【独自】寿司の弁慶(新潟県佐渡市)がアワビ養殖へ着手、地元の雇用創出と海産資源の維持目指す

2月に池に入れたアワビの稚貝(写真提供:弁慶)

寿司店を展開する株式会社弁慶(新潟県佐渡市)がこのほど、アワビの養殖に着手し始めた。今後試験を重ね実用に足るか見極める。同社の小崎和彦代表取締役社長は、地元・佐渡の環境とブランドを活かし、地域の雇用創出も目指すと意気込む。

稚貝の池入れはこの2月中旬。3月にオープンした同社初の海外店ベトナム・ヴンタウ店や、4月オープンの浦和店の準備と並行して計画を進めていた。アワビは、販売するに足る7センチメートル台まで成長するまで約1年。寿司のネタに使える10センチメートル台まで育てるには、個体差もあるが2、3年はかかる。実用化にはさらにそこから食味の研究や、生産体制の拡充を図る必要がある。長い道のりはまだまだこれからだ。

新事業のきっかけは昨2022年始めに開店した弁慶グループの「カニカニランド」。佐渡両津港にカニのストック用水槽を用意した際、水槽業者から「アワビ養殖用の水槽が余っている」と話を持ちかけられたことだった。

「(漁業において)養殖は今トレンドになっている。アワビの養殖も技術自体は確立しているが、これまでは輸入品との価格競争に勝てなかった。しかし、円安の現在は再び注目を浴びつつある」と小崎社長。また現在、健康志向などの高まりから海外での生食用海産物の需要も高まっており、それに伴って価格も釣り上がっている。特に中国の富裕層では顕著で、弁慶でも近年はアワビを同国から輸入することが困難になっているという。

こうした状況から、弁慶でもアワビの養殖へ踏み出した。前述の水槽を改修し用いた陸上養殖で、まずは九州の研究機関からアワビの稚貝4,000匹を仕入れ試験的に養殖を開始。陸上養殖の弱点の一つはランニングコストの高さだが、養殖水には両津港の魚市場で用いられている殺菌海水を、餌には地場で豊富に採れる海藻を使用。海産豊かな漁港を持つ佐渡の環境でカバーする形だ。同時に、地元の餌にこだわることでアワビ自体のブランディングも狙っていく。

また、実用化に漕ぎつけたあかつきには、自社の県内外11店舗(2023年5月現在、カニ専門店と外国店を除く)で売り先を確保できる点も大きな強み。まだ同社にとっては手探りの現状ではあるものの、軌道に乗れば佐渡や新潟市の宿泊施設への提供など多くの展開が望める。

アワビ養殖の水槽の様子(写真提供:弁慶)

世界的な需要の高まりによる価格の高騰と、環境の変化や資源管理の面での規制強化による漁獲量の減少。さらには漁業者の後継者不足が深刻な課題となり、日本の漁業は危機的な状況にある。一方で、ITや養殖水などの技術革新で養殖業界は急成長を遂げている。佐渡の話題で言えば、ウクライナ情勢の影響を受けて不足する外国産サーモンに代わって、佐渡で養殖されたサーモンが昨年大きな成功を収めた。

この潮流を寿司業界も静観してはいられない。「国内での生産と自社内での消費、これからは自給自足が重要になっていく。漁獲量が減り漁業者も減っている中で、弁慶が研究して佐渡で新しい産業を興すことができれば、自社にとっても地域にとっても好影響になると考えている」(小崎社長)。

佐渡の雄・弁慶、地元の素材を使っていかに地元へ貢献するか。挑戦は始まったばかりだ。

弁慶 新潟本社オフィス

 

【関連リンク】
弁慶 webサイト

 

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本記事は、株式会社弁慶提供による記事広告です。

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