【独自】メタバースの未来について、中央大学国際情報学部の岡嶋裕史氏が新潟県長岡市で講演
インターネット上に創られた仮想の世界や、その世界を介在にして、様々な商品等の販売や提供を行うサービス。仮想世界の中で、参加者一人ひとりがアバターといわれる自分自身の分身を作り、他のアバターと交流したり、現実の世界と連動させたりすることで、今後の日常生活やビジネスにおける環境が大きく変わったりもする。こういった、インターネット上の仮想の世界や、そこでのやりとりのことを「メタバース」という。
メタバースと聞いて、想起されるのは、2021年から「山古志住民会議」が取り組んでいるデジタル村民の活動である。オンライン上で、仮想山古志村のデジタル住民票の販売を行い、デジタル住民票を手にした人たちによって仮想山古志村が作られていく。実際の山古志村でのイベント等とも連動され、実際に山古志村に「帰省」するデジタル村民が、全国から後を絶たない。
今後ますます需要を高める可能性を秘めるメタバースについて、もっと多くの一般人に知ってもらおうと、長岡大学(村山光博学長)は7月14日、新潟県長岡市にあるホテルニューオータニNCホールにて、文化講演会を開催した。講師は、中央大学国際情報学部教授の岡嶋裕史氏である。岡嶋氏は、情報ネットワークや情報セキュリティの専門家で、同大学政策文化総合研究所の所長も務めている。今回の講演は、2019年に、新潟県新潟市内で、岡嶋氏の講演を聞いた村山学長のラブコールに、岡嶋氏が応じる形で実現した。
講演の冒頭、岡嶋氏は80人の参加者を前に、マトリックスなどの映画の話を持ち出し、「現実世界が苦手な人たちが、ああいう世界の実現をさせようとしているのが、メタバースの世界。自分にとって最適化されたおもてなしが受けられる理想の世界である」とした。
岡嶋氏によれば、メタバースの世界には、完全に現実世界とは切り離された全く違う世界を構築したものと、「バーチャル渋谷」「バーチャル池袋」などのように、現実世界に似せた上で、様々な展開をしていく「デジタルツイン」や「ミラーワールド」といったものの2つの種類に分けることができるという。その上で、当初は、前者のような世界が主流だったが、5年後には、後者の世界が主流になっていくだろうと予測する。
後者のような、現実とデジタルを融合させた世界では、現実世界の不便なところを、デジタルで消していこうという流れができる。このような世界観では、付加価値をつけていくことができるという。例えば、ペットの飼育禁止の部屋に、スマートグラスをかけることによって、自分にしか見えることができない仮想のペットが出現する。さらに、ペットの感触を再現できる特殊なグローブをつければ、実際にペットをその場で飼っていなくても、さも現実にペットを飼っているかのような気分になれる。このような実際に即した仮想世界の方が、人々はイメージしやすい。現実とデジタルが融合することによって、もっと簡単に暮らそう、快適に暮らそうという流れになるのだという。
また、メタバースが発達・普及することによって、「現実世界では活躍が難しそうな人たちが、メタバースの世界で活躍することができるかもしれない」と、メタバース普及のメリットを語る。一方で、「アイドルの握手などもメタバースで再現できるようになれば、現地に直接本人に合わなくても、ファンが満足できるようになる。そうなれば、アイドルに直接会うために、お金をかける必要もなくなるかもしれない」と、現在のビジネス形態が破壊される危険性もあることも、指摘した。
岡嶋氏の著作を多く持ち、氏のファンだという村山学長は、今回の講演に終えて、「本当に素晴らしい講演となった。ユーモラスに聞けて楽しかった」と絶賛した。
講演に参加した長岡市議会議員の66歳男性は、「詳しいことはわからないが、(メタバースに関して)ゲームや映画の感覚しかなかった。面白かった」と感想を述べた。また、元々メタバースやトランスヒューマニズムなどのテクノロジーに興味があったという見附市から参加した25歳の男性は、講演中も熱心に質問をするなどしていた。記者に対し、「(色々聞けて)楽しかった」と感想を述べた。