【国指定重要文化財】関川村の豪農の館「渡邉邸」が補助金不正受給、公式ホームページに謝罪文掲載
6月20日、国の重要文化財「渡辺家住宅」および「渡辺氏庭園」の維持管理を行う「公益財団法人重要文化財渡辺家保存会」が「補助金の不正受給があった」という内容をプレスリリースで発表、同時に公式ホームページにも謝罪文を掲載したことで波紋を呼んでいる。
同会は「新潟県国指定文化財保存事業等補助金」の名目で新潟県と関川村から補助金の交付を受けていた。
プレスリリースによると、不正受給していた期間は令和元年度から3年度にかけて。不正受給額(返還額)は新潟県分が121万5,000円、関川村分が60万8,000円。
豪農の館として知られる「渡邉邸」は、令和元年度を境に入場者数が減少をたどりはじめたが、新型コロナウィルス感染症の流行でさらに激減。運転資金も枯渇していったという。苦境の中で「運転資金(主に職員の人件費)の支払いを優先したため、補助事業を行う資金が不足し、本来の事業ができなかった」「そこで担当職員が(補助事業の)実績報告書作成時に申請額と実績額を合わせるため架空の請求書と領収書を作成し隠蔽した」などと文書には綴られている。
新潟県のホームページにある「新潟県国指定文化財保存事業等補助金」の交付要綱を見ると【補助対象事業】の欄に「国の文化財保存事業(国指定文化財管理事業を含む)及び文化財保存施設整備事業の対象となり、国庫補助金を伴う事業とする」とあるほか、【交付条件】の欄には「補助事業に係る経理は、他の経理と明確に区分して行われなければならない」と明記されている。
保存会はにいがた経済新聞の取材に対し「関川村から『補助金の運用で不可解な点がある』と指摘され、内部の調査の結果、今回の事態が発覚した」(渡邉美恵理事長)と話している。
保存会では今後の対策として、
➀理事・監事及び事務局長は辞任し、令和5年6月3日より新体制での運営とする。
➁収支改善計画を策定して資金を確保するとともに、補助事業における支払いを振り込みとする。
➂補助事業の写真(日付入り)や領収書など施工したことを証明する書類を、半期ごとに分けて関川村の担当者に確認してもらう。
という3項目を挙げ、再発防止に努めるとのこと。
また不正受給した金額については、関川村分は既に返還済み、新潟県分についても納付書が届き次第、返還する用意はできているという。
渡邉家は、初代当主寛文7年(1667年)に現在地に移り住み、廻船業や酒造業を商うなど栄華を誇った豪農であった。かつては75人の使用人が働き、1000ヘクタールの山林、700ヘクタールの耕地から9000俵が収納され、財政難に苦しむ米沢藩に総額10万両以上を用立てたことから名宰相で知られる上杉鷹山ともかかわりが深かった。
1995年にはNHKドラマ「蔵」のロケ地となり、全国から観光客が訪れる名所となっていた。