【独自】寿司の弁慶(新潟県佐渡市)が初の海外店、ベトナムでの様子と狙いを小崎和彦社長に聞く
新潟県や首都圏を中心に寿司店を展開する株式会社弁慶(新潟県佐渡市)が3月21日、ベトナムのヴンタウ市に同社初となる海外店「SUSHI BENKEI」をオープンした。準備日間から開店までの様子を現地で視察した小崎和彦代表取締役社長は「ベトナム独特の需要がある」と話しつつも、日本の寿司のクオリティを提供する意義についても語る。
今回は、同社海外初出店までの経緯と、現地視察の所感、今後の展望などを小崎社長に聞いた。
目次
○日系寿司店が無いベトナムのリゾート地
○現地の食材で日本の品質を
○ベトナム独自の需要
○海外で本格寿司を展開する挑戦
日系寿司店が無いベトナムのリゾート地
弁慶では今回のヴンタウ店開店あたって、株式会社TSUBASA(新潟県聖籠町)と連携し共同出資会社ベトナム弁慶コーポレーションを設立。出資率は50%。海外出店に至ったきっかけについて小崎社長は「同社との出会いが大きかった」と話すが、成長著しいベトナムに大きな期待を寄せていることも事実だ。
「(視察を経て)ベトナムは高度成長期の日本のような雰囲気があり、やはりここで商売をやるのは面白いと感じた。国内では(新規出店の)初期投資が大きい割にリスクが大きく、今までのようなペースでの出店は厳しい。一方でベトナムは初期投資も安く、若い働き手の確保も容易。並行して浦和店の開店準備も進めていたが、投資金額で言えば圧倒的にベトナム店の方が安く抑えられている」(小崎社長)。
また、ヴンタウ市には本格的な寿司店が少ない点にも目をつけた。東南アジアでも寿司人気は高まっている。しかし、「寿司店」とは名ばかりの総合和食店のような形態で、提供する寿司自体も「本格」には程遠い品質の店が多いのが実態である。
それでもベトナム国内最大のホーチミン市では、日本人が経営するいわゆる「日系レストラン」も存在しており、寿司店は飽和状態にある。そこで、ホーチミンから程近い海水浴リゾートのヴンタウ市でカウンタースタイルの本格的な寿司店を打ち出し、「地元の客も取り込みつつ、顧客単価の高い国内外の観光客やベトナム人富裕層、現地日系人を狙う」(小崎社長)。高成長が期待される地域へ先陣を切る形だ。
現地の食材で日本の品質を
前述の通り、「SUSHI BENKEI」ではヴンタウ市に無かった高いクオリティの寿司店をコンセプトに据えるため、食材にはこだわった。シャリは日本と気候が近い北ベトナム産コシヒカリ。ネタには地場での調達を中心に、日本にしかない食材は豊洲から直送する。
ヴンタウは海鮮が有名であり、ブラックタイガー、アオリイカ、ハタ系の白身魚、貝類と多種多様。地場の海鮮を取り入れ、刺身であれば「ヴンタウ盛り」のような現地メニューも作った。また、今後は水槽を置いて活魚、伊勢エビとカニを取り扱いたい考えだという。
アルコール類の取り扱いにも力を入れる。ベトナムでは食事時はビールが主流で、また日本と比較して大量に摂る傾向にある。そのため、缶・瓶ビール以外にもビールサーバーを複数種用意。同時に、サワー類やハイボール、ウイスキーなど日本に馴染みの深い酒類も提供して外国人や日系人の需要にも対応する。
「現地ではベトナム人が経営する日式レストランでベトナミゼーションされた寿司が多い。弊社では現地に媚びず、日本の味を貫く」と小崎社長は力を込める。
ベトナム独自の需要
これまでの開店準備やオープン日の視察で現地を経て、具体的に見えてきた需要もあったと小崎社長は話す。「現地に居てまず気がついたことは、予想以上に日本人が多いこと。準備期間から看板を見た日本人が尋ねて来たこともあり、やはり『ヴンタウには日本人が満足できる寿司店が無い』という声を聞いた」。また、そうした現地日本人の意見も店づくりに取り入れているという。
また、ベトナム文化の特徴として宴会需要の高さにも気がついたという。ベトナムでは会社員同士で飲み会を開くよりも、例えば誕生日などの機会に家族パーティをすることが多い。
提供する寿司の品質は維持し店側が顧客をリードつつも、生活文化などの面では現地に合わせる必要がある。今後は、お祝い需要への対応や、子供向け料理の拡充などが必要になっていく。
海外で本格寿司を展開する挑戦
日本のクオリティを維持しつつ、ベトナムへ向けた調整を重ねて来た「SUSHI BENKEI」。弁慶では今回の初進出を機に、これからも海外展開を検討しているという。
「弊社としては、今回のヴンタウ店は『種まき』という位置付け。今すぐ大きな利益を得るというよりも、現地でのノウハウや人脈を培っていきたい。『SUSHI BENKEI』で日本の寿司の品質を現地やベトナム富裕層に知ってもらえれば、様々な展開が考えられる。そうした意味では今回は挑戦であり、意義深い出店だと考えている」(小崎社長)。
弁慶は寿司店という軸は据えつつも、回転寿司から立ち食いスタイルまで様々な様式を実験し、さらに出店地域ごとのローカライズを行い県内外での評価を勝ち取ってきた。その同社が、加速し始めたベトナム社会の荒波をどう乗りこなすか。これからの展開に注目だ。
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