【妻有新聞】感性に響く、芸術祭の象徴 カバコフ氏死去89歳 平和・共生を世界へ発信
2000年の大地の芸術祭スタート以来、芸術祭の象徴的な作品を創出した旧ソ連ウクライナ出身で現代美術家のイリヤ&エミリア・カバコフ夫妻。5月27日、夫のイリヤ・カバコフ氏が89歳で亡くなった。大地の芸術祭の『まつだい農舞台』前の棚田作品は世界に芸術祭を発信するシンボルになっている。
関口芳史市長は5月29日、定例記者会見で「大地の芸術祭の中心作品を作っていただいた。ここじゃなきゃだめという、特定の場所に存在するために制作されたサイトスパシフィック(その場のために作られた)作品が多く、その向こうにある何かを見てくれという作品が多い。最初の作品『棚田』はそれを体現している。訪れた人が棚田の中を歩く光景はまさに大地の芸術祭そのものだ」。
2015年に完成した作品『人生のアーチ』にも触れ「人生とはいかに苦しいのか、苦労の連続なのかを分かりやすく表現した作品。カバコフさんほどの方も人生とはこういうものなのかなと、私も感じ入った作品だ」。
2021年の『手をたずさえる塔』を鑑賞した時は「『人生のアーチ』では表現されていない最後の絵があり、ああそうか彼の人生観とはそういうことだったんだなと。苦しみの中でもがくが最後は優しい世界に行けるというメッセージの絵になっている。『人生は厳しいんだよ諸君、しかし最後は優しいところにいけるんだよ』とメッセージを感じて非常に安心した」。人と人とのつながり、平和をテーマにした『手をたずさえる塔』、「ものすごい力強いメッセージ。妻有地域からこれからも発信し続けられることは大変ありがたいことで名誉」と話した。
【妻有新聞 2023年6月3日号】