【記者コラム】にいがた経済新聞編集部発「今週の編集後記」
今週の編集後記
南魚沼 里山十帖にて
今年7月某日、南魚沼の旅館「里山十帖」に、雑誌「自由人」編集長で里山十帖のオーナーである岩佐十良さんをお訪ねした。岩佐さんがご多忙の中、にいがた経済新聞のインタビューの申し出にご快諾頂いたためである。ご期待に添えるような味の濃いメディア論議をたっぷり交わしてきた。近日公開なのでお楽しみに。
さてその中で、こんな話題にも触れた。近年の「米どころ新潟」の地位の揺らぎについてだ。これは新潟米の質が落ちたのか、他、特に北海道産米などの評価が高じたのか不明だ。魚沼産コシヒカリは別格としても、他の県産コシは食味コンテストなどで北海道の「ユメピリカ」などの後塵を拝するケースが多くなっている。記者はこれに関して勝手に「気候変動が、かつての名産地をズラしているのかな」と思っていた。もちろん「なんとなく」の範囲だが、こう考えている人は多いのではないか。
この点を岩佐さんに聞いてみた。岩佐さんは東京出身でかつては東京に活動の拠点を置いていたが、最高の米を栽培するために南魚沼に移り住んだ人だ。米づくりの研究には相当な蓄積がある。
岩佐さんは「気候変動のためではなく、人為的なものではないか」と言う。ここからは岩佐さんが「あくまで私の研究データから」と前置きしての見解だ。
気温の上昇は、そこまで影響しない。もし気温の上昇で米の名産地が新潟から北海道にズレたとしたら、それ以前に地球は大変なことになっているはずだ。むしろ問題は、近年田植えと稲刈りの時期が早まった点にある。田植えが3日前倒しになると稲刈りは1週間早まると言われる。かつては5月20日過ぎに田植えをしていたのだが、最近はGWが田植えの最盛期だ。そうなると出穂の時期も早まって、一番気候の良い時期に旨みや甘味が蓄えられない。かつては10月10日くらいに出ていたコシヒカリの新米は、今や9月上旬に店先に並ぶ。
ではなぜ田植えと収穫が早まったのか。それは近年、米が売れなくなり相対取引になったので、農家が米を早く出したがるためだ。東京の百貨店や通販業者、米の卸しなどは早く新米が出れば相場で高く売れるから、早くよこせと言ってくる。農家も高く買ってくれるから早く刈って早く出したい。マーケットの理論である。最近は地域のJAなどでも田植えの時期を少しでも遅らせる指導をしているという。
米は日本の食文化の根幹にある存在だ。その中でも新潟県、特に魚沼地方は最高峰に君臨する。岩佐さんも「他の土地と、全然違う」と土、水を含めた魚沼の環境を絶賛している。米が売れなくなったのは農家の方々にとっても死活問題なのは重々承知だが、日本の食文化を護るという高尚な見地から、マーケットに寄せるだけの栽培は踏みとどまっていただきたいと思う。
(編集部・I)
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