【独自コラム】今こそ求められる「義の心」 新潟県上越市の「かかし市」関係者が嘆く現代社会のモラルハザード
かつては中山間地などに行くと比較的随所に見られた無人販売所。基本的に店員はおらず、値段は表示されているものの、お金を払うかどうかは「お客との信頼関係」「善意」で成り立っていると言える。
現在、新潟県上越市でも無人販売所が数少なくなっている中、上越市中郷区にある無人販売所「かかし市」を訪れてみた。
5月から「かかし市」の今年度営業がスタートしており、11月末まで営業するという。ここは地元農家が作った野菜や苗、花などさまざまな商品が販売される無人直売所で、購入する場合には商品の前に設置された料金箱にお金を入れるシステムだ。この日は女性客が大根やあさつきを購入する姿が見られ、ヒャクニチソウ、サルビアなどの花の苗が販売されていた。
一見のどかな無人販売所の風景だが、実は困った問題が起こっているという。
店頭に立っていた販売担当の女性が言う。ここでは完全に無人というわけではないようだ。
この女性は、「中には箱に入れるお金が足りない人がいる。この間は警察も入った。そういうことをされると、昨今の肥料高騰傾向もあり、困ってしまう。温泉街の無人販売所などもやっていけないところも出てきていると聞く」と窮状を語っていた。
一方、全国に目を向けると、殺人事件が多発する昨今、日本人の心が荒んでいると感じる。日本人がかつて有していた倫理や道徳は薄れているように感じるのは筆者だけだろうか。
さらには、今年1月の回転寿司チェーン「スシロー」の迷惑行為。ボックス席に座った金髪の少年が、備えつけの醤油の差し口や未使用の湯呑みを舐めまわしたほか、回転レーンの寿司に唾液を何度も擦りつける様子がSNSに映っていた件だ。その後、似たような迷惑行為が次々とSNSに載った。
これは失われた20年、いや30年で、日本はモラルハザード(倫理の欠如)に侵され、「ばれなければよい」という考えが蔓延ったのではないか。
「自分だけ良ければいい」と言う考えもまた現代社会に蔓延っていると感じる。今こそ、地元上越市ゆかりの戦国武将・上杉謙信公の「義の心」や、現代でいえば、平成の経営の神様・稲盛和夫氏の「利他の心」に立ち返るべきではなだろうか。「義の心」と「利他」とは、他人のために尽力することである。利他の反対はエゴイズムである。
「かかし市」では、100円の商品に10円しか入れなかったり、ひどい場合には、そのまま持っていったりする輩もいるという。後者は完全に窃盗罪である。
ある意味で、無人販売所が成り立つかどうかで、その地域の民度が分かるとも言われているが、いつまでも無人販売所が成り立つ社会であってほしいと切に願っている。
(文・撮影 梅川康輝)
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