「2023フロントランナーに聴く」第6回 新潟県妙高市の城戸陽二市長「妙高市に住んで、東京で働く選択肢があってもいい」
昨年11月に新潟県妙高市長に城戸(きど)陽二氏が就任して半年が経過した。冬は霊峰・妙高山のスキーを中心に観光客が訪れ、アフターコロナに入った今後はインバウンド需要も大きく期待できよう。「観光客からしてみれば県境や市境など自治体間の線は関係ない」と上越市、糸魚川市や長野県との広域連携の必要性も説く城戸市長だが、上越市、妙高市、糸魚川市において、海(カヤック)から里(自転車)、山頂(登山)を人力のみで行う環境スポーツイベント「シートゥーサミット」は昨年に続き、今年2回目を迎える。前観光商工課長を務めた城戸市長に広域観光の必要性や、未来都市に選定されているSDGsの取り組みなどについて伺った。
城戸市長は、「SDGsに関しては、国からSDGs未来都市に選ばれているので、実践している自治体ということを国内外に発信し、観光誘客にもつなげていく。SDGsは、世界共通の開発目標であり、まちづくりの目指す方向性だと思っているので、SDGsの理念を取り込みSDGsを原動力とし、いかに住みやすいまちを創っていくか、持続可能なまちを創っていくかに尽きるかなと思っている」と述べた。
また、「しかし、やはり移住先として選ばれる地になるにはハードルは高い。一昔前の移住は、現役をリタイアしてからという人が多かったと思うが、最近の移住の傾向としては、30代・40代が増えてきている。仕事を持ち、子育てをしているこの世代から移住先に選んでもらうためには、誰一人取り残さないというSDGsの理念の元、サステナブルやウェルビーイングに対する取り組みを充実させることや、単なる観光交流としてだけではなく、いわゆる関係人口をいかに今度増やして移住に結びつけるかという戦略になるのではないか。地元に住んでいる特に若い人たちからすると、田舎はやはり不便だと感じている人が多い。自分たちが望んでいるようなお店が少ないとか、電車やバスの本数が少ないとか。でも、都会の人たちからしてみれば、逆にそれがうるさくなくていいと感じる人もいる。その価値観はやはり都会に住んだことがないと分からないのかもしれない」と発言。
さらに、「だから、人口減少が進展する中で働き場所については重要だと思っている。そういう意味で企業誘致や起業、スタートアップの方にも支援をしていかないといけない。今の子どもたちは、デジタルの教育や英語などのグローバルな教育を受けている。高校を卒業して、そのまま地元に就職というのは難しい。だから、一度妙高市を出て、グルーバルな社会を知る中で、妙高市の魅力にも気づき、そしてどこかでまた妙高市に戻ってきてくれる、そのためには、妙高市出身の若者たちを関係人口として繋がりを持ち続けるような仕組みを作っていきたい。一方で、デジタル化の進展も相まって多様なライフスタイルが定着しつつあるアフターコロナの時代において、妙高市に住んでいても、必ずしも妙高市で働く必要はない。妙高市に住んで、東京で働く選択肢があってもいい」と話した。
一方、「観光で言うと、一自治体の完結型の観光だけでは限界がある。冬はスキーやスノーボードで長期滞在を目的に来ているが、グリーンシーズンは、登山は別として、妙高市に泊まって3日間いると、手持ちぶさたになってしまう。一般的に言われる周遊やインバウンドも含めてだが、広域的な連携は必須。観光客には、市町村や県境も何もないから。観光客はそれらを意識してないし、行きたいところに行くだけ。走って10分で、美味しい食べ物があるなら、それが長野県だったら長野県に行くし、県堺は関係ないです。線を引いているのは行政や自治体だけではないでしょうか」と持論を展開した。
(聞き手・編集部 梅川康輝)
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