【広報担当者必見】フォロワー数10万人超「インフルエンサーひよりん」のつくりかた
23歳シングルマザーのブレイクスルー
三条タクシー株式会社(新潟県三条市)のドライバーであり、TikTok(ショート動画)の投稿を中心に活躍するインフルエンサー・ひよりんをご存じのユーザーも多いはず。
フォロワー数10万人超え、最大で約720万回再生数を稼ぎ、近年ははじめ社長など有名YouTuberとのコラボや、全国ネットのテレビ番組などメディア出演多数。三条市ふるさと観光大使就任。全国的にファンが存在し、コロナ明けの今や、日本中からひよりんの運転するタクシーにわざわざ乗りに来るファンもいるという。
高校を2度リタイヤした中卒。19歳の時に未婚で出産。21歳で結婚。二人目の子供を出産。23歳の時に離婚してシングルマザーに、ほぼ同時期にタクシードライバーに転職・・・ひとつひとつのキャラが渋滞している、プロフィルは基本的にすべて明かしている。
今回は、三条タクシー本社を訪ね、ひよりんを直撃した。
― ひよりんは、若くしてなかなか高カロリーな人生を歩んできていますが、ブレイクしてからも一切隠そうとしないのですね
そうなんです。もう嘘つくのが苦手すぎて(笑)だいたい人からは「彼氏いるの?」から始まって「いない」と答えると「じゃあ結婚してるの?」と聞かれると「結婚してないけど子供いる」って答えちゃうんです。アイドルキャラで行こうと思った時もあるけど、その先、嘘ついていく面倒くささを考えたら無理でした。
― そもそもSNSを本気で始めたきっかけは?
三条タクシーでは「さくらチーム」といって女性のドライバーのチームがありました。さくらチームは、男性のドライバーさんより給料のベースが少し高いのですが、その分、運行業務以外にもいろいろやらなきゃならないことがあるのです。私もこのさくらチームに入っていました。
ところが入社して2カ月すると、待っていたのはコロナ禍。それまで出張のお客様を燕三条駅から乗せるのは大事な業務だったのですが、これがほぼゼロに。高齢者の片を病院までお送りするのもがくんと減りました。その分、待機時間がものすごく増えたので、当社の社長が発案して、同年代の女の子3人にSNSを使った会社のPRを命じたのです。課されたノルマは「1年後に月の売上75万円かフォロワー1万人突破」というものでした。それまではツイッターを少しいじっていたくらいで、そもそもフォロワーを獲得するために投稿するようなことはしていませんでした。
―スタートから順調にフォロワーが増えた?
最初はどこにでもある企業のSNSと変わらない内容のものを投稿していたので、全然伸びなかったのです。せいぜいで50から60程度で。ただ「三タクのひよりん」という別アカウントをプライベートで持って、そっちには自撮り写真などを上げていたら、そっちすぐに1,000くらいまで伸びて(現在1万1,000人)。社長の発案で「三タクのひよりん」の方を会社の公式インスタグラムにしました。
Live 配信で一気にBuzz
― 大きくバズったショート動画の方は?
インスタのフォロワーが3,000人くらいになったころ、東京から出張で三条に来たお客さんにTicktockを勧められて。最初は全然フォロワー数も伸びませんでした。ある時社長が、親会社の運送業者のトラックが巻き込まれた事故の映像をツイッターに上げたらバズって6万リツイートあったのです。その人たちがひよりんの動画も見てくれて、すぐに1,000くらいまでフォロワーが伸びたのでLive配信をスタートしたのです。当時、企業でTikTokのLive配信をしているところはあまりなかったのですが、2週間でフォロワーが2万人に。1回のLive配信で600~700人が見てくれていました。
― どんなところがウケたのだと思いますか?
「コロナで大赤字会社なんです」って紹介したのが面白がられた。この発信を社長が許してくれたのが大きい。結局伸びているのは、なんのことはない社長との掛け合いの動画です。
― 三条市の観光大使になったり、公の仕事も増えていますが
もともと私自身「観光大使」という存在に認識が薄くて。どうせやるのなら三条市も私も名前が売れるように、私にも価値がないとだめだと思います。今は三条市が私のことを上手に使ってくれている感じで、滝沢(亮)市長にも感謝です。
― ひよりんから見て、三条市観光の魅力は?
体験型のアクティビティが多いから「コト消費」ができる。自分で包丁を研ぐ体験だとか、その包丁を実際に使ったり。三条鍛冶道場みたいな公共施設だけじゃなく、地場産業の企業でも、そういうお客さんを受け入れているところが多い。キャンプやラフティング体験なんかもあって、一日いるだけで多くの体験ができるところ。
もともとの仕掛け人だった渡邉惣太社長(三条タクシー)は「ひよりんのキャラクターが良かった。リアクションも面白くて、作りこんだものよりもこのキャラをそのまま活かした方が人気が出ると思った」と話す。
昨今は自社のPRにSNSを活用する企業が増え、多大なリソースをつぎ込んでいる例もあるが、ここまで上手くはバズるまでは、なかなか。まさにコロナの影響で赤字だった会社を救った存在といえる。
(聞き手 編集部・伊藤直樹)