コジマタケヒロのアルビ日記2023 Vol.12 高宇洋「みんなで1勝に貪欲に」

アルビレックス新潟の高宇洋選手

「シーズン当初のガムシャラさがないというか、判断が一歩遅れてしまっているように感じるのですが?」

23年6月20日、松橋力蔵監督に最近のチームについて、話を聞いた。

「(試合開始早々の失点や試合に勝てない状況から)選手のプレーに自信ない様子が見えているし、ダイナミックさもかけてきている部分があると思う。ダイナミックなプレーというと単純につながないでドンと蹴ってというふうに聞こえるかもしれませんが、それだけがダイナミックなプレーではないと思います。ダイナミックというのは、例えばワンタッチでプレーするだとか、相手より早く動いて、いい準備をして、その次の前につなげるプレーに持っていくこと。(中略)セカンドライン間という、人と人の間の列でボールを受けるときに、今は下げるという選択肢のためだけに受けに来るようになってしまった。シーズン開幕当初は、3人目とうまく使うときに、わざとプレッシャーのかかるところボールを入れて、寄っていくことで3人目を解放するために、セカンドライン間を使っていた。こういう前を向くためのプレーもダイナミクスだと思うんです。その準備をいかに速くするかというのは、動きの大きさであったり、早さであったり、タイミング。こういったものが少しずつ、少しずつプレーがこぢんまりとなってきてしまっているように思います。ここで受けたら取られそう、カウンターを受けそう。だったら外で回そう。外で回しても相手のサイドハーフを釣り出したいけれど、出てこない。いざ、サイドバックが行けると動き出そうとすると、味方がパスのコースを作っていないで、隠れてしまっている。受けたくない。ここでなんかやったらカウンターを受ける。そういった心理が試合内に働いていることはあるかもしれない。だからこそ、もっともっと勇気を持ってプレーしていく必要があるんです」。

6月7日の天皇杯で滋賀に勝利しているものの(H /○1-0)、ここ数試合、チームはリーグ戦、カップ戦ともに勝利から遠退いている。そんな中で迎えた、6月18日に行われたJリッグカップDグループ第6戦。先に進むためには勝利が絶対条件の新潟は、鹿島に0-2で敗れ、グループトーナメントで敗退となった。

試合後、アウェイのスタンドでは、新潟サポーターが選手たちに向かってブーイング。堀米悠斗キャプテンに代わり、サポーターの声に応えたのは、高宇洋選手だった。

「僕たちも負けたくて、負けているわけではありません。しかし、それを言い訳にすることなく、サポーターの方からの評価、声というのは真摯に受け止める必要もあると思います。その上で、みんなで今の状況を打破していきたいと思っています」。

これに続く、高選手の言葉が、数分後に話を聞く松橋監督に「シーズン当初のガムシャラさがないというか、判断が一歩遅れてしまっているように感じるのですが?」という質問をさせるきっかけとなった。

高選手はこう続けた。

「勝てないプレッシャーがありますし、勝てなきゃ勝たなきゃという思いから、チーム全体がやらなきゃいけないことにチャレンジできていない状況が正直あると思います。消極的なミスを恐れるあまり、パスを出すときのレイコンマ何秒の遅れが出てきている。シーズン開幕当初の、J1で俺らのサッカーをやってやる。自信を持って、ただガムシャラに自分たちのサッカーをやろうと気持ちがチーム全体に充満していたときに戻さないと。そのために、試合だけではなく、練習からもっと積極的に僕もみんなに声をかけていきたいと思っています。(中略)やっぱり先取点を早く取りたいです。相手の取られてしまうことがここ最近多く、自分たちの流れに持っていけていないのが実際です。もっとチャレンジして、ダイナミックなプレーを増やしていきたいと思います。(中略)チームとしてもっと上の順にいなきゃいけない。これまでの試合で何ができて、何ができなかったのかをきちんとみた上で、チーム全体で練習に臨んでいきたい。1勝すれば、きっと今の状況は変わる。1勝に対して、みんなで貪欲にやっていきたいと思います」。

新潟は、リーグ戦17試合を終え、4勝8敗5分の勝ち点17で全18チーム中、現在13位。リーグは今週末から折り返しとなり、いよいよ順位争いが激しくなる。

高宇洋選手の話すように、いかに早く1勝できるかが今後の順位を占うことになるかもしれない。

一方で、現在のチームの試合結果や、チームを去った伊藤涼太郎選手の穴など、現在の新潟を不安視する声もある。確かにそういった声が出るのも十分に理解できる。

しかし、前を向くために、順位を上げるために必要なのは、本当にそれなのだろうか。

そんな中だからこそ、本当の意味でのチーム力が問われるのではないか。

選手、監督・コーチは、同じ課題を感じ、同じ方向を向いている。必要なのは、あとひとつ。

みんなで1勝に貪欲に。

『みんなで』。

僕はこっちのスタンスの方が好きだ。

 

◎アルビライター コジマタケヒロ
練習、ホーム戦を中心に日々取材を続ける、アルビレックス新潟の番記者。また、タウン情報誌の編集長を務めていた際に、新潟県内の全日本酒蔵をひとりで取材。4冊の日本酒本を出した、にいがた日本酒伝道師という一面も。(JSA認定)サケ・エキスパート。

 

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前回:Vol.11 伊藤涼太郎「世界への挑戦」

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