小国町法末の火打池(新潟県長岡市) ミツガシワが見頃
5月も中盤を迎え、新潟県長岡市小国町法末(ほうすえ)にある火打池ではミツガシワが、見ごろを迎えている。ミツガシワは、春先に小さいかわいらしい白い花をつける多年草で、主に寒冷地の湿地や浅い水中に生える。氷期の生き残りの残存植物ともいわれている貴重な水棲植物である。
火打池は、外周は100メートルほどのため池である。高台立地し、川などの天然の水場がない同集落では、重機を使って人の手で広げ、棚田に水を引くために利用して来た。ところが、高齢化や過疎化などによって農業人口が激減し、次第に池の必要性もなくなると、長い間放置されて次第に荒れていった。
池にはクロサンショウウオやタニシ、カエルなどの多くの水棲生物が住処とし、またミツガシワ等の植物も群生している。池の周辺にも、トンボ等の昆虫やハクビシン等の動物の姿も見られる。池の周辺には、貴重な生態系が残されている。
ため池周辺の環境を守ろうと、大橋好博さん(69歳)と中山間地支援で法末に関わったことがある広橋潤さん(51歳)が整備を進めている。
大橋さんは集落の出身である。元々、火打池の周辺に住んでいたが、30代の頃、結婚を機に転居した。子どもの頃は「魚を釣った記憶がある程度」だったという。夏には周囲は草で覆われてしまい、冬は50~60センチメートル程水位が上がる。放っておくと直ぐに草でいっぱいになってしまう。少しずつ補助金をもらい、池の中から生えた草を抜き、周囲の草を刈る等できる限りの整備を進めてきた。「整備したことによって、これだけの池になりました」と大橋さんは笑顔で語る。池の周りを歩くための木道や階段なども手作りで整備してきた。
同じく、「人が通るところじゃなかった」と語るのは広橋さんである。広橋さんは、溜池を整備しつつ、個人的な趣味として自然観察を行っている。元々は仕事の関係で太平洋側の地域を転々としていたという広橋さんは、ため池に、貴重な生態系が残されていることを知った。群馬県みなかみ町で行われている赤谷プロジェクトにも参画したことがある広橋さんは、「湿地だとか花だとか、貴重なものを見ることを目的に首都圏から通ってくる人もいて、そういうのっていいな」と、次第に思うようになっていったという。
「ゆくゆくは観察会なども行っていきたい」と考えている。「新潟って、あんまり自然に関心がない人も多い。“当たり前”だけど、そのうち“当たり前”ではなくなる。好きな人が、心置きなく、のんびりして見られる場所になるといいな」と夢を語った。今年は水環境のモニタリング調査なども行い、得られたデータなどをホームページで公開していく。地域の貴重な環境整備を行う2人の挑戦はこれからも続いていく。
(文・撮影 湯本泰隆)
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