【妻有新聞】応募減少、「なぜ必要か」原点を 津南町 地域おこし協力隊、現役三人に

津南町の地域おこし協力隊の任期満了が相次ぎ、7月に入り現役隊員は秋山郷地区1人、上段地区1人、津南原地区1人の計3人になっている。このうち上段地区隊員は3年間の任期満了で今月末で退任する。一方で津南原地区は7月からの着任。津南町では町森林組合勤務のミッション型協力隊を募集中、さらに各地区意向を受け募集をかける方針だが「以前より隊員応募は減っている」(総務課)と話す。

一方で元隊員は「地域で隊員が何をすればいいのか、実は明確でない所が多い」と、最初から地区の目的明確化と、隊員の想いとのマッチングを望む声がある。全国で隊員誘致合戦と言える状況のなか「なぜ隊員が必要か」の本気度が試されている。町協力隊員はこれまで15人が赴任。現役隊員は3人。うち退任後の町定住者は現在6人になっている。

 

ドローンで振興を 山本さん、津南原に着任

津南原地区初の協力隊員で、ドローン活用にも取り組む山本眞幸さん(右から2人目)

津南原地区(6世帯)で初めての協力隊が今月1日付で着任。新たに赴任したのは山本眞幸さん(まさき、30、東京・府中市出身)。主な任務は地域交流行事の企画や旧津南原小校舎の活用に加え、さらにドローンを通じた地域支援活動が特色。元運送業に勤務、昨年ドローン免許を取得している山本さんは「元々ウィンタースポーツが好きで、調べているうちに津南原の協力隊の募集を知った。農作業や映像撮影などドローンの活用方法を考えながら、この地を発信させたい」と意欲を話している。

津南原地区では昨年、ドローン活用と地域活性化をねらいに協力隊員を募集。しかし、この時は応募がなかった。今春の再応募で念願が叶った形だ。代表世話人の松田美房さん(よしふさ、66、貝坂)は、旧津南原校舎でドローン講習会を開くなどしている、津南ドローンスクールの管理者。津南に移住し8年目。津南原地区の区長経験者らと連携し、協力隊員受入れを望んでいた。「ドローンを使い何ができるのかを地域の方と話しをしながら進めたい。緊急品の搬送、赤外線カメラを付けての鳥獣被害対策なども考えられる」などと、ドローン活用での地域活性化を、山本隊員と共に模索するつもりだ。

農業が盛んな津南原地区は、町が進める農水省事業「農山漁村振興交付金」を使い、ICT(情報通信技術)の農業活用モデル地区のひとつ。無線を活用し遠隔管理できる水田の自動給水栓、ユリハウス温度や湿度センシングなど実証中。桑原町長は「農水省事業のモデル地区であり、農業関係の取り組みを含め、ドローン活用などの展開を期待している」と激励している。

 

「津南で挑戦続ける」ユーチューバー・南雲さん退任

ユーチューバー協力隊員で任期満了で退任した南雲さん。今後も津南で働く(先月30日)

「津南町に来たのは自分たちの生活がより楽しく、人生を充実させるため。これからも挑戦を続けたい」と、これからも町に拠点を起き住み続けることを語ったミッション型地域おこし協力隊で赴任、ユーチューバーとして『つなすみチャンネル』の更新を続け、地域情報発信を行ってきた南雲一人さん(41、赤沢)は3年間の任期満了で先月末付で退任。離任式で桑原町長らに「住民の方の協力もあり任期をまっとうできた。まだ挑戦したいことはいっぱいある。映像制作や動画編集など、この地で仕事ができるようにしていきたい」などと感謝と意欲を語った。

町観光協会に席を起き、情報発信を主な業務とした南雲さん。YouTube『つなすみチャンネル』は赴任直後の2020年7月から更新開始、3年間で148本の動画を更新、チャンネル登録者数は1,350人、総再生回数は約30万回。家族6人での鳥追いや十二講といった地域行事やイベントなどもあるが、家族で挑戦したコメ作りなど、津南の日常視点を大切にしながら更新を続けた。

最も再生回数が多かったのは、移住した2020年の初雪が大雪となった動画で9.2万回再生された。「振り返るとあっという間の3年。毎日の四季折々の生活、この地で暮らす方にスポットを当てて来た」と振り返る。同チャンネルは今後も更新予定になっている。

協力隊員のユーチューバー採用は全国で複数事例があるが、最大3年間の任期満了まで務めたのは全国初という。桑原町長は「津南町の動画を検索すると、南雲さん製作のものが出てくるようになった。町として貴重な財産。活用し誘客や定住に繋げたい」と感謝した。

 

「みっちゃん、お疲れ」三箇地区の森さん、門出祝う会

協力隊を任期満了し巣立った森さん(左)の門出を祝う会を三箇校舎で開いた(先月24日)

「みっちゃん、お疲れさまでした」。地域おこし協力隊で津南町三箇地区に赴任、3年間の任期満了で5月末に退任した森瑞絵さん(32、横浜市出身)。現在は十日町市の林業関係の仕事で新たな歩みを始めているなか、三箇地区で「新たなステップアップを祝う会」を三箇校舎で開催。住民25人余が集い、『みっちゃん』の愛称で呼ばれた森さんを労った。

2018年(平成31年)の三箇地区主催の移住体験ツアーを契機に関心を持ち、津南町に赴任した森さん。ただその任期は新型コロナ禍の真っ只中。同地区が進めて来た都会との交流事業は中止や縮小を余儀なくされた。一方で、地元住民と染め物体験やわら細工会、お茶飲み企画など計画。住民とのふれあいに力を入れた活動を展開。特に年配女性に可愛がられた。森さんは「皆さんが温かく迎えてくれて3年間過ごすことができました。新型コロナで交流事業は進められなかったけど、逆に地域でゆったりとした時間を、地域の方とゆっくり過すことができました」と感謝。

さらに林業に関心を持ったきっかけを「元々自然に興味があるなか、住民の方が代々受け継いで来た林だけど『もうどうしようもない』という声を聞き、そこから山のことに興味を持つようになりました。雪国に暮らすのは大変だけど、ここで過ごした3年間で自分に自信が付き、この地域で新しいステップを踏み出せました」と意欲を話し、大きな拍手を受けていた。

祝う会を企画した三箇地区の活性化をめざす『三箇を明るく住みよくする会』の恩田秀樹会長は「3年間ありがとう。新しい門出、これからも笑顔を絶やさず過ごしてほしい。いつでも遊びにおいで」と声をかけると、森さんはにっこり応えていた。

 

妻有新聞 2023年7月8日号】

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