企業秘密ギリギリ 燕の工場、最新の技術力 産業史料館(新潟県燕市)で地元BtoB企業の企画展
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株式会社今井技巧「今井技巧オリジナルザクヘッド」
燕市産業史料館(新潟県燕市)で6月2日から、地元BtoB(企業間取引)企業の技術力を紹介する企画展「ファクタリウム展」を開催している。普段は見ることが難しい技術を目の当たりにできる展示で、会期中にはトークイベントも開催予定。
「ファクタリウム」は、市内の金属加工企業のマッチングを目的とした共同受注グループのプラットフォーム。2020年にwebサイトを立ち上げ、2023年6月現在で主に燕市内の22社が加入している。同加入企業も含め、燕市内の工場はそれぞれ高度な加工技術を保有し、国内外の産業に必要不可欠な存在となっているが、その一方で守秘義務によって表へ出る機会は極めて少ない。
今回はそうした企業へスポットを当てた、まさしく同館らしい企画展。各社がメーカーに許可をとった品々は「展示できるギリギリ」。だからこそ、加工技術、材料科学、DXなどあらゆる面で産業の最先端を走る「燕の現在進行形が一堂に会する奇跡の技術展覧会」(学芸員 齋藤優介氏)となった。
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展示の様子
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有限会社長谷川挽物製作所 「MAT21」切削加工品
今回参加したうちの1社である有限会社長谷川挽物製作所では、ニッケル基合金「MAT21」の切削加工品を展示。非常に扱いの難しい同素材も加工できる点が長谷川挽物製作所の強みの一つだ。長谷川克紀代表取締役は自社の技術に絡め、燕について「日々新しい素材が開発される中で、それらの加工技術が確立する前に挑戦が求められるのがこの町」だと語る。ステンレス、チタンなど各時代ごとに挑戦してきた歴史の積み重ねが、今日の技術とメーカーからの信頼に繋がっている。
一方で、前述の通りその実績は一般的な視点では見えづらい。次世代への継承などを考えた際、意義深いのが今回のような展示だ。「今、工場で働く社員の子供世代に、あるいは地域の学校に『俺たちはこれを作っている』と伝えることができる。今の燕を考える場を設けてもらったことは、とてもありがたい」(長谷川代表)。
齋藤氏は「毎日のように技術を研鑽しながら世界と戦っている人たちがいるのに、(一般には)知られていない。地元の子供たちも含め、燕が今何をしているのか広く伝えたい。副題に『いくぜ、未来』と書いた。ここからまだまだ燕が金属産業で生きていく、ということを体感してほしい」と熱を込めた。
企画展の会期は7月9日まで。開館時間は9時から16時30分。入館料は、大人が400円で、小・中・高校生は100円。なお、市内の小中学生と付き添いの保護者1人はミュージアムパスポート持参で入館無料となる。
また、会期中には出展企業の代表者を招いたトークイベントも開催。内容については、下記のサイトを参照。
【関連リンク】
燕市産業史料館 「企画展「ファクタリウム展」のご案内」
【グーグルマップ 燕市産業史料館】
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市内の多種多様な技術を見ることができる
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展示には身近な品々も