コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.11 伊藤涼太郎「世界への挑戦」
2月25日、第2節の広島戦(A/○2-1)前日。
「新潟が目指しているサッカーは結果だけではなく、内容的にも相手を圧倒して勝つスタイル。見ている人たちがワクワクしてもらえるような、試合内容と試合結果を出したい」
「広島は、J1の中でも間違いなくトップレベルのチームだと思っています。そういった相手と戦えるのは非常に楽しみ」
「サッカーで大事なのは、目の前の相手に1対1で負けないこと」
「世界で活躍している選手はマークされていてもそのマークを剥がしてゴールに向かっていく。(今の僕は)いいパフォーマンスと言っていただいているけれど、まだリーグは始まったばかり。1年通じていいプレーをしたい」
「誰でも決められるようなパスを出せるよう、最善のプレーの選択をしていきたい」
3月14日、第4節の川崎戦後(H /◯1-0)の公開練習時。
「(先制ゴールがネットで話題に)J1は注目度がやっぱり違います。一つのプレーの取り上げられ方がJ2とは異なるので、やりがいが出てくる」
「ボールが自分に来る前に考えることもありますが、基本的には瞬時の判断。ボールの回転を見て、トラップやボールの置き位置を変えています」
「J2でやっていたときは自分がやりたいプレーを基本的にやれていた。しかし、セレッソと試合をして、何個か選択肢を持っていないと封じられたときに何もできなくなることを痛感した。今、自分自身がいい形でプレーできているのは、選択肢の数で相手を上回れているから」
「J1のチーム相手にもっともっと経験を積めば、さらに上のステージにいけるかなという実感もあります」
「僕は普通の選手よりも間接視野を多く使うタイプ。それに加えて、今の新潟の選手たちは僕が感覚的にここに出したいなって思ったときにその場所にいてくれる。自分の選択肢が多いというのは、自分だけではなくてチームメイトの動き出しというところにも要因があります。チームメイトにも感謝しながらプレーしています」
4月11日、第7節の神戸戦後(A/△0-0)の公開練習時。
「最後のパスや組み立ての質、ゴールに向かう姿勢と、多くの課題が出たゲーム」
「サッカーはゴールを取るのが目的であって、ボールを回すのは手段。勝つことにこだわり、ゴールに向かうプレーを増やさないといけない」
「次節自分のゴールも欲しいけれど、一番はチームの勝利。リーグ戦3試合勝てていないし、神戸戦は無得点。なんとかゴールを取って勝ちたい」
4月25日、第9節の鹿島戦後(H /●0-2)の公開練習時。
「(2・3月度のJリーグ月間M V P受賞について)もう素直にうれしかったです。こういった賞を昨年は取れなかったので、J1の舞台で取れたということはすごくうれしかった」
「フィーリングよくやれている面もあれば、自分が思うようなプレーをさせてもらえないところもあります。自分が想像していたよりも数段上のレベルの選手たちがJ1という舞台にはいます。自分のレベルをもっと上げないといけないし、このままでは中盤で潰されるシーンが増えてしまう。もっともっとうまくならないと」
「開幕戦のころよりもどんどん相手が中央を閉じてきていて、僕を消しにきていると感じています。その中でも仕事をするためにチームとしての力はもちろん、このレベルをさらに引き上げないといけない」
「(フリーキックのときの独特な足首の使い方について)最初はパスでよく使っていた蹴り方。相手の読みと逆の方向に出す感じの、ひねって出すようなパスをしていました。それを徐々に強くしていってシュートやセットプレーでも使えるなって思うようになってからはあの蹴り方。スピードが出るようになるまでかなり練習しました。水戸に移籍していた2018年から、取り組んだ蹴り方です」
5月7日、第12節の柏戦終了直後(H /△0-0)。
「後半、いい距離感でゴール前まで持っていけるシーンがありました。こういったシーンをどんどん作りたいですし、ゴールにつなげられるようにしたい」
「試合に勝てないのは自分たちの実力不足ですし、ゴールネットを揺らせなかった自分たちが悪い。今日VARがなかったから勝てなかったとかそういう問題ではないと思います」
5月14日、第13節の横浜FM戦終了直後(H2-1)。
「サイドチェンジを有効的に使え、チャンスを作れていました。僕の1点目はチャンスではめたゴールですし、2点目は三戸(舜介)がスーパーなゴールを取ってくれた。この得点がなければ、もっと苦しい展開になっていたので決め切れるチャンスでもっと決め切りたい。もっと得点のチャンスがあったのに、それができなかったのが唯一残ったこの試合の悔いです」
「前年のチャンピオンチームに勝てたことは僕だけではなくて、チーム全体、ほかの選手たちにも大きな自信になったと思う。三戸はこれからモッっともっと点を取ってくれると思うし、自分もそれに負けないようにゴールやアシストを増やしていきたい」
「チームを勝たせられるようなゴールをもっともっと取っていきたい」
これは、今季、J1を席巻している背番号13・伊藤涼太郎選手から聞いた話の一部。
現在、リーグ戦16試合を終えて7ゴール4アシスト。
6月5日には、クラブ公式サイトを通じて、シント・トロイデン(ベルギー1部)へ完全移籍することでクラブ間の基本合意に達したことを発表された。
2月、聖籠のクラブハウスでの練習を取材していたときには、僕自身、微塵も思っていなかった早い段階での海外移籍。新潟から世界へ羽ばたく選手がまた1人生まれたことがうれしくもあり、悲しくもある。
そんな心境で迎えた、7日の天皇杯2回戦(レイラック滋賀 ・H/○1-0)。試合途中から伊藤選手はピッチに立った。試合後、話を聞いた。
——いつもよりもメッセージ性の高いパスが多かったように見えましたが?
「特に意識したことはありません。ただ結果を変えたかったという思いはありました。1-0はやはり怖いスコアです。見ている人たちが安心できるように追加点、ダメ押し弾を取りたかった」
——新潟を離れるまでわずかの時間となりました。新潟在籍の若い選手たちにチームを離れるまでに伝えておきたいことは?
「もっとハングリーになってもらいたい。結果を欲している選手たちがたくさんいるので、練習時からもっとハングリーに取り組んで、どんどんアルビレックス新潟に貢献していってもらいたい。残された時間の中で、シュートに関して、少しでも伝えたい」
——11日の京都戦ではサポーターに向けたあいさつが予定されています。
「自分の最後かもしれないけれど、しっかりと目の前の敵に集中して、自分のプレーに集中して、新潟がしっかりと勝てるように気持ちを切り替えて準備したいと思います」
勝ちに貪欲で、高い向上心を持ち、努力し、やっと才能が開花。
あっという間のスピードで世界への挑戦というスタートラインに立った伊藤涼太郎選手。
いってらっしゃい。
◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。
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