【妻有新聞】古民家「奴奈川姫の家」が繋ぐ縁 岩田重信さん・金由起さん夫妻 第10回 野の花展27、28日に

今月27、28日に第10回展を開く岩田夫妻(奴奈川姫の家で)

「こんなに長く続けることになるとは思いませんでした」。松代・室野の古民家・奴奈川姫の家で、野草と古道具を組み合わせ生け花を見せる「古民家で野の花展」開催を続けている十日町市中条の岩田重信さん(73)と金由起さん(68)夫妻。今月27〜28日に第10回展を開く。昨秋の第9回は5百人を超える過去最高の人出があり「目標であった第10回展です。今回も多くの方が来るかも。来場してくれた人が喜んでくれると嬉しい」と準備を進めている。

松之山温泉ファンの夫妻。「松之山温泉の近くに家が欲しいなと思い探したら松之山では見つからず、近くの室野のこの家があったんです」。築150年余、畑と共に生きた住民が住んでいた家を17年前に購入。少しずつリフォームを重ね、地域に残る奴奈川姫伝説にちなみ屋号を『奴奈川姫の家』と命名。だが2011年3月12日、長野県北部地震が発生。室野地内の民家も大きな被害を受けた。「うちも壁にひびが入ったけど、漆喰を塗る前だったのでまだ被害は少なかった。でも地域を見ると壊れた家が多くて。それで、何か皆さんが喜んでくれることができないか考えたんです」。

たまたま上越の友人が古民家を使った野の花展を開催しているのを知り「これを復興を願い、やろうと思ったんです」。交流ある華道家や庭師などに出展を願い、2011年秋に『古民家で野の花展』を開催。実行委員会名の『野の花を活ける会』は「中条公民館で同名の会に所属し、細々と生け花を習っていて。この名前は素晴らしいと、許可を得て名前を借りたんです」。手作りの展示だったが2日間で3百人余が来場。「これだけ楽しんでくれる方が来るなら次もやらなきゃとなったんです。本当は1回だけのはずだったんですが」。その後も年1回、秋と春に交互に同展を開催。さらにお茶会、レコードを聞く会、ひな祭りなども行い、徐々にファンは拡大していった。「この家が繋いでくれた交友はとても大きいです」。古民家が縁を次々に繋いた。
だが4年前に新型コロナウイルスが発生し、開催は当面見合わせとなったが、昨秋復活。第9回展は初日から予想以上の人出があり『この会を待っていた』というファンが多数。県内各地や遠くは福島県からも来訪者があり2日間、人が途切れることはなかった。「私たちは人が来てくれるか不安だったのですが、予想以上の人出でびっくり。この展示をみんな待っててくれたと思うとありがたいです」。

古民家らしく囲炉裏の煙で燻され黒く光る梁や柱がある雰囲気ある空間に、季節の野草を組み合わせるなどした生け花たち。古道具好きなふたりが集めた甕やタンスなども活用し、他にはない花展になっている。「実はふたりとも、ちゃんと生け花を習った経験はないんです。人に見られておかしくないようにと考えちゃうから、本当は作品作りが大変」と笑う。
今月行う第10回展。「完全に独自で始め、いま多くの人が来てくれることは本当にすごいことだと感じています。続けるうちにいつの間にか第10回を開くのが目標になっていました。やる方は不安ばっかりですが、来てくれた方が喜んでくれるのが一番の励みです」。古民家が生み出す縁は、さらに広がっている。

古民家の黒光りする柱と野の花のコラボが人気となっている「野の花展」(昨年9月)

▼第10回古民家で野の花展=5月27、28日、奴奈川姫の家(十日町市室野4505)。特別企画に「森の匠のわら仕事と竹とんぼ作りの実演会」。湯沢町のわら細工達人・小林守雄さんと竹とんぼなど作る高井国和さんが実演。入場無料。

妻有新聞 2023年5月20日号】

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