Gallery 沙蔵で多摩美術大学OB・OGらによる「たまごてん」開催 7月11日まで(新潟県長岡市)
工芸紙バンドをキャンバスに曲線的に配置している一枚。これは、抽象画だろうか。
モチーフは何だろう。冬を前に、紅葉した葉が落ち切った樹木だろうか。はたまた、見方によっては、目を閉じた女性の横顔にも、見えなくもない。これは、ひょっとして樹木の精?祈っている? それとも、泣いている…?
『冬が来る前に』と、名付けられたタイトルの作品を眼前に、あれこれと想像力が掻き立てられる。
新潟県長岡市本町にあるGallery 沙蔵で、6月30日から開催されている「たまごてん」が大盛況である。
同展は、新潟県内の多摩美術大学出身の作家11人による作品展である。今年の6月17日から25日にかけて開催された、同大学出身者による「新潟多摩美展」に作品を出品した作家たちが出展している。
元々この展示は、数年前から「新潟多摩美展」とは別に、出身作家3人で「たまさん展」を開いたことから始まった。その後、出展する作家の数が4人に増え、「たましい展」になったという。今年は、出展者の大黒(だいこく)裕子さんと、山田祐二さんに「Gallery 沙蔵で展示をやりたい」と話を持ちかけられ、Gallery 沙蔵のオーナーで、主催者の一人である松本泰典さん(52歳)が了承した。
今回は、「多摩美展」“後”に行われた作品展なので、「たま“ご”てん」なのだという。「“作家の卵”というには出品者の年齢層が…」と松本さんは、苦笑する。「新潟多摩美展の固いイメージの展示の後に、“たまごてん”のような、まるい柔らかな印象の展示を楽しんで欲しい」と語った。ニーズがあれば、来年も開催したいとのことである。
2階で、自身の作品の注文を受けていたのは、燕市在住の型染め作家・渡邉久意(ひさい)さん(74歳)である。型染めは、渋柿を張り合わせた型紙を刃物で彫り抜き、それを使って数多くの工程をへて和紙を染めるというもので、平安時代から続いている技法である。展示されている作品を見た70代女性は、「それぞれの作品に個性があって良い」と満足そうに語っていた。
展示は7月11日まで開かれ、作品の販売も行われる。それぞれの作家の独特な世界観を是非堪能してほしい。水曜日・木曜日定休。11時〜17時(最終日は16時)まで。
(文・撮影 湯本泰隆)