【長岡新聞】山古志 牛の角突き初場所 県内外から多くのファン
国の重要無形民俗文化財に指定されている山古志地域の伝統行事「牛の角突き」(山古志闘牛会主催)の今季初場所が4日、山古志闘牛場(山古志南平)で行われた。コロナ禍が落ち着き、天候にも恵まれたこともあり、全国から多くのファンが訪れて会場はにぎわいをみせていた。
4場所ぶりに通常の形で初場所開催
同地域や小千谷市東山地区からなる「二十村郷」での牛の角突きは、神事として100年あまりの歴史を持つと伝えられている。戦後、一時期途絶えることになったが住民らの努力で復活した。中越地震で存続が危ぶまれたときも、全国からの支援で乗り越えた行事である。
神事の流れをくむため二十村郷の角突きは、牛と勢子の駆け引きを楽しみ引き分けを原則とする。国内では沖縄県や愛媛県宇和島、岩手県久慈など6県9市町村で角突きが行われているが、このうち引き分けを原則とするのは二十村郷のみである。この点が最大の特徴となっており、これが評価され1978年、国内の角突きとしては唯一の国の重要無形民俗文化財に指定された。
コロナ禍で牛の角突きも、中止や入場制限など大きな影響を受けた。さらに昨年からの物価高により牛の飼育費がかさんだこともあって、入場料は昨年から300円の値上げをした。そうしたなかでも4年ぶりに通常の形での初場所の開催である。県内外から約1,200人が来場し、牛の激突に歓声をあげていた。
牛を見て楽しむのが山古志の角突きの理念
初場所前にオープニングセレモニーが開かれ、磯田達伸市長が「コロナ禍の3年間も角突きは継続されてきた。今年は多くの人から足を運んでもらい、牛の激突だけでなく勢子の動きも楽しんでほしい」とあいさつした。その後、「勢子」「牛持ち」、磯田市長が場内を日本酒で清め、円陣になって当日の13組26頭の取り組みを確認した。
勢子に綱をとられ2頭の闘牛が入場してくると、観客からは歓声があがった。序盤の取り組みは、角突きデビューしたばかりの若い牛が中心で、勢子が綱をにぎったまま行われるが、取り組みが進みベテランの闘牛の出番になると、鼻綱がほどかれ勢子の手を離れた対戦になる。
闘志むき出しで、1トンあまりの巨体がぶつかり合うと「ガツン」と激しい音が場内に響き渡る。観客らは、闘牛が繰り出す「かけ」や「まくり」といった技の説明を聞きながら、勇壮な取り組みに息をのんでいた。引き分けとするために勝負が決まる前に、闘志が残る牛を15人ほどの勢子が後ろ足に綱をかけたり、角を押さえたりする。人と牛が一体となった勇壮な姿に観客たちは固唾をのんで魅入っていた。
山古志闘牛会の松井富栄会長は「勝負をつけるのではなく牛を見て楽しむのが、山古志の角突きの理念となっている。そこに人の温かみがあり、これからも続けていく。11月3日の千秋楽まで、角突きとともに山古志の四季を楽しんでもらいたい」と話していた。
このほか会場には角突きの写真撮影をしている中越高校写真部(新保町)の作品が展示された。
【長岡新聞 2023年5月11日付】