【検証】米百俵プレイス・ミライエ長岡は地域発展の新しい起爆剤となり得るか
新潟県長岡市大手通の旧大和跡地。この場所は、かつて国漢学校が建っていた場所だ。長期にわたる再開発を経て、7月22日にようやく市立図書館である互尊文庫やコワーキングエリアなどを備えた長岡市の複合施設「米百俵プレイス・ミライエ長岡」が誕生する。7月14日は、西館が報道関係者などに披露された。
西館は地上10階建ての建物となる。1階は「パッサージュウエスト」と呼ばれる天井高6mの広い空間で、2つの入り口をつなぐ屋内回廊のようになっている。今後、マルシェなどのにぎわいを生み出すことが想定されている。また、一角にはグランドピアノが置かれ、ストリートピアノのような使い方も想定されているようである。
3階と5階の一部が「互尊文庫」である。約4万冊の蔵書を、通常の図書館の分類に使用されるNDC(日本十進分類法)ではなく、テーマ別で配架している。ジャンルの壁を超えて本棚を編集し、「くらす」「はたらく」「ひらめく」などのテーマ別に配架されている。また、同じ3階には、「米百俵の精神」と小林虎三郎の生涯や思想などを、デジタル技術を駆使した展示で紹介、また、小学生の想像力を育むワークショップなどが行える「ミライエハウス」なども併設されている。
4階にあたる部分には、階段状のスペースが広がっている。270インチの大型スクリーンと、天吊式のプロジェクターを備え付けていて、セミナーや講演会などが行える。
5階には、互尊文庫の他、現在長岡市民センター地下にあるNaDeC BASEが移転するほか、リモートワークや打ち合わせなどで利用できる有料のコワーキングスペース「イノベーションサロン」、大学と企業が共同研究を行う「ギャラリーラボC」が設置される。
また、6階では、スタートアップやNTTなどの企業5社の入居が入居するレンタルオフィス「コラボレーションオフィス」が設置される他、第四北越銀行が創立150周年を記念してオープンした「第四北越ミュージアム」などが設置される。
磯田達伸長岡市長は、「非常に開放的で、軽い感じがいっぱいあって、公共施設としては珍しいユニークな施設になった。いいものができたのでは」と満足げに語る。「長岡のためになる方を育てるとともに、日本のため、世界のために頑張れる人材をどれだけ育てあげるか、いかに世界に貢献する人に羽ばたかせることができるか。それが大きな狙い」と語る。「市民にこの場をいかに活用してもらうか。それが(施設が)良いものになるかどうかの分かれ目」であるとし、「(長岡市として)全力を挙げて、運営をしていく」と結んだ。
「仏作って魂入れず」という言葉がある。ハード面は整いつつあるが、最終的に、市民に対してどれだけ開かれた施設になるか。利用する市民が、不便さや不公平感を感じないよう、市民や企業に寄り添った最善の利用ができるための、運営方法やルールづくりなど、ソフト面をいかに充実させていくかが、今後の長岡市の課題となるだろう。
現在、周辺にあるシティホールアオーレ長岡や、まちなかキャンパス、トモシアなど市民の活動と交流の場とどのように差別化していくのか。試行錯誤を重ねながら、市民が使いやすい仕組みやルール作りが行われてこそ、施設は活かされるのではないだろうか。
なお、米百俵プレイスの片翼を成す東棟の完成と公開は2025年頃になる予定である。
(文・撮影 湯本泰隆)
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