湯本泰隆)