引き込まれる民話の世界 中之島コミュニティセンターで民話語りの会(新潟県長岡市)

「中之島ウエルカムデイ」も同日開催だった中之島コミュニティセンターは、多くの人で賑わった

地元に伝わる民話は、実際にその土地で起こった歴史的な事件や、地形などの自然をテーマにしたものも多い。歴史資料では、客観的にたんたんと記録されているものでも、民話を通して聴くことで、記録には残されていない当時の人たちの想いや感情など、改めて窺い知ることができる。そういった意味では、民話は、過去にその土地に生きた人たちのリアルな人間関係やライフスタイルを知ることができる貴重な生活文化誌であり、民話を語り継ぎ、次世代に伝えていくことは、現代を生きる我々にとって、過去に生きた人々と未来に生きる人々に対する責務である。

語り手の語りに、じっと耳を傾ける参加者

新潟県長岡市にある中之島コミュニティセンターでは6月24日、「長岡民話の会」(青柳保子代表)による「聞いてくらっしゃい昔話」が開催された。これは、地元に伝わる民話を語り継ごうと、同会が、年に何回かに分けて、定期的に行っているイベントである。9回目にあたる今回は、「仁王様の膝つき池」「爺さの旅」「与茂七地蔵」など、10話が語られた。

同コミュニティセンターでは同日、「中之島ウエルカムデイ」が行われていたこともあり、多くの人々が足を運んでいた様子である。民話を聴こうと参加した人の数は最終的に40人にも上った。

人々は、語り手の語る民話一つひとつに、時にはハラハラし、また笑いながら、童心に帰った様子で、熱心に耳を傾けていた。

民話語りのラストを飾ったのは、「与茂七地蔵」である。これは、地元中之島にもので、無実の罪で処刑された大竹与茂七と、その魂を鎮めるために作られた地蔵尊に因む話である。

一方的な裁きで拷問され、処刑された与茂七の口惜しさと無念さを、語り手の大貫もとさんが、臨場感溢れる口ぶりで熱く語った。

「爺さの旅」では、爺さが見た不思議な夢を、軽快な様子で島岡浩二さんが語る

与茂七の受けた苦しみを、臨場感あふれる様子で大貫もとさんが語る

「中之島ウエルカムデイ」に足を運んだ際、偶然に民話語りがあることを知って参加したという長岡市花園の59歳女性は、「面白かった。皆さんお上手でよかったです」と満足そうに感想を述べた。また、中之島のお寺から参加したという60代女性も、「与茂七さんの話が素晴らしかったです。書いてあるものを読んでも忘れるし、なかなか身につかない。(そういう意味で、こういった取り組みは)良かったです」と嬉しそうに語った。

会が終わると青柳保子代表は、「昔語りは聞くものと語るものの共同作業ですね」と、ほっとした様子で記者に笑顔を見せた。充実した最高の昔語りとなった。

「昔語りは聞くものと語るものの共同作業ですね」と語る青柳保子代表

(文・撮影 湯本泰隆)

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