「行政評価(事務事業評価)シート公開して」 にいがた減税会がアオーレ長岡で検討会を開催
民間企業にせよ、地方自治体にせよ、何らかの事業を行う場合、その事業が効果的であったのか、投じた資本は適切であったか、さらにコストを削減できないかということを検討し、事業計画を合理化させることは、経営の最も根本的な部分である。一部の地方自治体では、そうした評価を行うために、事業ごとに1枚~数枚ごと、「市民にとっての効果は何か」「当初期待した目的どおりに成果が上がっているか」といった視点から、項目ごとにまとめた行政評価(事務事業評価)シートを作成し、地方議会や住民の目に触れるような形で公開している。とはいえ、全国1,700近くある自治体のうち、実際にそのようなシートを導入している自治体は、1,000ほどである。こうした評価のための仕組みづくりがなされていない地域では、そもそも自治体が行っている事業の妥当性やコスト削減の可能性でさえ、地方議員や住民らが検討することは難しい。
わが新潟県では、聖籠町など一部の自治体を除き、新潟市、長岡市といった多くの自治体が行政評価(事務事業評価)シートを公開していない。住民が、こういった事務事業を確認できていないということは、自治体に対して治めている税金が適切に使用されているかチェックや検討する機会さえ与えられず、結果としてわけのわからないまま増税などの税負担に苦しめられることになる。
昨年、日頃から行政のあり方に疑問を感じている新潟県内の有志によって結成された「にいがた減税会」(村木彩果代表)は7月2日、新潟県長岡市にあるシティホールプラザアオーレ長岡にて行政評価(事務事業評価)シート検討会「税金の行方を調べたら僕の手取りが増えた件」を開催し、同シートの導入の意義について検討、改めてその重要性について参加者に啓発した。講師は、国際政治アナリストで、早稲田大学公共政策研究所招聘研究員なども務める渡瀬裕哉氏(41歳)である。前半は、渡瀬氏による聖籠町が公開している政策評価シートの見方の説明、後半では、渡瀬氏が優秀と評価する西宮市の同シートの内容を検討した。にいがた減税会の会員などを中心に20人ほどの参加で、子ども連れの姿も見えた。会場となった長岡市から参加の他、見附市、柏崎市、新潟市、県外からは石川県からの参加も見られた。
長岡市議会議員で、同会会員の衣川(きぬかわ)広志さん(42歳)によれば、子連れOKの会であれば現役世代も少しは参加しやすい政治セミナーになるのではないか。そして、税金の使われ方を見ていただくことで政治に興味関心を持って頂けるのではないかと思い、今回の検討会を企画したという。
検討会の冒頭では渡瀬氏が、「行政評価(事務事業評価)シートを導入していない自治体は、腐敗している」と参加者に警鐘を鳴らす。また、一見、シートを導入している自治体についても、「予算」の項目に職員の人件費が計上されていないなど、適切な運用がなされていないケースもあるという。その上で、「(シートを)公開していない自治体については、腐敗しているのではないかと、その自治体の市議会議員に伝える。どんどん公開させていく、やらせていくことが大切。こういうことの積み重ねが減税に繋がる」とした。
新潟県長岡市からにいがた減税会の会員として参加、司会も務めた山崎誠司さん(25歳)は、「日本はお金が足りないっていっているけど、無駄を省いていった方が良い。現時点で日本の中で減税している自治体って、名古屋市くらいしかない。長岡市が減税できれば、全国からも人が集まって、もっと発展するのではないか」と期待を寄せる。また、新潟県柏崎市から参加した牧口孝興(たかあき)さん(29歳)も、「結局、住民自治なので、自分が議員に働きかけて動かしていかなければならないな」と意欲的だ。
一方、新潟県見附市から参加した長田秀美さん(60歳)は、「すごいためになるんですけど、見附はメンバーが私しかいない。1人だと人数的に弱い。どうやって市に反映してもらうのかというのが悩み」だという。また、牧口さんも、「今回、柏崎だと人が集められないので、(長岡で開催された)この会に参加した」と語る。今後は、同じ想いをもった人々の声を集めて、大きくしていくことも、課題の一つとなりそうだ。
会の終わった後も、渡瀬氏は質問攻め。「ポイントをついた質問が多く出た」と感心した様子である。「開かれた市政運営のツールとしてシートが広められていって欲しい」と渡瀬氏は、記者に語った。
衣川さんは、今回の反省点として、政治というテーマを市民の皆さまに届けるにはまだまだ工夫が必要と感じたことを挙げ、「今後は3か月に1回程度、政治イベントを開催していくことで、市民の皆様に政治に触れる機会を提供していくことで、減税会を拡大していきたいと考えています」とコメントした。
(文・撮影 湯本泰隆)